ギルドへ報告
帰り道で、
「何であのまま中に入らなかったのだ?」
とオレゴルに聞かれ、
「考えてもみろ!
あのあとあの村に入ったら、俺たちを歓待しなければいかんだろ?
被害が出ている中、俺たちが居れば余計な気を使わせなければならなくなる。
まずは村人たちが復旧することが一番」
と返した。
「そうだのう。
主の言う通りじゃ」
とオレゴルは納得したが俺の本音は、
人の前に出るのが苦手……。
な訳だ。
会話がわからないメラニーに聞かれ、その辺の説明をすると、なんかメラニーがウンウン頷きながら俺の方を向いていたのが気になった。
順調にメドナスの街に帰る。
帰ったら夕方。
そういや昼めし食ってなかったな。
街に入った後、メラニーが中央の席で振り返ると思い立ったように荷台に繋がる窓を開けた。
「アキト殿!
我が衛兵隊に興味はありませんか?
アキト殿の心、私はよくわかります。
被害があった村へ迷惑をかけない。
素晴らしい心がけです」
ときらきらする目で俺を見ながら言う。
俺に対して殿?
言い方が変わったぞ。
「無いね。
俺は我儘。
言っただろ?
あの村を助けたのも、ボルクスが居るかもしれないから。
勘違いしないで欲しい」
メラニーがニヤリと笑い、
「またまたー。
照れてるだけでしょ?
まさか、私に照れてるとか?」
と突っ込んでくる。
「そんな余計なことを言う前に、冒険者ギルドへの報告を頼むぞ」
そう言ったと同時にドリスがキュッときつめのブレーキを踏む。
俺は耐えられたが、メラニーはひっくり返る。
ダッシュボードにしこたま頭をぶつけたようだ。
頭を抱えて蹲っていた。
そんなメラニーを無視してドリスとオレゴルがハーフトラックを降りる。
それに合わせ俺も荷台から降りた。
「置いてかないでくださいよー!」
というメラニーの声が俺の後ろから聞こえた。
ギルドに戻ると、遅れてきたメラニーが顛末を説明する。
「……アキト殿の持っているエルフの遺産の一つは凄いんです。
ブーンって音がすると、ゴブリンがなぎ倒されて……」
何かの冒険活劇じゃあるまいし、身振り手振りで大げさに説明されてもな。
「……最後は魔法でバッサリとゴブリンキングを倒したのです」
こうして冒険者ギルドでの長いメラニーの俺への羞恥プレイは終わった。
まあ、報告はできたから良しか……。
盛り上がりを無視して、
「まあ、そういう事でゴブリンは殲滅した。
七千ポイントだったな。
加算を頼む」
俺はギルドカードを差し出した。
「ああ……」
ギルド職員がギルドカードを手に取ると、処理を始める。
「あと報酬はどうなる?」
俺が聞くと、
「ギルド権限で、金貨五百枚は準備してある。
あとは、もしかしたら領主が……って感じだな」
申し訳なさそうな職員。
これ以上は無理ってことだろう。
「まあ、ついでの仕事だ。
貰える物が貰えるのなら問題ない。
もっと冒険者が集まると思って準備していた分なんだろ?
その分も貰えるんだ、文句は無いよ」
「うっ、うむ……」
図星だったらしい。
ギルドに思い入れの無い冒険者が多いらしい。
まあ、リセットの利かない人生。
当たり前だな。
俺は金を貰うとギルドの外へ出る。
「さて、宿に戻ろうか……」
俺たちは宿に戻るのだった。
宿に戻ると、ベルトランが入口に立っており、
「お帰りなさいませご主人様」
「お風呂は沸いております」
と頭を下げる。
「おう、助かるよ」
礼を言うとベルトランが嬉しそうにする。
「ドリスとオレゴルは先に部屋に行って待っていてもらえないか?」
俺が言うと、
「なぜ?」
とドリスが聞いてきた。
「俺はメラニーを送ってくる。
馬が無いからな。
まあ、馬を殺した原因は俺にあるし、今度は俺が説明をしてくる」
ドリスは腕を組んで考えると、
「仕方ない」
と言ってオレゴルと宿の中に入って行くのだった。
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
ファーストコンタクト(ベルトラン)を追加しています。
戻って読んでいただけると幸いです。




