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夜襲

 食事を終え、風呂に入り、ドリスとオレゴルの頭を乾かしていた。

(われ)は絡まれないのだが……」

 オレゴルがボソリ。

「そうだなぁ……。

 人間の連合対エルフだったせいで、今でもエルフへの敵対心みたいなものが根強く残っているみたいだねぇ。

 そのせいで、絡まれるのがドリスになってしまうようだ」

「何か羨ましいのだ。

 ドリスだけ守ってもらっておる」


 ふむ……確かにドリスのフォローばかりしているかな。


「俺がオレゴルを守る回数が少ないから、拗ねているのか?」

「そっそうではないが……」


 そうなんだろうな。


「おいで……」

 オレゴルを抱き寄せ、舌を絡ませて長いキスをした。

 唇を外すときに唾液が糸を引く。

 オレゴルの顔が赤くなっていた。

「ずるい」

「ああ、ずるい。

 でもこうやって機嫌を取るようなこともしたことはある」

 オレゴルにそう言っていると、

「私も」

 ドリスがねだってきた。

「あとは、髪の毛を乾かして、ベッドに入ってからだな」

「ぶー。

 オレゴルだけ」

「それはそれだ」

 そう言って、ドリスの髪の毛を乾かすと、俺たちはベッドに入るのだった。



 三人での行為が終わり寝ていると、オレゴルの耳がピクリと動く。

「なんぞ来たようだのう」

 ボソリとオレゴルが言う。

「何だろうね。

 数は?」

「一人」

「何が起こるか待ってみるかい?」

「そうだのう」

 オレゴルと話をしている間。

 ドリスはスースーと寝息を立てていた。

「まあ、(ぬし)と共になら安心できるか……」

 苦笑いのオレゴル。

「じゃあ、待ちますか……」

「だの」

 俺とオレゴルは目を瞑った。


 気配なくベッドわきに現れる影。

 ドリスの横に立つ影が何かを嗅がせようとした瞬間に手のひらに一瞬の光を発生させた。

「わっ」

 という声が聞こえると、ドスンと尻もちをついたような音がする。

 目を開けると、目を押さえてうずくまるボディースーツのようなものを着た女装の男性エルフが居た。

「アンタも苦労するな」

「大変じゃのう」

 俺とオレゴルは苦笑いしながら言う。

 フンと鼻息荒く、

「今のエルフは狩られる存在。

 隠れて里を作っても、そこに人間が来ればどうにもならない。

 ほら、これを見て」

 そう言うと、鎖骨の辺りをめくり、

「この紋章がある限り、あの男からは逃げられない。

 これがあの男の言うことを強制する。

 何をされても耐えるしかない」

 と言った。


 何でかこいつは脂汗をかいている。


「で、何をしに?」

 俺が聞くと、エルフは口を開こうとするが声が出ない。

「命令されておるのじゃろうな。

 主人の不利になる事を言うなと……」

 オレゴルが言った。


 ほう、言えないのか?

 紋章が無ければいいのかね? 


「あっ!」

 俺はエルフを掴み抱き寄せると、その紋章に右手を当てる。


 鎮痛、除去、再生ってところかな。


 そして魔力を通した。

 そこには何も無い肌が現れる。


 おっと掴んだ紋章が暴れる。

(ぬし)よ、隷属の紋章とは呪術。

 呪いは対象を探す。

 その呪いを消さねば再びそのエルフに取り付くぞ?」

 オレゴルが言った。

「消すとは?」

「圧倒的な魔力で握りつぶせばいいのだ」


 ふむ……。

 圧縮。


「ん……ん……んんん……」

 某漫画の塔の上の誰かさんのように力を入れ握り込んだ右手に左手を添えて力んだ。

 すると、内部で暴れる紋章が静かになる。

 そのあと手の中を魔法で高温にして燃やした。

 手を開くと何も無い。

「今はこれが精いっぱい……」

「何が精いっぱいだ。

 綺麗に呪いを除去しおって」

 オレゴルが苦笑いをしながら突っ込んでくれた


 ちょっと嬉しかったりする。


「まあ、そういう事で紋章は綺麗さっぱりなくなったらしい」

 唖然と俺を見るエルフ。

「さて、俺たちの部屋に何をしに来た?」

 聞いてみると、

「主人……いやあのデブがそこのエルフを欲しがって……催眠術をかけて来いと」

「催眠術?」

「ああ、僕は精神に干渉する魔法が使える。

 気付いたら使えたというのが正しいかな。

 その魔法でそこのエルフを僕の言いなりにして、あなたから離れさせる。

 そして、そのままあのブタのものにする予定だった」

 見れば指輪がなくなっており、魔法を使えるようになっている。

「そりゃ大変だ……」

 俺は笑う。

「大変に思うておらんくせに」

 オレゴルが怒る。

「なんで?」

「それはな、多分お前の魔力じゃドリスに催眠術は効かない。

 まあ、催眠術にかかっても何とかするけどな」

「何で、あなたみたいな人が僕の前には現れてくれなかったの?」

 泣きながらエルフが俺に言った。

「さあ、それはたまたまだろうな。

 どんな力を持っていたって、俺の目の届く範囲しか助けられんよ」

 俺は立ち上がると、

「さて、君の主人に会わせてもらおうか」

 とエルフに言った。

「君じゃない……ベルトラン」

「ああ、名があったんだな。

 じゃあベルトラン。

 君が言うあのブタの所に連れて行ってもらおうか」

 俺はベルトランに言った。



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