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猫の四朗  作者: 海水
魔女と二匹の猫【緑の石】
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第四十五話

 夜更かしをして眠い目をこすっている二匹の猫がベッドで伸びていた。すでに太陽は「おはよう」ではなく「コンニチハ」に近い位置にある。


「眠いのじゃ」

「アトゴフ~~ン」


 四朗は妖怪アトゴフンと戦っていた。なかなかの強敵らしく、目は閉じたままだ。

 エイラは椅子に座り、目の前のベッドでのたうち回る猫二匹をおやつに、朝の珈琲を堪能しているところだった。 


「寝てはダメなのじゃ!」

「んぎゃ」


 先に正気に戻ったチェルナに、いつもの朝のダイブを食らって四朗は悶絶していた。朝の風物詩はいつも通りに繰り返されていく。


「ほらお二人さん、起きてくれないと朝食が終わらないぞ」


 ふふっと笑う魔女にせかされて、白と黒の猫はベッドから飛び降りた。が、寝ぼけていた白猫は着地に失敗し、地面に転がっていた。





「なぁエイラ。緑の石って、何処にあるんだ?」


 カリカリを食べ終わり、満腹状態の四朗が尋ねた。口元にカリカリの破片がくっついているが分かっていないようだった。


「緑の石はねえ、腐海にあるんだよ」


 エイラは手を伸し、四朗の口元のカリカリの破片を指で取った。そのままチェルナの口元に持っていくと、彼女はペロっと舐め取った。


「シロは子供なのじゃ」

「……チェルナの方がよっぽど子供だろうに」

「口の周りにお弁当をつけるのは、お子様の証なのじゃ」

「寝ぼけてただけだって」

「まぁまぁ朝から仲の良さを見せつけなくても良いからさ」


 エイラが苦笑いしながら、二人の頭をポムポムと撫でる。撫でると二人の尻尾はぺたんと地面に付く。髭もへにゃっと垂れ下がり、機嫌も良くなる。精神はともかく肉体は猫なのだ。


「フカイってなんだ? 土と空気を綺麗にする、アレか?」


 撫でる手のしたから四朗の声が聞こえてくる。アレ、とはアレなのだろう。


「アレってのが何を指すのか分からないけど、腐海っていうのはだね、緑が膨植している森の事なんだ」

「フカイだの、ボウショクだの、難しい言葉は分からないのじゃ」


 七歳の知識しか無いチェルナには分からない言葉だろう。使い魔の体になってからは勉強などしないのだから仕方が無い。


「膨植というのはだね、木々が爆発的に増え続けている事を言うのさ。木こりさんが、頑張って木を切って、森の拡大を防いでるんだ」 

「……木が無限に手に入るから、良いことなのか?」

「家が沢山建てられるのじゃ!」


 四朗は首を捻って考えている。チェルナは無邪気だった。


「木を切らないと、折角開墾した畑が森に飲み込まれてしまうんだよ。でもこれも自然の摂理だから仕方がない面もあるんだ。人間はそうやって自然と共存してきたんだから」


 エイラは持っている珈琲カップをテーブルに置いた。


「緑の石は、そんな石なんだ」

「ん? ってことは、青い石と赤い石も、そんな役目があったのか?」


 四朗が二つの石が入り込んでいる自分のお腹の辺りをさすった。さすったところで、何が起こるわけでも無いのだが。


「青い石は水を、赤い石は火を発生させるのさ。こんなの物は、世界のそこかしこに落ちている物なんだよ。人間は気が付いていないだけさ」

「気が付いても、使い道がないだろうなぁ」


 凄いものだとは思うが、どう使うかなんて思いつかない四朗だ。


「だからこそ、使い魔には必要なんだ。強力な石を体内に持つことで、肉体も強化されるからね。今のシロ君だって、その辺の屈強な人間よりも頑丈なのさ」

 

 魔女は白猫にむかい、パチリとウィンクをした。

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