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この世界のエルフとは

「さて、飯に行こう」

 三人で食堂に降りる。

「三名様でよろしいでしょうか?」

 の声。

「ああ」

 俺が返事をすると、テーブルに案内される。


 日が暮れてしばらく経っている。

 店には高そうな服を着たお客様がすでに食事をとっていた。

 中にはドレスを着たエルフを携える者もおり、実用性の高い歩兵の服を着た俺たちはその中で異質な存在になっていた。


「あなたもエルフを飼うのが趣味で?」

 俺の隣のテーブルの太った男が俺に声をかけた。

 その後ろには目が死んだエルフ。

「飼う?

 どういう意味でしょうか?」

「またまたぁ。

 裸にして、好みの服を着させる。

 金を持つ者の醍醐味。

 このエルフなど、女装なのですよ?」

 ぐへへへと笑う男。


 男の娘らしい。


「そしてこの指輪。

 魔法が使えなくなります。

 お陰で人間より筋力が無いエルフに簡単にいう事を聞かせられます」


 まあ、向こうでもそういう趣味を持つ者も居るとは聞いていたが……。

 直に見るのは初めてだ。


「ああ、ドリスは俺の妻です。

 ですから、隷属など一切していません。

 魔法の縛りもね。

 冒険におけるパートナーであるドリスは魔法についても当たり前のように使えますよ?」

 するとドリスの手が光り、テーブルにあった花のつぼみが開く。

 男は驚いていた。

「エルフを妻に?

 エルフなど道具でしかありません。

 性欲のはけ口にしたり、エルフの遺産を使うための魔力を溜める物であったり、その程度のもの。

 過去の大戦で我々は勝った。

 人間やそれに属した種族のほうが優れていたのです。

 その負けた者をなぜ妻になど?」

 とドリスを見て言う。

「人間の方が優れている?

 俺はそうは思わないね。

 それならば、あなた達はなぜエルフの遺産を使う?

 それはエルフの遺産が便利だからではないのですか?

 同じものを人間は作ることができますか?

 作ることができるのなら、今頃エルフの遺産を『エルフの遺産』と呼ばずに別の名前で呼び、巷にあふれているはずでは?」

 俺は聞き返した。

 すると、

「あなたはエルフの容姿に騙されているのだ」

 びしりと指を差された。

「んー、それはあるかもしれないな」

 俺が頭を掻きながら同意すると、太ももをドリスに抓られる。


 結構痛いんですけど……。


「まあ、それ込みで俺はドリスを妻にしました。

 ギルド証にも記入してあります。

 この話は多分結論は出ないでしょう。

 俺の価値観と、あなたの価値観の違いでしょうから」

 すると、奥から俺たちの料理が現れる。

「それでは料理が冷えるといけませんので、この話はこれまでで」

 そう言うと、俺たちは食事を食べ始めるのだった。


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