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エルフの価値

 メラニーの所に行って、

「この村で砂糖ができた」

 と報告してみた。

「何!」

 驚くメラニー。


 価値を知っているんだろうねぇ。


「ボルクスに貰った植物……テンサイって言うんだが……その植物の糖分を魔法で抽出して作った訳だ」

 俺は皿を出し、真っ白な砂糖を載せた。

「砂糖とは白い物なのか?

 普通は黒……茶色?」

「白い物だろ?」


 ああ、南方から来る砂糖は、黒蜜が含まれているから黒いのか……。


「植物から取れる砂糖は内部に蜜があるせいで黒くなる。

 南方の砂糖も多分テンサイの砂糖も精製すれば白くなる。

 今回は魔法で成分をとったから純砂糖だ」

「これをどうするつもり?」

「そりゃ、ボルクス商会経由で売るつもり」

「そうか……」

 メラニーはため息をついた。

「最初はこの村の事などは誰も興味を持たないだろうが、砂糖が取れると言う噂が出れば、この地を買おうとする者が出てくるかもしれない」

「その時は問題ない。

 全てをカバンに入れて移動するからな。

 テンサイは種があっても、それを生成する技術が必要。

 今は俺が魔法でやっているが、他の方法を確立しないと製品の中にエグみが残って、砂糖としては喜ばれないだろうな」

 そう言えば……。

「土地が買えると言っていたよな。

 それならば、この村の土地とその周辺を買ってしまえばいいんだよ。メラニー騎士爵の土地にしてしまえばいい。何なら俺が所有者になってもいいしな」

 思いもよらなかったのだろう。

 メラニーはポンと手を叩き、

「それは有りだ」

 と言った。

「じゃあ、メラニーはその辺の情報を調べてみて。

 その金額が集まれば実行で」

「畏まった」

 メラニーもすることが事務仕事ばかりで嫌だったようだ。

 毎日の訓練以外、村の周りを歩き、外に出る用事もなくて暇だったようだ。

 多分土地の買い付けなどはメラニーにしかできないこと、嬉しそうにカストルに乗り街に出るようになる。


 ソファーに座り、ボーっと考える。


 それにしても、酒もそうだが、これも俺が魔法を極力使わない方法を考えないと。

 とすれば、成長については年一回の収穫で問題なし。

 てことで、潰して搾る道具。

 石臼っぽい奴が要る。これは俺でも作ることができるだろう。

 保管庫は……農協の冷蔵庫。乾燥もしているから品質の低下も防ぐことができる。

 結局魔法を使うが、それは許してもらってと……。


 エルフはどうやって酒の蒸留とかをしていたのかね……。


 スマホを取り出し、蒸留で検索をかけてみた。

 ポットスチルっていうのかどうか知らないが、蒸留方法を調べればそれに似た機器があった。


 おっと、ブレワルスの街の奥に蒸留所があったようだ。

 工場の画像が出る。ポットスチルそのもの。

 パクるか……

 しかし燃料を薪でって訳にはいかないだろうなぁ。

 魔石を使って加熱?

 でもそれじゃ魔力が高い者……エルフが必要になる。


 テンサイは煮出して、木灰入れて灰汁をとって、精製。ちょっと色づくかもしれないがサトウキビよりは黒くはならないと思う。

 エルフが抽出してくれれば、いい感じだな。

 ああ……これもエルフか……


 うちのメンバーでは二人。

 ボルクスに頼むのもね……。


 ふと思い立つ。


 ああ……移住してもらえばいいのか……。


 そんな事を考えウンウンと一人で頷いていると、

「ご主人様。何を考えてるんですか?」

 とベルトランがお茶を持ってきた。

 そのまま俺の腹の上を跨ぐ。

「エルフと共生できないかなってね……」

 俺は頭を上げてベルトランを見た。

「どうしてですか?」

 不思議そうに首を傾げるベルトラン。

「ん? 俺たちが手に入れた道具ってのはエルフ基準だろ?

 つまり魔力が高い者仕様。

 だから、魔力を持つエルフに手伝ってもらいたい訳だ。

 奴隷って訳じゃなく、一緒に生活してもらって、働いてもらって、得たお金は分配して買い物もしてもらう。

 まあ、そういうやつ」

 ベルトランを見ながら言うとベルトランは少し考え、

「僕の村はなくなったけど、知っている村に行きますか?

 まだあれば……と言うのが前提ですけど……」


 エルフは愛玩動物のように飼われる。年齢を感じさせない美しさを人間は求めるということだ。魔法が使えないように指輪をして、反抗できないように隷属の紋章を書き奴隷商に売られる。

 ベルトランも奴隷としてオッサンに仕えていた時に出会い、俺の下に居るわけだ。

 つまり、その間に人間に襲われ村がなくなっている可能性があるということ……。


「行ってみるか」

 俺が呟くと、ベルトランは

「はい」

 と返事をするのだった。


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