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猫の四朗  作者: 海水
魔女と二匹の猫【緑の石】
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第四十一話

 魔女と二匹の猫は、草原を突っ切って走って行く一本の道の上を飛んでいた。急ぐわけでもなく、のんびりと杖は進んでいた。

 ちょうどお日様も真上に来ており、陽気な日差しを振り撒いていた。


「んー、この先に街があるね」


 杖に横座りで腰かけているエイラが、額に手を当てている。かなり遠くだが、街らしき建物と壁が見えていた。茶色い煉瓦で造られている建物だ。何処となく暖かいイメージが湧く。


「カリカリも尽きてきたぞー」


 杖の先端には四朗が陣取っていた。髭を靡かせて、風を切る快感を独占中だ。

 赤い石を手に入れてから既に数日経っていた。予定ではすぐに帰るだけだったから、余計なカリカリなどは持ってきていない。

 チェルナは食べなくても問題は無いが、未だ使い魔になっていない四朗には必要だった。魚でも肉でもいいのだが、カリカリは外せない。あの食感が良い、と四朗は豪語する。


「たまには街に行ってみるのじゃ。肉も買うのじゃ」


 四朗の後ろに、ぴったりとくっついているチェルナが、手を挙げて賛成の意を表した。くっついているというよりも、背中に貼り付いているといった方が正確だ。四朗としては自転車の二人乗りの感じなのだろう。背中に感じるのは猫のもふもふだが。

 

「じゃあ、行ってみよう!」


 魔女と二匹の猫を乗せた杖は、ゆっくりと高度を落としていった。





 街に直接降りるわけにはいかないから、ちょっと手前で地面に降りた。


「空を飛ぶのも快感だけど、やっぱり地面を走り回る快感には勝てないな」


 四朗は地面の感触を確かめるように、前足でぽむぽむと叩いている。


「はは、まぁ、大体の生き物は地面からは離れられないんだよ」


 四朗は、どっかで聞いた事のある科白を聞いて首を捻った。何処でだろうか?とぐりぐりと首を捻り過ぎて転がった。そのまま白い何かになって転がりまくっている。


「難しい事考えるよりも、ごろごろ転がってた方が楽しいや」


 赤い石を吸収したせいなのか、ふさふさの毛並みに汚れがついても、体をぶるっと震わせると綺麗に落ちるようになった。これで、いつでも真っ白なふさふさはキープされる。


「妾も混ぜるのじゃ!」


 ごろごろ転がる四朗目掛けて、チェルナがダイブした。ぐぇ、と短い悲鳴が聞こえたが、エイラはスルーした。二人がじゃれるのは、既に日常の風景だ。


「仲が良いのは分ったから、そろそろ行くよ」


 魔女帽子を脱いで、赤い髪を露わにしたエイラが、じゃれついている二人に声をかけた。

 背中まで伸びている髪は、縛ることなく流れ、風に泳いでいた。


「やっぱ、帽子が無い方が良いな」

「あっても良いけど、無い方がよりいいのじゃ」


 四朗の言い方では、女の子は喜ばない。チェルナは、やはり女の子だった。何事もフォローが大事だ。


「はは、褒められると嬉しいねぇ」


 エイラはしゃがみ、二人を一撫ですると、行こうか、と声をかけた。


「よっしゃ、競走だ!」

「ちょ、待つのじゃーー!」


 四朗が駆けだすとチェルナもつられて走り出した。残されたエイラも、よっこいせ、と立ち上がって走り始める。


「ちょっと、置いていくなんて酷くないかい」


 尻尾を立て、蛇行して走る猫二匹を、魔女は追いかけていた。

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