表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/66

エルフが増えたので……

 農協の駐車場でエルフたちに食事を配る俺たち。

 食事の内容を見て、

「これを毎日?」

 と聞くウハム。

「そうだね、この程度なら問題ない。穀物は外に売っているぐらいだからね」

「それで、我々は何をすればいいんだ?」

 ウハムが再び聞いてきた。

「そこに並んでいるエルフの遺産の農具を扱えるようになって欲しい」

 ずらりと並んだ農機具。ほぼ新品である。

 マニュアルを使って、稼働可能状態にしておいた。

「これを使ってうちの畑を手伝ってもらいたい訳で……。

 あとは、岩石とかから塩だけを抜き出せるのならば、塩の製造かなぁ……」

「岩の中から、塩を?」

 ウハムが聞いてきた。

「露出した岩塩の鉱脈のようなものがある。

 そのまま使うには、不純物が多すぎてね。

 だから、その鉱脈から塩だけを取り出して欲しい」

「それは無理だ。膨大な魔力が要る」


 ありゃ?


「塩水から水を抜くだけと言うのなら可能だが……」


 ふむ……自覚無しでエルフ以上の事をしていたようだ。


「岩を切り出して粉砕とかはできる?」

「それならば問題ない」


 破壊系は可能らしい。

 岩塩を採掘、粉砕して水に溶かし、上澄みをとって水分を抜く……。

 こんな感じかね?

 この世界の塩は砂糖ほどでないにしろ高い。

 村で使う分ぐらいは手に入れても罰は当たるまい。


「まあ、そういう仕事。

 人間にもできるけどエルフのほうが効率のいいことがある。

 だから、その辺をやってもらいたい」

 俺が言うと、

「畏まった」

 ウハムは頷いた。

「それで、そのためにやってもらいたい事……それは人語を覚えること。

 その辺の先生はドリスとベルトランがやってくれると思う。

 この村の人間と付き合い、仕事をしてもらうこともあるからね」

「人間と付き合う?」

「そう、ここの人間がエルフを見下すようなことは無いはず……。

 まあ、無いはずと言うだけで、あるかもしれないが……」

 俺は頭を掻く。

「でも、エルフじゃなきゃできない事をして見せれば、皆が見る目が変わるんじゃないかな。それはこの村だけかもしれないが、それでもエルフを奴隷としか見ない人間が居る場所よりは格段に居心地はいいと思う。その関係を作るまで、時間がかかりそうだがね」

「人間も変わらなければいけないが、我々も変わらなければいけないと?」

 と言う言葉に、

「ん、多分ね。とりあえず、ここで頑張ってみてもらえないかな。

 いきなり村と言うのも難しい人も居るだろう。どうしてもダメと言うのなら、この周辺に森は余っている。そこで暮らしてもらってもいいし」

 話しをしているとウハムは俯いていた。

「何から何まで……。

 こちらからは何も出す物が無い」

「バカだな。魔力を出してもらうって言っただろ? だから、ここに居るのが当たり前のようにしてればいいよ」

 そう言うとウハムが頷くのだった。




 屋敷の中に入ると、書類の処理をしているメラニー。

「ちょっといいか?」

 俺はメラニーに声をかけた。

「どうした?」

 メラニーが書類から目を離し俺を見る。

「エルフの労働力が増えたよな」

「ああ、アキトのお陰で増えたな」

「酒の蒸留をエルフにやってもらおうと思う。

 そこで、エルフの蒸留所からポットスチルという蒸留器を手に入れたいんだ。

 そして、蒸留所をこの村に作る。

 いいかな?」

 俺は聞くと、

「そんなに楽しげな眼をされたら私も『ダメ』とは言えないな」

 仕方ないというようにメラニーは笑いながら言った。

「それに『私に聞く』という筋も通したし、酒が増えるということは、この村が潤うということ。

 この地を守る者として、頼むよ」

 逆にメラニーが頭を下げる。



 これでメラニーの許可を取った、とりあえずポットスチルをパクってこないとなぁ。

 そして、蒸留を成功させないと……。


読んでいただきありがとうございました。


誤字脱字の指摘、大変助かっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ