レース
「ヒャッハー!」
と言う聞いたことがある声がすると、大きなトラックをエルフが運転して現れた。
荷台にはあと三人のエルフ。
うー。
いつも思うがエルフが男なのか女なのかわからん。
俺は近くにいた男に、
「あれは何者だ?」
と聞いてみた。
「あれか。
この辺を牛耳る商人だ。
あの機械はエルフの遺産。
多くの荷物を運ぶことができる。
そのためにエルフの奴隷を買い、その魔力であれを動かしているんだ」
俺たちが乗ったケッテンクラートを見つけると、
「オッサン、そのエルフ俺に売ってくれないか?
金ならいい値で出す。
そのエルフの魔力はここに居るエルフ四人より多い」
と言ってきた。
実際ドリスのほうが魔力が多いのだろうが、さすがにドリスはやれん。
「私よりアキトのほうが魔力は多いのに」
ドリスが呟く。
まあ、その辺は仕方ないね。
「悪い。
これは俺の妻でな。
あんたのように奴隷じゃないんだ」
「エルフなど妻にしてどうする?
細くて胸も無くてガリガリじゃないか?」
「こいつ何考えてる?」ふうな雰囲気で言われる。
オッサンが言っているのは趣味の問題で、ストライクゾーンは人それぞれ。
それにガリガリじゃねえし。
ヒャッハーな男が連れたエルフとドリスを比較してみた。
「俺は妻に良いものを食べさせているから、ムチムチだし、胸もそれなりにあるがね?
いい動きをするし夜は十分に楽しませてもらっている。
まさか、金を持ってるくせにエルフに飯も食わせてないのか?
そりゃ、ガリガリにもなるさ」
俺が言うと、
「それはどういう事だ?」
ヒャッハーな男は俺を睨み付けてきた。
「言った通りだ。
食わせてもいないのに太るはずがない。
食わせているなら、俺の妻のようになっているはずだと思うぞ?」
ドリスはポッと頬を染めた。
周りで見ていた者はクスクスと笑う。
たった一人の冒険者の妻が、大店のエルフたちよりもふくよかなのだ。
金が無い者が金のある物に勝つ。
判官贔屓もあるのだろう。
「くっ」
何も言わないヒャッハーな男。
「それじゃ、失礼するよ。
次に出会うとき、そのエルフたちが肉付き良くなっていることを期待するよ」
そう言ってケッテンクラートを走らせた。
「お前!追いかけろ!」
ヒャッハーな男はエルフに指示を出し何故か追いかけてくる。
「どうかしたか?」
ケッテンクラート止めて俺が聞くと、
「ここから街道沿いに歩いて一週間かかるところに、メドナスと言う街がある。
もしそこまで儂と勝負して勝てるのであればこのエルフの遺産とエルフをやろう。
もし負けるのであれば、儂にそのエルフを渡せ!」
とけしかけてきた。
「何で俺がそんな事をしなければならない」
正直面倒だ。
「儂の顔を潰したからだ。お前に舐められたままではこの街での商売に関わる。
このエルフの遺産でこの四人のエルフを使ってメドナスまで二日かかる。
それを越えられるかな?」
ヒャッハーな男はニヤリと笑った。
「俺が目的地に着いた判断は?」
「儂はボルクス。支店がメドナスにある。
その支店長に声をかければいい」
「アンタの店は?」
「ボルクス商会。
街の大通りにある。行けばすぐにわかるだろう。
これを渡しておく。これを渡せば、支店長は理解する」
「私と男、どちらが先だったか正直に言うように……」と、モヒカンはさらさらと書いていた。
ふむ、手心は加えていないか。
意外とボルクスはまともなのかもしれない。
俺がドリスを見ると、ドリスは頷いた。
「勝負をしろ!」と言うことらしい。
「じゃあ、やろうか。
俺は三人で行く。
いいかな?」
「ああ、いいぞ。
儂は空荷で儂を含めた五人で行く」
こうしてお互いのエルフの遺産で勝負をすることになるのだった。




