ベルトラン
「アキト様はおられますか?」
店員に呼ばれて部屋の外に出る。
「何か?」
「こちらの方が、状況を聞きたいと……」
そこには白い皮鎧を着た兵士。
「衛兵隊の小隊長、メラニーだ」
金髪の若い女性だった。
「はあ、それで?」
「ハリオート氏の死亡時の状況を聞きたい」
「ああ、あの人の名前はハリオートというのですか。
状況と言っても、見たまんまですよ。
ローブを着て倒れていました。
呼吸もありませんでしたし、腹上死って奴でしょうか。
羨ましいですね」
顔を赤くしてメモを取るメラニー。
ちょっとセクハラ……。
「そうか……。
連れのエルフもそう言っていた。
男同士ですることもあるのだな……」
メラニーが呟いた。
「そうですね、私は女性が相手の方がいいですが……。
しかし、女性同士という話も聞いたことがあります。
人の考えはいろいろありますから、ハリオート氏の場合は、男性を相手するのが良かったのでしょうね」
「うむ、これで聴取は終わりだ」
「メラニー様。
主人の居なくなった奴隷というのはどう処理されるのでしょう?」
俺は聞いてみた。
「そのまま奴隷商人に引き取られるか、持ち主の家族に返されるか……。
ただ、ハリオート氏には家族がおらん。
後を継ぐ者ははっきりしておらんでな。
所有奴隷も多いと聞く。
愛人も多かったらしい。
結局のところ奴隷商人に引き取られるのではないか?
まあ、それまでどこに預けるかだが……」
そう言うとメラニーは顎に手を置き、考えると、
「奴隷商人を呼ぶとして、この街まで来るには時間がかかる」
と呟いた。
「衛兵というのは、仲介をできますか?」
「というのは?」
「奴隷を置いておく場所に困っているようですね」
「ああ、あのような奴隷を扱うのは初めてでな」
こちらでも男の娘は珍しいらしい。
「奴隷商人が来るまでの間、一時的にあの奴隷を私が預かりましょう。
幸い、私どもの連れにもエルフが居り、私にも懐いている様子」
「預かってどうする?」
メラニーが不思議そうに聞いてきた。
「奴隷商人がこの街に到着したら、私が奴隷商人と交渉し、ベルトランの引き取り手、または奴隷商人と交渉をして、ベルトランを買い取るつもりです」
「まさか、お前もそういう趣味が?」
「いえいえ、まさか……。ただ、こういうことに巻き込まれたのも縁。
優秀なメイドというのはなかなか手に入りませんから。私の下で働いてもらおうかと」
「口添え程度にはなるが、仲介は可能だ。
そうするとしてもしばらくはこの街に居てもらうことになるぞ?
そして、この件が終わるまではあのエルフは外には出せない」
「わかりました。
私は冒険者です。
暫くはこの街を拠点にいたしましょう」
こうして俺はベルトランを手元に置くことになった。
「あと、ベルトランはこの宿に置いておくので、私どもは外出しても良いでしょうか?」
「ああ、ベルトランさえ居ればいい。
この冒険者ギルドを拠点にして活動するのであれば問題ない」
ということになった。




