第二十四話
「その黄色い石は、お互いを呼び合うんだ。もし迷子になっても石が教えてくれるよ」
ちょこんとお座りをしてカリカリを食べている二人に対して、エイラが説明をしている。どうやら頭の中に、こっちにいるよ!と声がするらしい。
「なるほどモグモグ。チェルナのいる方向をモグ、教えてくれるのか」
「そういうことさ!」
四郎はカリカリを頬張りながら、はしたなくも喋っていた。
「シロ、マナー違反なのじゃ」
「ごめーん」
「ま、そんな状況にならない方が、良いに決まってるんだけどね」
エイラは最後にぐいっとカップを傾けて、一気に珈琲を飲みほした。
「さて、行こうか!」
魔女のひと声で出発が決まった。
塔の外には魔女と二匹の猫がいた。エイラは小さな肩掛け鞄をさげ、杖を持っている。そして大きな鳥籠が脇に置いてあった。釣鐘のような形の、メルヘンチックな鳥籠だ。
チェルナと四郎は首をかしげてその籠を見ていた。猫の二人が入っても余裕なくらい大きい鳥籠だ。
「さぁ、この籠に入って。さぁさぁ!」
エイラは屈んで二人のお尻を押しながら、鳥籠へと誘導していく。
「な、なんで籠なのじゃ?」
「杖の上でも安全だろ?」
チェルナも四郎も不服を申し立てている。確かに籠に入れられるのは、いい気分ではない。
「今回はかなり飛ばすから、危ないんだよ」
珍しくエイラも困り顔だ。という事は冗談抜きで危険だ、という事だ。チェルナも四郎もお互いを見合った。これは本気なのだ、と。
「それでは仕方がないのじゃ」
「命あってのものだよね」
白い猫と黒い猫は大きな鳥籠の中で、ちょこんとお座りをしていた。
「さて、行くかな」
エイラは杖を宙に浮かせ、鳥籠フックをそこに掛けた。何処からともなく飛行眼鏡を取り出すと、とんがり帽子をとり、装着した。エイラの赤い髪がきゅっと絞られた。
いつもの黒いミニスカートの下には、いつの間にかスパッツが顔を覗かせていた。
「本気モードだ……」
四郎がぼそっと呟いた。
「エイラのその恰好、かっこいいのじゃ!」
チェルナの目がキラキラ輝いていた。エイラはその言葉に、にやっと笑った。
エイラは杖に腰掛けるのはなく、杖をまたいでいた。四郎のよく知っている魔女の乗り方だった。でも、とんがり帽子の無いエイラは、可愛い女の子だった。
「あの格好じゃないと、魔女には見えないな」
「普通に可愛いのじゃ」
「なんだい、いつもは可愛くないみたいな良い方じゃないか」
エイラは鳥籠を睨んで口を尖らせた。
「あの格好は魔女の正式な格好さ。まぁ、可愛いと言ってくれた事には礼を言うよ」
魔女はニカッと笑うと、「いっくぞー」と声を上げた。




