フォントラス村の作物
「で、この辺の麦の作付けは冬か春か?」
「春か冬かと言われれば春だな。
春に種を蒔いて秋に刈り取る」
寒さの関係で、春小麦を作っているようだ。
確かパンにはいいんだよねぇ。
ただ、収穫量が少ない。
「他の産業は?」
「小麦だけだな」
「肉とかは?」
「村人がたまに狩りをするが、狩りをするにも武器が居るのでな……あまり出回らない。
肉など食べるのは、年に一度ほどだ」
これじゃ、村から逃げるか……。
寒村としてでも存続できていただけマシなような気がする。
確保できたのは水だけ。
さてと……。
とにかく村には食料が無い。
畑を増やして大麦や小麦を作るのも良いかね。
小麦は外販、環境に強くて量も取れそうな大麦を食べる。
大豆も有りかもな。
家畜も居ない。
「メラニー、オレゴル、卵を産む鳥の魔物って居るか?」
まさにニワトリ。
「「コクエス?」」
二人の声が揃った。
「卵を多く生む。
食べたことは無いが、でも肉は美味いのだ」
「そう、肉は美味い。
でもその物言いならば、卵を食べたいの?」
ドリスが俺に聞いた。
「ああ、新鮮な卵は体にいいんだ。
いろいろな料理もあるしな」
ウンウンと頷く俺に驚く女性陣。
「ご主人様。
卵なんて食べるもんじゃないのです。
冒険者が食料をなくして仕方なしに食べたら当たったなんてよくある話」
ベルトランが俺に言った。
「それでもだ。
俺は卵を産む魔物を捜し、新鮮な卵を食べたい。
餌をやれば毎日手に入れることも可能だ。
卵を産む間は卵を貰い、卵を産まなくなったら肉も手に入る。
まずは食べるもんが要るんだよ。少しでも食糧事情を良くしないと子供が育たない」
俺はベルトランを見て言った。
「メラニー。
近くの森を開拓する。
いいかな?」
「ああ、頼む」
森一帯を畑に変え、乾燥して材木にする。
ヘクタール単位?
ブロウスの東のメドロスの村で大麦や小麦の種籾も手に入れた。
ギリ春かな?
畝を作って種を撒いて、土をかけて……。
うーん、魔力って便利。
後は、発芽を待つだけ。
程々伸びたら麦踏も必要か……。
メラニー以外のメンバーでやると、意外と簡単にできた。
それを見て唖然とする村人&メラニー。
これだけ畑を広げたら収穫が大変そうだ……。
人海戦術になるだろう。
そんな時、ふと思い浮かんだこと……。
一度、エルフの街に行ってみるかな。
エルフは機械化した農業をしていたかもしれない。トラクターや耕運機、コンバインがあるかもしれない。
魔力を溜めるバッテリーのようなものがあるのなら、人間にでも使える。
もしかしたら、肥料とかもあるかもね。
エルフ仕様のスマホを出して、一番近い街を探す。
ブレワルス……この辺で一番大きな街だったようだ。
現在地から北へ向かって基地ほどではないにしろ意外と近く。
人間の街との境界。
ブレワルスを検索すると、いろいろな店が出てくる。
三万人ぐらいの街だったようだ。
一度この街に行くことに決めるのだった。




