あの日から
ベルトランの様子がおかしい。
というかあの日以来おかしい。
性転換の指輪をつけ、鼻歌を歌いながらベルトランは俺の世話をする。
正直つけていても性がどっちなのかはわからない。
どうなんだろうな。
俺は性別で好きか嫌いを左右する。
オスはメスを守り、メスはそのオスの子を成す。
それが当たり前だと思っているから。
でもそれは俺の中だけの常識。
俺ってズルくないか?
ある意味、エルフを女装させ、抱いていたハリオートは、俺より柔軟だったのかもしれない。
「ベルトラン。
ちょっとここに来てみ」
俺が呼ぶと、ベルトランは俺が指差した膝の上にちょこんと座る。
嬉しいのかニコニコしていた。
俺はベルトランの右手の指輪を外してテーブルの上に置く。
「えっ」
驚くベルトラン。
胸がなくなる。
「ん?
一応、こっちも知っておかないとな。
全部知った事にはならないだろ?」
俺はベルトランを抱きしめた。
するとニコリと笑ったベルトランに唇を奪われた。
指輪を嵌めずに何度か……そして指輪を嵌めて再び何度か……。
どっちもベルトラン。
うちの女性陣も認めているのか、邪魔は無かった。
俺の常識とは違う。
性転換の魔道具が俺を混乱させたわけだ。
そして二人で寝ていると、ボソリと話し始めた。
「僕はこれでも元々女の子が好きだったんだ。
今はこんなだけど、女の子に告白したことだってあるんだよ。
でもある日、人間に捕まって隷属させられて、あいつに買われた。
女の子の格好をさせられて……。
ずっと……ずっと……何度も何度も、十年も二十年も、こんな格好のままハリオートに……。
そして思ったんだ。
『僕を助けてくれる人は女の人じゃ無理……だから男の人かな?』って……。
僕はそのうち、道行く男の人を見るようになった。
助けてくれそうな男の人を見て妄想するようになった。
人間、獣人、ドワーフ……助けてくれる男の人を想像してハリオートに抱かれることで感じるようになっていった。
そんな時、あの宿で僕の隣のテーブルに座ったご主人様。
奴隷じゃないエルフであるドリス様を連れて、ドリス様を『妻だ』といいきった。
僕はドリス様が羨ましかった。
一目見て僕なんて相手にならない位の魔力があるってわかった。
ドリス様に催眠術をかけようと近寄ったら、そしたらご主人様が起きていて、奴隷から解放してくれて、ハリオートからも解放されて、僕がご主人様が好きになって、僕の全部をご主人様が好きになってくれて、そんなご主人様が僕の隣にいる。
そんな僕を大事にしてくれるご主人様が僕の隣に居て抱いてくれる。
だから、今、僕は幸せ」
そう言いきるとベルトランは赤くなって毛皮の中に潜った。
それがある日の事。
それ以来なんか割り切れた。
それからベルトランは指輪をつけたりつけなかったり……。
外見がちょっと変わるだけ、でも、それはそれでいいと思えた。
今日もベルトランが入れたお茶を飲んでると、俺の背中にベルトランが胸を当てる。
そうやって、ベルトランは今日の性を教えてくれるのだった。
短め三連です。
誤字脱字の指摘、大変助かっております。




