第三十七話
エイラはチェルナと四朗を抱えて走った。炎で出来たミニスカートが捲れるのも気にせず、走った。
羽を広げたファイヤードレイクがドスドスと追いかけて来ている。その真っ赤な牛の身体に、湯気がほわほわしていた。
「ち、ちょっ、エイラ!」
「牛さんが! 牛さんに食べられてしまうのじゃ!」
エイラは二人を両脇に抱えたまま、近くの炎に隠れた。自分達も炎になっているから、ぱっと見では、分からない。擬態と言う奴だ。
エイラは炎の陰からひょこっと顔を出した。
「ふふ、これなら見つからないぞ」
追ってきていたファイヤードレイクが、キョロキョロと辺りを見始めた。エイラ達を見失ったようだ。
「ヴモ~~」
ファイヤードレイクは、のっそりと鳴き声をだしたが、正に牛だった。鼻輪でもさせたらホルスタインにしか見えない。
赤くて、でかいけど。
「やっぱり牛だ」
「やっぱりなのじゃ」
見失ったからか、ファイヤードレイクはエイラ達が隠れている炎に顔を近づけ、口を開けた。ガブッと炎をかじりとると、もしゃもしゃと食べ始める。どうやら知能も牛のようだ。
美味しいのか、口を動かしながらもファイヤードレイクは、ちょっとうっとりしていた。
その大きな一口で炎が減った分で、エイラ達の姿も、ちょっとだけど見えてしまっていた。
「おっと、見つかってしまったようだ」
エイラとファイヤードレイクの目が合った。数舜見つめ合う。
「ずいぶんと、つぶらな瞳じゃないか」
「ちょ、エイラ!」
「呑気に感心している場合じゃないのじゃ!」
「ブモー!」
赤い巨大な牛に追いかけられ、魔女は二匹の猫を抱えたまま、また走り出した。
エイラはわざと炎に身体を掠らせて、走っていく。蛇行して、追跡をし辛くしていた。
「ははは! 逃げ回るのってのも、楽しいねぇ!」
追いかけて来るファイヤードレイクにとって、炎は餌ではあるが、邪魔な存在でもあった。エイラが炎のギリギリを逃げれば、必然的にファイヤードレイクの足にひっかかる。
逃げながらもエイラは楽しそうだった。
「うまく引っかかってくれれば、良いんだけどね!」
そう言いながら、エイラは山頂に向かってひた走った。
「あ、あれ?」
「あの牛が追いかけて来ないのじゃ」
振り返れば、ファイヤードレイクは途中の炎をガツガツと貪り食っていた。一心不乱に食べるその姿からは、鬼気迫るものがあった。牛だけど。
「走り回ったから、お腹が空いたんだよ。きっと」
「はぁ? 腹へった?」
「……まっこと、牛なのじゃ」
「はは、食べても美味しくなさそうだけど!」
「苦いのは嫌なのじゃ!」
「まぁまぁ。でも、上手くいったもんだね!」
二匹の猫を抱えた魔女からは、してやったりという声が聞こえた。
スミマセン、忙しくて続きが書けていません(つд`)
次回からは、書けたら更新になります。
スミマセンm(_ _)m




