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まずは……

 まずは水の確保でしょう。


「水源は?」

 俺が聞くと、

「近くに川は有るが……ここまで引く労力がない。

 この村の大きさでは、なかなかな……」

何もできていないことがもどかしいのか、メラニー下を向いていた。

 

 ないない尽くしらしい。

 さて……。

 俺の力でどうにかなるのかね……。


その前に、

「勝手に開発してもいいのか?」

と聞くと、

「開発は領主の裁量。

 問題ない」

とメラニーが言った。


そこで、俺とベルトランは川を見に行く。

メイドだから離れないそうだ。

「ご主人様と二人。

 誰も居ない中、外でもいいですね」

 服を脱ぎ始めるベルトランに。

「そんな趣味はない」

と服を着せる俺。

「ほらこれ」

 俺は拳銃(ワルサーPPK)を見せた。

「これはドリス様やオレゴル様が持っている物と一緒でしょうか?」

 ベルトランはいろいろな方向から見ている。

「そう、二人が持っている物と同じ魔道具。エルフの遺産の一つだ。

 こう使う」

 ベルトランから拳銃を受け取ると安全装置を外し、近くの木の幹を撃った。

 幹に穴が開く。

「まあ、こんな感じ」

 と俺が銃を差し出すと、

「何でこれを?」

 銃を受け取った。ベルトランが俺を見た。

「お前の気づかいのお陰でドリスやオレゴルが守られているのは知っている。

 今ではメラニーも。

 でも、お前自身を守る道具が無い。

 本来は俺が守るんだろうが、いつもというわけにはいかない。

 だから、これで自分を守ってもらおうとね」

 と言うと、ベルトランは急に涙を浮かべる。

 そして、

「僕の事も考えてくれてた!」

 と大きな声をあげ、ベルトランが抱き付いてくる。

「一応、家族みたいなもんだしな。

 あと、これな」

 エルフ仕様のスマホを渡す。

「わかりました、

 僕を受け入れてくれたのですね。頑張って家族の垣根を破って妻になります」

 ニコリと笑うベルトラン。

「いや、なれないから……多分……男は無理だ……と思う」

 自信のない言葉……俺にベルトランが侵食しているらしい。

「『無理』から『無理だと思う』に変わりました。

 僕はもっと頑張って男という垣根も壊して見せます!」


 とことん前向きだな。

 話を変えねば。

 

「さて、この川からあの村まで、流れを作って、元に戻す支流を作る必要がある。

 勾配的に無理はないと思うが……」

「魔法で作るとしたら、膨大な魔力……」

 ベルトランはそう言って俺をチラリと見ると、

「まあ、ご主人様なら大丈夫そうですね」

 とニコリと笑って太鼓判を押す。

「溜池を作って、一度水を溜めたほうが使いやすいか……」

「そうすると川から溜池に行くところ、溜池から村に走る水路に落とすところに堰が必要ですね」

「ふむ……こんなもんかね」

 俺は土の上に図を描いた。

「僕はいいと思います。

 村の畑への水路も作り、そこも堰で水がとれるようにするといいとでしょうね」

「よく知ってるな」

「昔……、本当に昔、父さんに教わったことがあります」

「じゃあ、メラニーに聞いて工事をするか。

 手伝ってくれよな」

「はい」

 ベルトランがニコリと笑った。


 ドリスがメラニーに言葉を教えていた。

 暇なオレゴルが俺のスマホでゲームをしている。

「ドリス、メラニーに用事があるんだがいいか?」

「いいよ」

 ドリスが言った。

「メラニー、水源確保のために溜池と畑への水路を作りたいんだが……」

「えっ、できるのか?」

「まあ『できるか』と言われれば『できる』。

 こんな感じで高台あたりに池を作って、その高さを利用して畑に水を回す。

 勝手にやっていいのなら三日もあればできるんじゃないかな」

 俺は答えた。

「やってもらえるか?」

 メラニーの言葉に、

「じゃあ、やらせてもらおう」

 と返事をした。


 イメージに合わせて作業すると次の日には水路がほぼ出来上がる。


 あとは溜池作って水がめ完成って感じだ。

 道沿いにある用水路には土魔法を使ってカバーを付けた。

 落ちたりする者は居ないだろう。

 ついでに井戸も掘る。

 村の子は川までを何度も往復して飲料水を得ていた。

 集落の中心に井戸があればその手間も少しは楽になるだろう。

 俺は井戸の上に屋根と、屋根の下に釣瓶をつくり、使い方を教えた。


「とりあえず出来上がったが……」

 リビングでドリスと勉強をしているメラニーに聞くと。

「えっ、一日で?

 こんなに?」

「普通だろ?」

「普通じゃない!

 普通はこの規模なら数か月かかるものだ」

「普通じゃないの?」

 俺はドリスに聞いてみた。

「アキトの普通は今。

 でも、人間であるアキトとエルフの私を比較して、比較にならないほどアキトの方が魔力がある時点で、普通じゃない」

 普通じゃない認定をされる。


 まあ、今更だ。普通じゃないのは気付いていたよ。

 

「まあ、できる者ができることをするってことで。

 一応、メラニーの夫だからな。

 協力は惜しまんよ」


 こうして、フォントラス村の水を確保したのだった。


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