表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/66

招集

 この国は、ビルヘルミ王国。

 メラニーはフルネームでメラニー・ホフマン。いっちゃん下の騎士爵。

 まあ、それでも国に忠誠を誓っている訳で、戦争があれば駆り出される。

 王国からそんな手紙が来た。

 ソレフテ王国から侵攻があるらしい。

 ソレフテ王国とは国境が接しているらしい。

 向こうは平地が多く穀物も多いため、兵糧が多く兵士も多いと言うことだ。

 逆に我々の方は兵も少なく弱兵。

 たまたま、峠が天然の要害となり、相手を自国に入れることが無かっただけという。

 ノルマの人数としてはメラニー本人と従者一人。

 戦場までの費用と食料は自前らしい。

 ちなみに、従者は俺が行くことにした。


 ドリスにベルトラン、オレゴルに村を任せ、俺とメラニーはケッテンクラートでメドナスに向かう。

「ボルクスは居る?」

 そう、ボルクス商会に立ち寄るためだ。

「アンタか……。

 この前の分は村に納めたはずだが?」

「いや、そういうのじゃなくて、馬が欲しいんだ。

 俺は従者だからこれでいいんだが、メラニーは騎士だから馬が要る。

 馬に乗らない騎士なんて居ないだろう?」

「そう言えば、ソレフテが攻めてくるって言っていたな」

 顎に手を当てボルクスは言った。

 商人だからか情報が早い。

「ちょっと待て」

 ボルクスは上着を取ると、

「乗せてもらうぞ」

 とケッテンクラートの後ろに乗る。

「この道をまっすぐ行って門の手前を左に行けば馬市をやっていた」

 ボルクスの言う通りにケッテンクラートを進めると、そこには多くの馬が居た。

 既に馬は売れているようであまり残っていない。

 ボルクスは、

「こいつらに馬を都合できないか?

 売れ残っている奴でいいやつが居れば……でいいんだが」

 と、馬売りに聞いた。

「居ることは居るんですけどね、馬が認めないんですよ。

 私でさえ主人としては認められていません。

 餌をくれる者ぐらいにしか思っていないんじゃないですかね?」

「その馬はどこに?」

「あいつはほかの馬と一緒にしておくと、頭になって率いてしまうので、別のところに居ます。

 体格が良く力があるということでで手に入れた馬ですが、買ってもらえる者が居ないので大損ですよ」

 そう言って、別の場所に馬売りは歩き始めた。

 俺は低速でそれに合わせる。

 すると、柵に仕切られた場所に到着した。


 某世紀末覇者が乗っていそうな大きい馬に、それよりは少しだけ小さい馬。

 俺を見るなりその二頭が頭を下げた。

 大きいほうにボルックス、小さいほうにカストルと名付けた。

「えっ、なんで、このお方に頭を下げる?」

 馬丁が驚くのを見て、

「まあ、それだけこいつが強いって事なんだろうなぁ」

 ニヤニヤと俺を見るボルクス。

「で、いくらなんだ?」

 ボルクスが聞くと、

「ボルクスさんの商会なら仕入れ値で。

 大きいほうが金貨三十枚、小さいほうが金貨二十五枚で」

 馬売りはボルクスに行った。

「お前、金はあるのか?」

 ボルクスが俺に聞いて来たが、

「あんたに払ってもらった金があるからね」

 ニヤニヤしながら俺が返すと、

「あれがあるならはした金か……」

 と笑っていた。

 結局二頭とも購入。

 馬具も付いていた。

 ケッテンクラートを仕舞うと、馬に乗り換える。

 メラニーは少し小さいほう。

 俺は大きいほうになった。


 俺、馬に乗ったことなんかないんだがなぁ……。


 そのあと、大量の飼い葉を買い付け、カバンに仕舞う。

 それまでの手続きをしてくれたボルクスに、

「助かった」

 というと、

「あんたが生きて帰ってこなきゃ、俺が儲けられないからな」

 と言って笑っていた。


 疲労を考え、俺とメラニーはケッテンクラートで、馬には人を乗せずに曳いて走る。

 そして、集合地である、カヤーニ平原を目指した。

 カヤーニ平原はビルヘルミ王国に抜ける峠の手前にある平原。

 比較的広い平原だが誰も手を出していない。


 畑にすれば、大穀倉地帯になりそうだがな……。


 メラニーに聞いてみると、

「夜は魔物が多い、だからあまり人が手を出さないらしいな」

 とのこと。

 フォントラス村から近ければ、開墾してやるのに……。



 三日後、平原の直前でケッテンクラートを仕舞い、馬に乗る俺たち。

 俺の馬は俺の言葉を聞くとそれに従い動いてくれた。

 お陰で落馬などは無かったが、尻が痛かった。


「メラニー・ホフマン、要請によりまかり越しました」

 受付のようなところにメラニーが声をかけると、

「第一騎士大隊のイェーガー侯爵のところに行け。

 あっちだ」

 と馬が集まる場所を指差された。

 俺とメラニーが連れる馬が大きすぎるのか、遠目に兵士たちが俺たちを見る。

「第一騎士大隊はこちらでよろしいでしょうか?

 メラニー・ホフマン、指示によりこちらまで来たのですが……」

 更に中隊長のケールと言う伯爵の元へ回され、そして最終的には小隊長のシュタール子爵。

 の下に付いた。

 しかしシュタール子爵がまだ来ていない。

 仕方ないので、国の支援を受け待機するのだった。



 国の支援を受けるのはいいがメシマズのうえに冷えているときた。

 支給されたテントもカビ臭い。

 俺はエルフの基地から手に入れたテントを使うことにした。

 魔法で空調が効いているため、湿度などを気にする必要はない。

 毛布で十分寝られた。

 夜間など、内部で照明を点けても外には漏れない。

 便利である。

 空気中の水分を水にしてくれる水筒も役に立った。

 後はカバン内の食糧で過ごす。

 ボルックスにカストルも国が準備した飼葉が嫌らしく、俺が持ってきた物を食べる。


 二日ほどの後、子爵が現れ、四日で足並みがそろう。

 そして、峠の出口に進軍するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ