表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推理令嬢シャーロットの事件簿~謎解きは婚約破棄のあとで~  作者: あけちともあき
エルド教学校の誘拐事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/239

第139話 誘拐されたのは

 エルド教神学校に到着。

 そこは壁を真っ白に塗られた、美しい建物だった。


 高さは三階建て。

 教会と体育館と運動場と寄宿舎がついていて、今も運動場を若い男たちが走っている。


 私とシャーロットが現れて、注目を浴びた。


「女子だ」


「女子がいる……!」


「あのプラチナブロンドの子がすごく可愛いんだが……!」


「こらあ貴様らぁ! 煩悩に負けてどうする!!」


 立ち止まった男たちを、後ろからひっぱたく者がいる。

 あれが神学校の教官なんだろう。


 私が手を振ると、彼らはわーっと沸いた。

 教官も。

 みんないっしょである。


「うちの学生を誘惑しないでいただきたい……」


 白髪の学長に言われてしまった。


「誘惑はしていないんですけど」


「ワトサップ辺境伯名代、あなたは大変目立ちますので、禁欲生活をしている神学校の生徒たちには目の毒なのです」


「そうですわねえ。ジャネット様はとても映える容姿をなさっておられますからねえ……。王都では武勇伝が広まりすぎて、このご容姿がマーカーみたいになっていましたわね。誰もがジャネット様だとすぐに分かるという」


「何ということを言うのだ」


 でも確かに王都では、あんな風に見られることはなくなっていたなあ。

 大変過ごしやすくていいと思っていたが、どうやら恐怖とともに名を語られていたようだ……。


「それで学長先生。事件について伺いたいのですけれども」


「はい。実は当神学校の生徒が誘拐されまして」


「まあ。それはわたくしたちが来る前に?」


「いえ、予告状のようなものが届いていたのですが、ついにお二人がやってくる前日に」


 ついこの間、とうとう誘拐されたらしい。

 観光どころではなかった。


 誘拐されたのは、ネフリティス王国に勤める官僚の子息だそうだ。

 予告状には、誰を誘拐すると名指しでは書いていなかったため、神学校ではここしばらくの間、厳戒態勢が敷かれていたという。


 ネフリティス王国から兵士がやって来て、入り口に詰めて見張っていたそうだ。

 そう言えば今もいる。

 ものすごく注目されたような。


「海外に出ますと、ジャネット様は目立ちますわね! お忍びで何かをするなんて不可能だと思いますわねー」


「それほどだったか私……」


 プラチナブロンドは確かに目立つものね。

 これは、潜入調査とか、そしらぬ顔をしての聞き込みとかは無理のようだ。

 つまり堂々とやるしかない。


「じゃあシャーロット、寄宿舎に入りましょ」


「そう致しましょうか」


「あのう、あまり学生たちを刺激しないように……」


 学長がか細い声で懇願してくるのを聞きながら、私たちは寄宿舎に向かった。


 今現在講義に出ている生徒を除き、寄宿舎にはごく少数の人が残っているようだった。

 誘拐された生徒の部屋は三階。

 よく壁はよく手入れされていて、蔦が這っているということもない。


「三階から降りるなら、決死の覚悟で飛び降りるか屋内を移動するか、ですわね。ちなみに部屋の鍵は掛かっていたそうですわ」


「なるほどー。それってつまり、外から犯人は入り込んだってことかな」


「普通に考えるとそうなりますわねえ」


 普通ってなんだ。

 つまり、シャーロットはそうじゃないと考えているわけ?


 彼女は寄宿舎の入り口脇にある、舎長の部屋をノックした。

 現れた男性が、「あっ、女性だ」とつぶやく。

 禁欲生活!


 エルド教の司祭だったりするはずなのだが、口が大変軽い。

 シャーロットが優しく質問すると、ニコニコしながらなんでも答えてくれた。

 大丈夫か、この施設。


「三日前にやはり女性が訪れたそうですわ。それで外に呼び出されて話し込んだことを自慢していましたわね」


「なんてこと」


「彼曰く、壁には各部屋の鍵が掛かっているけれど、それはどれも減っていなかったそうですわ。つまりここから鍵を持ち出したわけではありませんわね」


「ああ、そういうこと! シャーロットは、合鍵を使って内側から開けたと思ったわけね。そして、そうじゃなかったと」


「いいえ、間違いなく合鍵で内側から開けましたわね!」


 確信を込めて、シャーロットがニヤリと笑った。

 な、なんだってー!


「ちょっとよろしいです? 入りますわよ?」


「じょ、女性の入室は……どうぞどうぞ」


 女性に甘い!

 シャーロットはずんずん部屋の中に入り、壁を指差した。


「これが目的の部屋の鍵ですわね。そしてここをごらんなさい。ちょっとテカテカしていますでしょ? 粘土に押し付けて型を取ったのでしょうね。ちょっと粘土の臭いがしますし、こびりついている物もありますわ」


「どれどれ……? ほんとだ!」


 鍵の下部は丁寧に型を取られたようだが、上の握りの部分はそこまで気にされなかったらしい。

 固まった粘土の破片がこびりついている。


 鍵の型を取り、これで合鍵を作って翌日に生徒を誘拐したというわけだ。

 では、実際に現場に行ってみよう。


 舎長はニコニコしながら、合鍵を持ってついて来た。


「一応は俺がいないと、寄宿舎の中を歩き回れないからね。道案内もするからね。任せてねー」


「あら頼りになりますわー」


「ありがとうー」


 私とシャーロットがお礼を言うと、舎長はさらにニッコニコになった。

 うーん!

 この神学校、セキュリティにすっごい問題があるのでは!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ