そりゃ怒られるか……
途中道が悪い所は魔法で整備しながらフォントラス村へ向かった。
漆黒の闇の中、ライトをつけて走る。
夜のせいで、バスは目立なかったようだ。
まあ、街道沿いで野宿している者は驚いたんじゃないかな。巨大な箱が光を放ちながら自分に向かってくるんだ……。
「みんな寝ちゃったわよ?」
ドリスが俺に声をかけた。
「ああ、それでいいんじゃないかな。襲われて逃げてるんだ、起きていても気が滅入るだけだろうからね」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
既にケッテンクラートの運転と戦闘、そっからバスの運転……結構疲れているのは確かだが……。
「んー、久々の徹夜になるかもしれないけど、もう少し走ればフォントラス村。もうちっとがんばってみるさ。
夜が明けて、こいつが目立つのも嫌だしなあ」
休憩をとりたくとも、このバスを止める場所もないのが実情。
フォントラス村まで走る方がマシってところだろう。
夜明ける前、空が薄く明るくなってきたころ、俺たちはフォントラス村に到着した。
すでに起きて何かしら始めている村人に指を差されていたが、仕方ないので、ディーラーまで走った。
村の道を整備しておいてよかったぁ……。
大きな駐車場に止める。
「到着だ」
車の揺れが止まったことに気付いたのか、エルフたちも目を覚ました。
プシューと言う音をさせ自動ドアを開けるとエルフたちは外に出る。
その際に預かった荷物は返しておいた。
「アキト、どこに住まわすの?」
ドリスに言われ手気付く俺。
ああ……ノープラン。
「えーっと」
1ニョッキ、2ニョッキ……と思いながら、目の前に広がる空き地に土魔法による家を十五ほど作った。
森で作った家バージョンの小さい版だ。
「忘れてたでしょ」
ニヤリと笑うドリス。
「その通り」
と苦笑いの俺。
「私が気付いていれば。申し訳ありません」
と絶妙なフォローからの、
「この責めはベッドで……」
とエロコンボを披露するベルトラン。
「家のことを指摘した私が一緒に寝るの!」
ドリスとベルトランの言い合いが始まる。
「これほどのものを簡単に」
唖然としているウハム。
「とりあえず、簡単な竈と、土間、あと一部屋程度の家になるけど、仮の宿としては使えると思う。毛布とかはあるか? 足りなければ魔物の毛皮があるから言ってくれ。
食べる物が要るな……ドリス、ベルトラン頼む」
俺が言うと二人は「「はい」」と言って言い合いをやめメラニーの屋敷に向かった。
「お前は何者だ?」
ウハムが俺に聞く。
「『迷い人』と聞いたが……俺にはわからん。
この村の長の下で、できることをやっているだけだからな」
頭を掻く俺。
「まあ、ここで働いてもらう訳だが、とりあえず仕事のことは落ち着いてから。どこに住まわすかはあなたで決めてくれ。俺も食事の準備を手伝ってくる」
俺もメラニーの屋敷に向かう。
調理場で準備をする二人。声をかけようとしたとき、不意に俺の肩が引っ張られた。
振り向くと腰に手を当て俺を見るメラニー。どう見ても怒っている。
「どうかしたのか?」
「どうかしたじゃないでしょう! あんなにエルフ連れてきて!」
「ああ、エルフの遺産の運転要員。
どうしても魔力量じゃ人間はかなわないからねぇ」
軽く返す俺。
「それはわかるの。ただ、その辺は私に相談して欲しい。
エルフが増えるということは、目立つということ。
良からぬことを考える者も現れるかもしれない。
それこそ奴隷商人の私兵なんかが村を襲う可能性もあるの。
それに、エルフとは言葉が違うから、そのせいで争いが起こるかもしれない」
そりゃそうか。
村を統治するメラニーの意見は正しいな。
「ごめんな。悪い面はあまり考えていなかったんだ。
確かにメラニーに相談するべきだったと思う」
そう言って俺は頭を下げた。
あれ?
何で唖然?
「どうかしたか?」
「えっ、ああ、謝るとは思わなかったから……」
そんなにワンマンだったっけ?
んー……、ああ、ディーラーや農協をパクってきた時も相談してなかったな。
ボルクスの砂糖も……。
反省だね。
「間違ったことをして謝らないでどうする。
それに、この村はメラニーの村だ。だから、メラニーに伺いをかけてから行動するのは当然だろ?
伺いをかけていれば、今のようなことも無かったわけだしな」
「わかればいい。やっぱり一人で気付いたことには抜けていることもある。時間に余裕が有るのなら相談して、その辺を埋めていった方がいい」
確かに、食事や家のことは考えていなかったな。
「それに、パッと出て行って、次の日まで帰らないのは心配なんだ。せめて、どこに行くかぐらいは言っておいて欲しいだろ? 何も言われないのは……」
メラニーは寂しそうな顔をしていた。
「悪かったな。申し訳ない。
ズルいが、これで我慢してもらおう」
俺はメラニーを抱きしめる。
「ホント……ズルい」
メラニーは呟くが、俺を抱きしめる力が強くなる。
「いいわよねぇ」
「はい、いいんですぅ」
後からエルフ二人の羨ましがる声が聞こえたが、とりあえず無視をしておいた。
読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字が多く、申し訳ありません。
指摘、助かっております。
投稿の設定をミスしており、同じ話が続いてしまったようです。
差し替えてあります。
ご迷惑をおかけしました。




