第22話 本編で描けなかった明帝国の通貨制度についての補足
改めて最終部を読み返してみると、描きますと言っておきながら、この世界の日明戦争後の明帝国の通貨制度の詳細について、本編中では全く描いていないことに気づきました。
その為にここで補足しておきます。
日明戦争の結果、現実世界で行われてるドルペッグ制度と似たような感じで、日本の円通貨と明の通貨については固定相場制度が導入されることになりました。
それこそ日明戦争が終結した当時、明帝国の経済は色々な意味でガタガタであり、明帝国の通貨には、通貨が一般に流通するには必要不可欠な代物である、いわゆる信用が無くなっており、又、銀による納税が明帝国では行われていましたが、それこそ「皇軍来訪」によってもたらされた様々な技術革新等により、この世界では銀が大量に増産されるようになっており、銀の価値が下落していたことから、明帝国の通貨制度の改革は急務になっているという背景事情があったからです。
それに対処する為に、日本円との固定相場制度を導入することによって、新たに発行される明帝国の通貨に信用を与えることにしたのです。
しかし、それでは明帝国が通貨を発行した場合、日本円との交換が多発することになるのでは。
又、明帝国が紙幣を増刷するようなことをしたら、どうするのだ、という指摘を受けそうです。
実際にこうした場合に、不換紙幣を濫発することで国内経済が大混乱というのは、それこそ現実の歴史上においても、フランス大革命や明治初期等に起こっていて、十二分にあり得ることです。
そうしたことから、紙幣の印刷技術や貨幣の鋳造技術の問題を、表向きは日本政府が明帝国政府に指摘することで、1622年当時にはまだまだ、明帝国の紙幣印刷や貨幣鋳造については、日本が行っていることにしています。
(裏というか、日本政府の本音としては、明帝国政府の紙幣濫発や粗悪な貨幣濫造による明帝国内の混乱を避けるためです。
又、明帝国内の住民に対して、明帝国の紙幣や貨幣は日本製という噂を流すことで、通貨信用を与えるという効果も狙っています。
その一方、こうした状況は、明帝国内の国粋主義者や中華民族主義者にとっては国辱で、何としてもかつてのように紙幣や貨幣の国産化を、という声を挙げさせています)
猶、外国が紙幣や貨幣を造っても良いのか、という指摘を受けそうですが。
貨幣はともかく、紙幣については、現実世界でもそれなりにあることです。
現実の日本でも外国紙幣や外国通貨の製造を行ったことがあります。
更に言えば、紙幣に至っては世界の国々の3分の1しか、自国内で製造していないとか。
その理由ですが、それこそ鋳造技術や印刷技術の問題からです。
又、少額貨幣に至っては、それこそ造れば造る程に赤字になるという事情があります。
紙幣に必要な印刷技術ですが、この小説世界では1970年前後ですので、少なからず事情は違うでしょうが、2024年現在では世界中で3社の印刷機械、日本の小森コーポレーションと独のKBA、ハイデルベルグしか、紙幣の印刷は出来ないという状況のようです。
それこそ100分の2ミリのズレがあれば、熟練の銀行員は即座に偽札と見破るとか。
それ程に精密な印刷技術が紙幣の印刷には必要です。
又、貨幣の鋳造技術も精密さが要求され、2024年現在の日本では貨幣にしても、10円以下の貨幣は造れば造る程に赤字になる程の鋳造技術が要求される代物だとか。
そういった背景から、この世界の明帝国は日本に自国の紙幣印刷や貨幣の鋳造を委託する事態が起きているということでお願いします。
(更に言えば、そういった事情から、明帝国内では自国の紙幣や貨幣を製造しようにもできない現状にあります)
本来ならば、デノミ等を行って10円以下の貨幣を廃止すべきかもしれませんが、そう言う訳にも行かず、日本は赤字の貨幣を鋳造しているようです。
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