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推理令嬢シャーロットの事件簿~謎解きは婚約破棄のあとで~  作者: あけちともあき
魔法のメガネ事件

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163/239

第163話 結局のところ

 教授が発掘品を私物化し、あわよくば換金しようとしていたことが明るみに出た。

 かくして、彼は厳罰を受けることになった。


 そして教授の身勝手に巻き込まれて、職を失ったと見られる元助教授。

 世間は彼女に同情したのだが……厳格なイニアナガ陛下の作った法は、それでも情状を酌量しない。

 殺人者として厳罰を受けることになった。


「平時でも、きちんと法が機能しているのは安心感あるわよね。そういう私の考え方は一般的じゃないみたいだけど」


「ジャネット様は戦時と平時を行き来する場所におられますもの。それに、あの助教授は別に被害者でもなんでもありませんわよ?」


「えっ、どういうこと!?」


 ここはアカデミーの喫茶店。

 庭に面したテラスで、私とシャーロットはお茶をしていた。


「今回の事件には直接関係ありませんでしたけど、教授と助教授はつまり、そういう関係だったのですわ。なので遺跡の発掘物を流したのは助教授。彼女の元職場のお話を聞いて、それが明らかになりましたの。本来ならこの事件、共犯だったのですわねえ」


「へえー。そんな裏が!」


「ちなみに欲に目が眩んだ教授が助教授を振って、それを恨んだ彼女が屋敷に入り込んだのでしょう。ですけど、使用人の方々はまだ、助教授と教授が別れたことを知らなかったそうですわ。だからいつもの恋人が来たと思って、スルーした。書生だけは、助教授が発掘品の本を抜き取ろうとしていたことに気づいたので、彼女を注意したようですわね」


 書生の死体が倒れていた場所。

 そのすぐ横にも、発掘品の本があったのだ。


 本を手にするには、死体となった彼を乗り越えねばならない。

 助教授にはそこまでの度胸は無く、慌てて隠し部屋に逃げ込んだのだと言う。


「ちなみに、隠し部屋の本は全てが民俗学に関するもので、大半は教授の著書でしたわ。あの部屋で本を読むのが教授の趣味だったのでしょうねえ。つまり、彼は研究への情熱を失ったわけではなかった。真面目な研究者と、発掘品を横流ししようとする不届き者は、彼の中で同居していたのですわね」


「人間の複雑さを思い知らされるような事件ねえ」


 私は紅茶を口にしてから、ほうっとため息をついた。


「まあ、そんな話が知れ渡ったら、世間がモヤモヤしちゃうものね。みんなこうやって、悲劇の助教授がけしからん教授を……みたいなストーリーで楽しんでるみたいだし」


「ええ。わたくしも、推理をジャネット様に伝えられたから満足ですわ!」


 シャーロットもスッキリした顔をしている。

 終わってしまった事件の真相を解き明かすことは、あくまで彼女の趣味だしね。


「考えてみたら、隠し部屋を知ってたのってつまりそういうことだもんねえ。いやあ、救われない事件だったねえ」


「一番可哀そうなのは書生さんでしたわねえ」


 そんな話をしていたら、パンパンになったカバンをぶら下げて、オーシレイが戻ってきた。


「よし、帰るぞ。全ての仕事は終わった」


「結構ゆっくりしてましたね」


「お前たちがヴァイスシュタットの観光を楽しんでいたからだ。こちらもゆっくりと仕事を進めさせてもらった。王都が誇る事件解決コンビに休暇をやろうと思ってな。俺が陛下に上申した」


「ゆっくりされてたのは、殿下の提案だったんですか!」


「ああ。お前たちがまさかここで揃うとは思っていなかったからな……。そうなれば仕方あるまい。ゆっくりしてもらうしかない」


 真面目な顔で彼が答えるので、私は思わず笑ってしまった。


「なぜ笑う」


「いえいえ! 殿下が真面目な顔で冗談を口にされるのでおかしくて」


「俺はいつも本気だというのに!」


 私とオーシレイの噛み合わない会話を、シャーロットが実に楽しそうに眺めているのだった。

 彼女はことのついでに、紅茶をお代わりまでした。

 そんなに紅茶が美味しかったの……?


 その日のうちに、私たちは帰路についた。

 ヴァイスシュタットを堪能したのは私たちばかりでなく、バスカーとピーターのコンビもだ。

 二匹は馬車の中にむぎゅむぎゅっと入ってくると、適当な座席の上で丸まって寝始めてしまった。


「この子たちを見ていたら、なんだか平和な旅行だったなあって気持ちになるね」


「彼らからしたら、人間の事件なんて大したものではありませんもの。あら、ケイ教授が走ってきますわ」


 シャーロットが馬車の窓から身を乗り出す。


「シャ、シャーロットさーん! また来てくださーい!! 歓迎しますからー!!」


「はーい! 教授とのお話はとても興味深いものでしたわー! またぜひー! 王都にいらっしゃったら、案内して差し上げますわねー!」


「な、なんだってー!!」


 ケイ教授の声が聞こえてきて、もう面白くて仕方ない。

 しかも次には三人娘まで出てきたらしくて、ケイ教授は彼女たちに取り押さえられてしまったらしい。

 これは、しばらく王都に出てくるのも無理じゃないかな!


 こうして遠ざかっていく、真っ白な町並み。

 さようならヴァイスシュタット!

 今度訪れる時は、事件関係なしでお願いしたいな……!

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