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8.あたしは、親を選んだ覚えがない(1)


 朝早くから城内は浮足立っていた。

城門を次々に人と馬が通り抜けていく。従者をたくさん引き連れた賑やかな貴族の一行に続き、侍女たちに囲まれた貴婦人、そして、美しい馬に乗った逞しい騎士が城門をくぐり、玉座の間へと進んでいった。

彼らはアーサーに召喚された者たちだ。ログレス国王から国の運命を左右する重大な発表があるのだという。

マーシャは寝台から降りると、肌着の上に黒橡色のチュニックを着て、黒地に銀糸の刺繍が施された帯を胸のすぐ下で締めた。それから漆黒のマントを羽織り、ビリーを肩に乗せる。

(昨日もアーサーに会うことができなかった)

 モルガナが悪魔と関わっている証拠を手に入れながらも、それをモルガナに突き付けることができずにいるのは、モルガナに言い逃れができる余地がまだ残っているからだ。

 ――その首飾りは盗まれたのだ。自分は何も知らない。

 そう言われてしまえば、お手上げだった。マーシャには未だ、モルガナの真の狙いが分からない。悪魔と関わってまで叶えたいと欲するものが何なのか。

マーシャがビリーと共に朝食を簡単に済ませた頃、扉を三度ノックする音が聞こえた。入室を許可すると、タバサとカイが部屋に入ってきた。そして、その後ろから騎士の装いをした男がひとり。

マーシャは目を見張った。

――ウルフィウス卿だ。

カイが捜し出してくれたのだと嬉しく思い、マーシャはテーブルの席から立ち上がる。タバサに朝食の後片付けを頼んでから、ウルフィウスに向き直った。

ウルフィウスを間近で見ると、彼の身長はさほど高くはなかった。だが、熊を思わせる恰幅の良さと重厚感のある雰囲気が彼という存在を大きく見せていた。

「お初にお目にかかります。わたしはウルフィウスと申す者で、かつてはウーゼル王に仕えていました」

「存じ上げています。ウルフィウス卿、貴方とは是非話をしたいと思っていました」

「マーシャ殿、急ぎ陛下をお止めしなければなりません」

ひどく焦った様子のウルフィウスに戸惑いを覚えて、マーシャはちらりとカイに視線を向けた。

「ウルフィウス卿は昨夜からアーサーの部屋の前に座り込んで、モルガナ姫を王妃に迎えるのは考え直すようにと訴え続け、先ほどグリフレットに城外に摘まみ出されそうになっていたのを俺がここに連れて来た」

カイの大まかな説明を聞くと、マーシャはウルフィウスの青ざめた表情を見つめながら尋ねた。

「ウルフィウス卿は、モルガナ姫をログレスの王妃に迎えることに反対なのですね」

「あの女は魔女です」

「魔女?」

 どきりとしてウルフィウスの顔を凝視する。ただの人間であるはずの彼がなぜそうも断言できるのだろうか。マーシャが知り得ていないことを彼は知っているとでもいうのか。

 ウルフィウスは声を荒げ、血管が浮き出るほどにきつく拳を握り締めて言った。

「あの女を陛下に近付けてはなりません。まして王妃に迎えるなど、あってはならないのです!」

「詳しくお聞かせください」

「あの女は陛下を慕っているように振舞っていますが、そんなはずがないのです。なぜなら、あの女は――」

 その時、小さな小さな声が聞こえたような気がして、マーシャは、ぱっと片手を上げてウルフィウスの言葉を遮った。

 耳を澄ませ、気配を感じ取ろうと、前屈みになって足元を見やれば、マーシャのつま先に、ぽんっ、と泡が弾けるようにブラウニーが姿を現した。

 茶色い襤褸を纏った小さな彼は、マーシャが預けた首飾りを大事そうに両腕で抱きかかえている。

「なんだ⁉」

 驚愕するウルフィウスに、大丈夫と短く答えてからマーシャは小さな彼と視線を合わせるために膝を折ってしゃがみ込む。

「何か分かったの?」

 小さな彼は得意げに胸を張り、マーシャの手のひらに首飾りを乗せて口を開いた。

『これはイグレインの首飾りだ。おれの仲間のひとりがイグレインが身に着けているのを何度も見ている』

「イグレインって?」

『ティンタジェル公ゴルロイスの妃だ』

「ティンタジェル公ゴルロイスっていうと……」

「モルガナ姫の父君だ」

 カイが後ろから口を挟んだ。小さな彼はちらりとカイに視線を向けると、こくんと頷いてから言葉を続けた。

『首飾りは、婚儀の折、永遠の愛を誓った証としてゴルロイスからイグレインに贈られた。十数年前、イグレインが死ぬと、首飾りは彼女の末の娘に受け継がれた』

「モルガナ姫ね。じゃあ、やっぱりモルガナ姫の大切な物で間違いないわ」

 マーシャが立ち上がると、それに合わせてブラウニーは、ぱっと姿を消した。マーシャは手のひらに乗せた大きな紅い宝石がついた金細工の首飾りを見つめる。

「両親の愛の証。それをずっと大切にしていたモルガナ姫の狙いは何かしら? ログレスの王妃になること? そんなことのために悪魔と契約するかしら?」

「そんなことと言えてしまうのは、マーシャくらいだろう。普通の女は、王妃になりたいものだ」

「そうかしら? ううん、そうだとしても、モルガナ姫ほどの美貌と自信があるなら、王妃になりたいという欲のためだけに悪魔と契約する必要があるかしら? 自分の力で十分アーサーを魅了できるのではないかしら? 実際、媚薬を使ってアーサーを虜にしたみたいだし」

 虜なぁと言ってカイが両腕を広げ、大きな動作で肩を竦めると、ウルフィウスがマーシャの手のひらに乗せられた首飾りを見つめながら苦々しく口を開いた。

「あの女の狙いは、陛下の命でしょう。殺したいほどに憎んでいるはずです」

「でも、殺す機会はいくらでもあったはずよ。媚薬を嗅がすことができるのなら、毒を盛ることもできたはず。毒性のある匂いを嗅がすことも」

「ただでは殺さぬということです」

「どういう意味?」

「あの女は承知で陛下に近付いたのです。承知した上で、陛下と同衾しようとしています。そんなことをすれば……、そんなことをしたと教会に知られれば、ログレスと陛下はローマ帝国という後ろ盾を失ってしまいます」

「どういうこと?」

「あの女はけして陛下の妃にはなれない。いや、陛下の妃には迎えてならない女なのです」

「ええいっ、まどろっこしい言い方ね!」

 ウルフィウスは明確な言葉を避けるような言い方を繰り返していた。結果、同じような言葉ばかりを口にするだけで、マーシャは次第にじれったくなってきた。

「つまり、どういうことなの⁉」

「あの女は……」

 ウルフィウスはそこで一度言葉を切り、躊躇うように視線を巡らせ、マーシャを見、カイを見、そして、覚悟を決めたように重い口を開いた。

「陛下とモルガナ姫は、血のつながった姉弟であられます」

「は?」

 思わず声が出てしまったのは、カイだ。幼い頃からアーサーを見守ってきた兄貴分の彼にとって寝耳に水のことだったのだろう。

そんなカイをマーシャは一瞥してから、ウルフィウスに先を促す。

「陛下のご生母は、イグレイン妃です」

「そんなはずかない! アーサーは孤児だ!」

「孤児にも産みの母はいます」

「そ、そりゃあそうだろうけど……。だけど、それならっ。アーサーの母親がイグレイン妃だと言うのなら、どうしてあいつは孤児なんかになったんだ!」

 納得がいかないと、カイは嚙み付くようにウルフィウスを問い詰める。今にも掴みかかるのではないかという勢いだ。気を高ぶらせているカイに対して、マーシャは冷静に言葉を選んでウルフィウスに尋ねた。

「アーサーが弟であるなら、モルガナ姫はなぜアーサーを殺したいと思うほど憎んでいるの?」

「弟だからです。陛下のお父君は、ウーゼル王であられる」

「ウーゼル王⁉」

 カシャンと食器同士がぶつかる音が響いた。これまで空気のように気配を消してテーブルの上を片付けていたタバサが思わず立ててしまった音に振り返ると、彼女の指先が小さく震えていた。

タバサは朝食の後片付けをしながら、ずっとマーシャたちの会話に耳を傾けていたのだろう。致し方がない。今でこそ身分に差がついてしまったが、タバサは元々、アーサーの幼馴染だと言っても良い間柄だ。アーサーのことが心配であるが故に、アーサーの話をする三人の会話に耳をそばだてずにはいられなかったのだ。

「ウーゼル王がアーサーの父親? そんなら尚のこと、孤児になった理由がわからねぇ」

「あるドルイドが予言したのです。ウーゼル王は短命であると。唯一の息子が幼いうちにウーゼル王は命を落とす。残された息子は国を奪われ、殺されるか、奴隷にされるか。さもなければ、傀儡の王となるだろう、と。それ故、そのドルイドの助言に従い、ウーゼル王の後継ぎであることを隠して養子に出したのです。このことを知っている者は、わたしの他にごく少数しかいません」

「父上は知っていたのだな」

 ぽつりとカイが零す。彼は記憶を遡り、おそらくずっと疑問に抱いていたことに答えを見つけたのだ。

「思えば、俺と同等の教育を授け、孤児とは思えない待遇だった」

 マーシャは、つまりと人差し指を口元に押し当てながらウルフィウスの話をまとめる。

「アーサーの父親はウーゼル王で、モルガナ姫の父親はゴルロイスだから、二人は異父姉弟になるのね」

 だが、それがどうしてモルガナの憎しみの要因になるのだろうか。

 ウルフィウスはマーシャの言葉に頷き、暗く沈んだ表情を浮かべた。その眼差しは過去を写し、深い後悔を抱いているかのようだった。

「戦争によって、滅ぼした国の女を妻に迎えることはよくあることです。故に、滅ぼされた国の王妃が、自分の夫を殺した相手に身を委ねることも少なくはない話でしょう」

「ウーゼル王はゴルロイスを殺して、イグレイン妃を娶ったのね」

 それなら、モルガナにとってウーゼル王は父親の仇だ。ウーゼル王が亡くなってしまい、やり場のない憎しみを、その息子であるアーサーに向けているということだろうか。

 ウルフィウスは首を横に振った。彼はまるで懺悔の言葉を口にしているかのように重々しく、言葉ひとつひとつを植物の棘を喉から吐き出すように語る。

「ウーゼル王はじつに卑劣な方法でイグレイン妃を犯したのです。ゴルロイスが戦場で命を落としたのも、イグレイン妃をウーゼル王が王妃に迎えたのも、その後のことです」

「それって、つまり婚姻を結ぶ前に、――それどころか、夫がまだ生きているのに、無理矢理……ってこと?」

 ぞっとしてマーシャはそれ以上、言葉を続けることができなかった。

 手のひらで、ひんやりと輝く紅い宝石の存在を思い出して、マーシャは、ぎゅっと首飾りを握り締めた。

 理解できた気がした。モルガナは母親の屈辱と恨みを首飾りと共に受け継いだのだ。

 これですべてのピースがそろった。モルガナの動機、目的、そして、悪魔と関わったことの証拠。しかし、時間がない。急がなければならない。

「アーサーのもとに行かなきゃ」

 きっと今頃、玉座の間はアーサーが召喚した諸侯でいっぱいだ。そして、アーサーとモルガナも自分たちの婚姻を宣言するためにそこにいるはずである。

 諸々の式は後日と考えているようで、それは止められるとしても、不運にも今、キャメロット城には司祭が滞在している。司祭の前で婚姻を宣言させるわけにはいかない。たとえ婚姻も同衾も止めることができても、一時でも姉弟で婚姻を結ぼうとしたと見なされたら、取り返しのつかないことになる。

 マーシャたちは廊下を駆けるようにして玉座の間に続く大きな扉の前までやってきた。

扉の正面にドラゴンの彫刻が施されている。扉の両脇に兵士が立っていて、彼らはカイとマーシャの姿を見ると、手にした槍を交差させて行く手を阻んだ。

「退いて!」

「なりません。陛下の命令で、お通しできません!」

「退かないと、燃やすわよ!」 

 カッと目を見開いて脅しの炎を手のひらの上で燃やしてみせれば、兵士たちは顔を青ざめ、すっと両脇に退いた。

マーシャは半ば体当たりするように大きな扉を両手で押して開いた。

「アーサー!」

 前触れもなく開いた扉を玉座の間に集まっていた人々が振り返った。赤、青、緑、様々なドレスを着た貴婦人たちがいっせいに息を呑む気配がした。扇を顔の前に開いて、ひそひそと隣り合う者同士で囁き合う。

 華やかな衣を身に纏った貴族は、見るからに偉そうに体を反らしていたり、ふてぶてしい表情を浮かべていたり。そうかと思えば、こちらが不安になるほど、おどおどしている者もいる。

騎士の中には顔見知りになった者もいるし、まだ言葉さえ交わしたことのない者もいる。そこそこ身なりは良いが、貴族でも騎士でもなさそうなのは、農民だろう。もちろん、ただの農民ではなく、どこそこの村の有力者だ。そして、僧侶の装いをしている者もいて、おそらく司祭が大勢連れて来たのだろう。普段よりもその姿が目立って感じられた。

顔。顔。顔。様々な顔たちが、奇異なものを見るかのような眼差しをマーシャに投げかけてくる。

玉座の間は、縦に長い石造りの薄暗い広場だ。床には、その入り口からずっと奥まで赤い絨毯が敷かれ、人々は絨毯を踏まないように左右に分かれ立ち並んでいる。

絨毯の先に段がある。マーシャがさらにその先を追って見上げれば、数段上がった先に玉座があり、アーサーが座っていた。

「アーサー」

 ひどく久しぶりにその姿を見たように思う。あんなにも傍を離れたくないと駄々をこねていたのは、アーサーの方だというのに。まるでマーシャの方が彼に恋焦がれていたかのようにマーシャの胸が熱くなる。

(やっと会えた)

 マーシャは絨毯の上をつかつかと歩き、玉座に近付いていく。後ろからカイとウルフィウスがついてくる。マントのフードの中には黒猫の重みがあって、マーシャの左手の中には紅い宝石の首飾りが握られている。 

 マーシャは段のすぐ下まで来ると、チュニックの裾を摘まみ、膝と腰を曲げて礼を取った。

「オークの賢者メルディンの四番目の弟子、マーシャ。ログレスの王に進言致します」

 マーシャは体を起こし、顔を上げる。そして、真っ直ぐにアーサーを見つめた。

 アーサーはまるで人形のように沈黙して玉座に腰掛けている。

まるで覇気を感じられない。目を開けているが、マーシャのことなど見えていないようだ。それでも構わずマーシャは声を張り上げた。

「魔女モルガナをログレスから追放すべきです!」

 一瞬の間の後、広場にどよめきが広がる。段のすぐ下で他の僧侶たちと共にいた司祭が転げるようにマーシャの前に飛び出してきて、怒りに顔を赤らめながら声を荒げる。

「何を言っているんだ! 魔女は貴様だろう! 魔女を追放しろというのなら、貴様がログレスから出て行くべきだ!」

 マーシャは司祭の頬骨が浮き出た顔を一瞥する。神経質そうに痩せ細った彼は、半年前にローマ帝国の命を受けて赴任して来た司祭で、アーサーが即位した時に、アーサーに王冠を授けたカンタベリー寺院の司祭とは別人である。

 マーシャは鼻で軽く笑うと、目を細めて司祭の方に向き直った。

「わたしは魔女を追放しろと言っているのではありません。ログレスとアーサー王に害をなす魔女モルガナを追放しろと言っているのです!」

 マーシャはアーサーに寄り添うように玉座の傍らに立つモルガナに視線を向ける。彼女は己の身の汚れなさを主張するかのような純白のドレスを身に纏っている。そのドレスには小さな宝石が数えきれないほど縫い付けられており、彼女が身動きする度に、まるで妖精の粉が舞うようにキラキラとドレスが輝いた。

 段の下のモルガナに限りなく近い場所にブラック卿が立っている。不気味なくらいに表情がなく、先ほどから微動だにしていない。

 絨毯を挟んで反対側の段の下、アーサーから限りなく近い場所にはグリフレットが剣を携えている。本来、その親衛隊長の位置は、カイのあるべき場所だ。

 アーサーと同い年だというグリフレットは、ひょろりとした見た目で、癖のあるブラウンの髪をしている。カイの話では、表情豊かで、陽気な性格なのだと聞いたが、残念ながら今マーシャの目に映る彼は、アーサー同様、濁ったガラス玉のような瞳で前だけを見据え、一定の間隔で瞬きを繰り返しながら黙って佇んでいた。

(操られている!)

 あるいは、心を奪われていると言った方が正しいのかもしれない。

マーシャは自分とアーサーとの距離を目で測る。十歩。いや、十五歩か。その距離が何とも遠く感じた。

(グリフレットはともかく、一刻も早くアーサーを正気に戻さないと)

マーシャは握り締めていた首飾りの鎖を指に絡ませるように握り締めると、モルガナに向き直る。

「モルガナ姫、狩りの折にお約束した物です。ドルイダスならではの物を捧げましょう」

言って首飾りを掲げて見せた。ゆらゆらと揺れ動く紅い宝石ルビーに、モルガナが息を呑んだのが分かった。彼女は青く澄んだ瞳を氷のように冷たく尖らせて、マーシャを睨みつけてきた。

「なぜぞれをお前が」 

「やはり貴女の物でしたか」

 広場は固唾をのんで静まり返っている。誰もが状況が掴めないままマーシャの言葉に耳をすませていた。

なぜモルガナを魔女と呼ぶのか、モルガナがログレスとアーサー王を害すとはどういうことなのか、人々にはまるで理解できなかった。

「この首飾りは、狩りの折に、わたしに襲い掛かってきた悪魔が持っていた物です。モルガナ姫、貴女の物で間違いないですか?」

「あら、ごめんなさい。よく見たら、わたくしの物ととても似ているけれど、違うみたいだわ」 

「貴女の物ではないと?」

「ええ、違うわ」

「そうですか。では、砕きますね」

マーシャはモルガナの顔を凝視したまま、ぱっと掲げていた首飾りから手を離した。

カシャン、と硬い石畳みの上に音を跳ねさせて首飾りマーシャの足元に落っこちると、モルガナの表情が見て分かるほどに変わる。彼女が胸の奥にずっと潜ませていた怒りが露わとなった瞬間だった。

「モルガナ姫、貴女の物ではないのなら構わないですよね?」

 言って、マーシャは大きな紅い宝石に向かって大げさなほど足を上げ、そして、それを踏みつけようとする。力いっぱい。粉々に砕いてしまうつもりで。

 しかし、冷静に考えれば、マーシャが踏んだくらいでルビーが砕けるはずがないのだ。床に落とされただけでも顔色を変えるモルガナは、よほど首飾りが大切なのだろう。砕かれるかもしれないと本気で焦り、取り乱していた。


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