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猫の四朗  作者: 海水
魔女と星の王子様
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第八十一話

 小鳥のピーピーとした鳴き声を目覚ましに、アークは目を覚ました。妙に暖かくて、妙に柔らかな感触に包まれて、だが。目を開けると視界に入るのは黒い寝間着と大きな二つの山。

 がばっと起きると、アークはエイラに抱えられるように寝ていた。


「なんでエイラさんがこっちにいるんですか!」


 アークが叫ぶと近くにいた小鳥が飛び立ってしまう。その羽音に起こされたのかエイラがゆっくりと目を開けた。


「……おはよう、アーク。だってベッドは一つしかないし、君が寒そうにしていたから温めていたんだけど? ふわぁぁ」


 エイラは大きな欠伸をした。


「だからベッドの両端で寝てたじゃないですか」


 確かにベッドは大きい。キングとかクイーンとか、そんなレベルじゃない。大王クラスだ。ゴロゴロと転がれる大きさだ。


「ふふ、でもよく寝られたろう?」


 エイラはにやっとした。それがからかっているようにも見え、アークはそれが分かっているのか、ぷぅとほっぺを膨らませた。若干耳を赤くしながらだが。





 今朝の朝食は温めたパンと肉詰めと茹でた卵だ。エイラは左手にフライパン、右手に鍋を持ち、魔法の炎で温めていた。

 アークはその様子を眺めていて呟いた。


「あの家にいた時もそうでしたけど、エイラさん、器用ですね」


 肉詰めを焦がさない様にフライパンを小刻みに揺すりながらも、ゆで卵の沸騰しているお湯が溢れない様に火力を調整していた。


「まぁ、慣れさ。こんな事を五百年もしていれば、誰でも達人だよ」

「……その期間だけで僕よりも生きてるんですけど」


 エイラは、驚くアークのセリフに苦笑した。実際にアークの三倍は生きているわけだから当然なのだが。


「さぁ、出来たからささっと食べて。食べ片づけたらアークの希望通り、カマキリを捕まえに行こうか」


 エイラは並べられた皿に向かってフライパンの肉詰めを放り投げ、沸騰している鍋の卵をお湯ごと上に放り、卵だけ鍋で受けた。五百年の修行の成果だ。





 食後、エイラとアークはカマキリを捕獲しに、草原に繰り出した。そしてカマキリは直ぐに見つかったした。なにせ体長は三メートルはあろうかという大型のカマキリだ。草原の遠くからでもよく見える。


「わ、いました! 大きい!」


 アークは指をさして嬉しそうな顔をした。


「大きな声を出すと、ほら気づかれちゃった」


 アークの声が聞こえたのか、巨大カマキリが羽を広げ、猛然と向かってきた。アークは悲鳴を上げエイラの後ろに隠れてしまう。エイラは苦笑いしながらパチンと指を鳴らした。するとバケツ一杯の液体とラッパが空中から落ちてきた。エイラは素早くラッパをバケツの液体に付け、ぷーっと吹いた。ラッパの先からは大きなシャボン玉がぷわーっと膨らんだ。ラッパがプッっというと、その巨大なシャボン玉が突進してくるカマキリを包んだ。シャボン玉はカマキリを包んでふわふわと浮かんでいる。カマキリは泡の中でおとなしくなっていた。


「わっ! カマキリを捕まえちゃった!」

「ふふ、面白いだろう」

「面白いです!」


 アークはいつものキラメキを顔の周りに散らしながら、興奮気味に話す。その様子を見ているエイラも楽しいのか笑顔だ。


「さて、アークにはソイツの背中に乗って貰おうかな」


 エイラは、ちょとだけ、意地悪な笑顔になった。

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