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猫の四朗  作者: 海水
魔女と星の王子様
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第八十七話

 その日から、夜空にしかないはずの星が、日中にも瞬くと言う現象が起きていた。昼間に星が出たところで別に影響はないと思われたが、夜に出てこなくなってしまったり、太陽と喧嘩したり、夜の道しるべであった星がなくなった事で船が海で迷子になるなど影響が結構馬鹿にならなかった。その他にも恋人同士が夜空を見れないという、どうでもいいかもしれないけど浪漫がなくなってしまうのは困る、という事も起きた。


「アーク、どうしたものかね」


 呑気に紅茶をのむエイラが、ココアをちびちび味わっているアークに尋ねた。


「原因は、どう考えても僕ですよね」


 アークは苦笑いだ。


「過去の出来事を本で調べたけど、ここ三千年はこんな事は起きてい無いようだ」


 優雅に紅茶を嗜んでいるエイラも、眉をひそめている。自分が引き起こした事ではないが、目の前にいる人物が絡んでいるとあれば、放ってはおけない。


「僕が夜中に星を監視してると、彼らもおとなしいんですけど」


 どうやらアークの姿が見えないと、星が不安になって挙動不審を通り越した情緒不安定な常軌を逸した行動をとるらしい。四朗的には星が行動をとること自体が常軌を逸しているのだが。


「アークが夜に見てやれば収まるってんじゃないの?」


 床にだらしなく寝そべっている四朗が、お腹の上に頭を乗せているのチェルナの喉をなでなでしてゴロゴロ言わせている。


「まぁそうなんですけど。でも一晩中見ているわけには……僕も眠いですし」

「一晩くらいなら可能だろうが、ずっとは無理だな」


 エイラはアークの肩を持つ。夜中ふたりで塔の屋上で、どうなるかの実験をしたのだ。アークが姿を見せている時は、星は安心して大人しくしていた。これは四朗も見ていたのだ。ちなみに一緒にいて見ていたはずのチェルナは四朗に抱き付く形でぐっすり寝ていたのだが。


「他の方法を探すしかないってことか。書庫に役立ちそうなものは無いの?」


 四朗はチェルナに腕を甘噛みされながら、まともなことを言う。チェルナは話に興味がないようだ。


「それがもう探したんだよ。というかそこにある本の内容は全て頭に入ってるからね。残念ながら解決に結びつくような知恵とか知識は無いんだ」


 エイラが自慢げだが困った顔をする。解決方法無し、と顔に出ていた。


「アークが月に戻るのが確実な方法ではあるんだけど……」

「まぁ、そうなんですけど……」


 二人はちらとお互いを見た。そして直ぐに目を逸らす。


「できれば別な方法があればな、と」


 エイラは奥歯にものが挟まったような言い方だ。四朗は頭のなかで「ふーん、なるほどねー。エイラ的にはアークを返したくはないのか」と呟く。エイラにはバレてるかもしれないが声に出すよりはましだ。


「だったら月に行ってみれば良いのじゃ」


 今まで話を聞いていなかったと思われたチェルナが声をあげた。

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