けじめ?
ピピピピピというデフォルトの呼び出し音。ドリスからだ。
俺はスマホに出る。
「ドリス、どうした?」
俺が聞くと、
「ちょっと来て欲しい。
別れた場所から私たちが向かったほうにまっすぐ歩いてもらえばいいから」
俺はスマホを繋げたまま一度カーディーラーの方へ戻ると、ドリスとベルトランが向かったほうへ歩いた。
暫く歩くと大きな建物が現れる。
その屋根の頂点には何かの紋章。
「アキトが見えた。
そのまま中に入って」
言われるがまま中に入ると、大きなホールになっている教会の様な場所だった。
純白のドレスを着たドリスとベルトラン。
二人とも似合っている。
俺は言葉を失ってボーっと立っていた。
二人ともニッとわらって「イタズラ成功」って感じだ。
マネキンには白のスーツがかけてあった。
俺も「着ろ!」ということなのだろう。
すると、おもむろにベルトランが俺の手を持つと胸を触らせる。
ムニュ……。
ムニュ?
「あっ」
という声で俺は現実に引き戻される。
「僕、女の子になっちゃった」
というベルトランの言葉に、
「ウンウン」と頷くドリス。
「何それ?」
驚いて聞くと、
「僕『ブレワルスの街』に行くって言ってたから、貰ったスマホって奴ででいろいろ探してたんだ。
性転換ができる病院があったから中を探すと、性転換の指輪があった。
これは付けるだけで性別を変えられる魔道具で、誰か用に準備していたみたい。
一個だけだけど」
右手に着けたシンプルなシルバーの指輪を見せた。
「付けたら本当に女の子になっちゃった。
いつも付いていた物もないよ。
さわってみる?」
ベルトランが笑いながら言う。
確認は……しないぞ。
そして、
「でも、アキトの子供はできない。
そこまではできないみたい。
でもね、アキトに抱いてもらえたら僕は十分。
男だからダメという理由はコレで消えるからね」
と言った。
俺は頭を掻くしかない。
ベルトランは必死に努力している。
そこまで思ってもらえるなら本望だと思わなければいけないか……。
俺もベルトランに好意が無いわけではない。
「で、こんな格好をしている……」
ドリスが言う。
「要は結婚式をしろと?」
「「美女二人。
嫌?」」
二人からの上目遣い。
「ああ、嬉しいよ」
ベルトランが手伝い、俺はスーツを着る。
造花のブーケを見つけ、二人に持たせた。
そして、俺はカバンをゴソゴソと探し、盗んできた貴金属の中からこれが似合うと思った赤く光る指輪を二つ出しすと、二人を連れて祭壇に向かった。
「そうだな、向こうの世界式でやるか」
「「うん」」
大きく二人は頷く。
「ドリス、ベルトラン、病める時も、健やかなる時も、
富める時も、貧しき時も、
俺を夫として愛し、敬い、
慈しむ事を誓いますか?」
「「はい!」」
「俺は病める時も、健やかなる時も、
富める時も、貧しき時も、
妻として二人を愛し、敬い、
慈しむ事を誓う」
二人はウンウンと頷いた。
俺はポケットから指輪を取り出すと、ドリスとベルトランの左薬指に入れる。
俺が指輪を差し出すと、ドリスが俺の左薬指に指輪を入れた。
「じゃあ、キスな」
先にドリスとベルトランが順番に俺の唇にキスをし、続いて俺は二人の頬にキスをした。
「とりあえずこれで終わり。
俺のほうが先に死ぬと思うがよろしくな」
俺が言うと、
「「??」」
ハテナマークのドリスとベルトラン。
「どうかしたか?」
「魔力が多い者は長生き。
エルフしかり、ドラゴンしかり。
多分私たちより長生き」
「へ?」
俺は唖然とした。
「ご主人様。
総じて人間でも魔法使いは長生きです。
ですから、バケモノじみたご主人様の魔力なら、私たちぐらいは生きると思います」
だそうな……。
その辺はどうなるかわからんし、考えるのをやめよう。
あとは披露宴やら、何やらだな。
まあ、しないけど。
俺はスーツを着替えてカバンに入れる。
ドリスとベルトランも元の服に着替えて俺にドレスを渡した。
これも収納する。
オレゴルとメラニーのドレスを見繕い、これも入れる。
当然揉めるだろうから、準備しておかないと。
挙式が終わると街の外に出た。
扉を閉め土で埋めておく。
「何で?」
ドリスが聞いてきた。
「んー、壊されてもいかんし、使えるのは今のところ俺等だけだろうし。
いいと思ったら解放するよ」
そう言うとケッテンクラートを出して二人を乗せ、村に戻るのだった。
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誤字脱字の指摘、大変助かっております。




