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フォントラス村、内紛

 村に帰り、家に戻るとオレゴルが魔物状態に戻って何かにじゃれ付いていた。

「こいつ何やってるんだ?」

 よく見ると、何か草のような物。

 匂いを嗅いで酔っているようだ。


 ネコがじゃれ付く植物……マタタビ?


 メラニーが居ない。

 以前の長老の目が気になり、オレゴルを置いて行ったのだが、マタタビにやられるとは。


 俺は草を取り上げ、オレゴルを家の外に放り出す。

 そして、魔力でマタタビの成分を追い出した。

「フニャ?」

 オレゴルの目に光が戻る、

 オレゴルの意識が戻ってきたようだ。

「オレゴル、何があった!」

 ネコの姿で

(ぬし)……えっ?

 あっ、長老め!」

「だから何があった?」

「長老がメラニーに何かを嗅がせて連れて行きおった。

『貴族になる儂の野望を邪魔しおって』と言うておった」

「場所は?」

「わからぬ。

 がメラニーの匂いはわかる。

 (われ)がこのままの姿で追いかける」

 伏せるようにしてオレゴルが匂いを嗅ぎ、追いかけ始めた。

 オレゴルの後をついて行くと、農具を置くような小屋が見えてくる。

 入り口には見張りが数名。

 中で何かしているようだ。


 俺は瞬時に近寄り当身を入れると、見張りたちが意識を失った。

 そのまま扉を開けて中に入ると、長老とその息子、そして後ろ手に縛られ、その前で裸に剥かれているメラニーを見つける。

 扉にはオレゴルとドリス、ベルトランが陣取り出られなくしている。

 俺は長老たちとメラニーの間に入り、

「メラニー大丈夫か?」

 と聞くと、

「ああ、まだ何もされていない」

 と、顔を上げて言った。

 辱めようという所だったようだ。

 俺はメラニーを縛る紐を解きながら、

「何やってる!」

 俺は長老を睨み付けた。

「気が強い女でな。私のいう事を聞きやしない。

 この村も私が大きくしたというのに。なぜ、こんな小娘に牛耳られねばならない」

 そして俺を睨むと、

「そしてお前!

 なぜ今現れた!

 なぜ簡単に畑を作った!。

 水路を作った!

 お前が来てから希望ができた。

 お前なら『何とかしてくれる』という者が出てきた。

 今までは私の下に村人がまとまっていたのに……お前のせいで、儂は……いや儂の息子は騎士になれん」


 そんなに騎士になりたいのだろうか?

 こんな小さな飢えた村がいいのだろうか?


「こんな、子が飢えるような村の何がいい!

 領主までが出稼ぎに出なければ税金が払えないような土地。

 このままじゃジリ貧だってわかるだろ?

 畑だって水もなく作物が枯れているようなところもある。

 そんなんじゃダメなんだ。

 頑張れば収穫が上がり、努力すれば土地が増える。

 そんな場所にしなければ意味が無い。

 子供がこの村に残って生活したいと思うようにしないとダメだ!」

「今更何が変わる?

 お前さえ居なければ!」

 長老はナイフを出すと俺に襲い掛かった。

 ナイフが俺の胸に向かう。

 俺がナイフの刃を払うと、柄だけが残り刃が壁に刺さった。

 柄だけになったナイフを長老はじっと見ていた。


「ほい、これを着ろ」

 俺はメラニーに下着と歩兵の服を渡す。

 着替えたメラニーは、

「領主への反乱だ、お前は死んでもらう。

 息子もだ。

 お前たちの家族は、家財を置いて村から出て行ってもらう。

 お前たちはそれだけのことをしたのだ」

 と毅然とした態度で、長老と息子に言った。

 何も言わない長老と息子。

 ただ、うなだれているだけだった。


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