表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の四朗  作者: 海水
魔女と二匹の猫【緑の石】
53/96

第五十三話

「おらがおらが!」

「すっとコどっこい!」


 ノーム達は罵りあいながらも木をむさぼり食っている。何十人というノーム達が、手当たり次第周囲の木を腹に収めていく。みるみる辺りの木がなくなり広場ができてきた。日も当たらないからか地面には草も生えていない。体以上の木を平らげるが、ノームの外見に変化は見られない。妖精だからなのか。


「……これは収拾がつかないな」


 エイラはこっそりと上空に杖を浮かせた。ノーム達の注目を集めてしまうと面倒だからだ。空に逃げたエイラは懐から珈琲カップを取り出した。カップからは仄かに湯気立ち上っている。


「せり上がってくる木はボロボロだから、シロ君とチェルナは頑張っているようだね」


 エイラは杖に座りながら珈琲を啜る。地中の四朗とチェルナの苦労も知らず、呑気なものである。

 眼下にはノーム達が更に増えて暴食と言える程の健啖さをみせていた。


「こんなのが野に放たれたら、世界の森は、あっという間に野原になってしまうな。だからこそ緑の石があるんだろうな」


 魔女は驚く程の速度で減っていく森を見て、そうこぼした。





「あー、もー、何処にあるんだよー! 緑のいしー!」


 土まみれになりながら、モグラのように地中を掻き進む四朗がボヤいた。もうどれくらい掘り続けているかも分からない。時計などないし、気を抜くと、いつの間にか枝が目の前にあったりもするのだ。何回か枝に運ばれ、土と挟まれそうになっていた。


「命懸けだー!」


 叫ぶ四朗の口に、ごそっと土が入る。ゴホッとむせるが、堪忍袋の緒も切れたようだ。


「コンニャロー、食ってやるー!」


 白猫は、半ばヤケになっていた。





「まったく、シロは酷いのじゃ!」


 チェルナもひたすら土を掻いているが、こちらは休み休みだった。体力は四朗よりもあるが、気力が続かないのだ。


「帰ったらお仕置きなのじゃー!」


 白い毛並みをモフり倒そうか、それとも全身くまなく毛繕いをしてもらおうか、白く長い尻尾に抱きつこうか、一晩中ナデナデ添い寝して貰おうか。どうやってお仕置きしようか考えているチェルナは、掘っている方向がずれている事に気が付いていなかった。


「ふふふ、妾を放っておくのが悪いのじゃ!」


 考えている事が、果たしてお仕置きに該当するのかは別として、黒猫はやる気を取り戻し、また掘り始めた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ