嫌われ者
「おい、お前ら、ちょっと来い」
受付の裏からドワーフが現れる。
「俺たちですか?」
「ああ、お前らだ」
ドワーフが指差す。
「何でしょう?」
「お前らが乗ってきたあの乗り物はどうやって手に入れた?」
「俺が直しましたが?」
と、とりあえず言っておく。
「あれを欲しいという者が居てな。
何とかならんかと儂に言ってきたのだ」
嫌な予感。
「ちなみにあなたは何者ですか?」
「ああ、儂か?
儂はこのギルドのギルドマスターであるガント」
「そんなギルドマスター様が、何で仲介なんかを?」
「依頼人が一応この街の領主でな。
エルフの遺産に目が無い。
お前らが乗ってきた物が目に留まったようだ」
嫌々なのだろう、ガントさんの苦笑いが止まらない。
「断ったら?」
「そうだな……追われるな」
考え方はジャイ〇ン方程式らしい。
金でも渡しておけばOKてな感じ?
だったらジャイアンよりはマシか……。
「我儘なんですね」
「そうだ……困っている。
お前のエルフも気をつけろ。
強引に手に入れようとするかもな」
ふむ……。
「この街の領主は嫌われていると……」
「ああ……、皆居なくなればいいと思っているだろうな」
ガントさんが言った。
実際いい領主ではないようだ。
「では、断ります。
妻をとられてニコニコしている訳にもいきませんし、あの乗り物もこの二人も私の宝物ですから……」
何を言っているかわからないだろうが、二人は俺の腕にしがみ付く。
「まあ、そういう事なんで、そう言っておいてください」
俺はガントさんに言うと、ギルドを出た。
ケッテンクラートの周りに鎧を着た騎士が居る。
俺は無視をしてケッテンクラートの運転席に乗り込むと火を入れた。
ドリスもオレゴルも後席に乗る。
「これはお前のか?」
騎士の隊長らしき者が俺に聞きいた。
「ああ、そうだ。それが?」
「ギルドマスターからは?」
騎士はそこで話を切った。
「話は聞いただろう?」ってとこらしい。
「ああ、ギルドマスターからは話を聞いた」
「返事は?」
「嫌だね」
既に火が入ったケッテンクラート。
俺はアクセルを最大に開け騎士を吹き飛ばすと出口に向かう。
「追え!」
と言う声が小さく聞こえたが、馬なんかじゃ追いつかないだろう。
俺は門番の所に行くと仮の身分証を返しそのまま街を出た。
さて……。
「ドリス。
運転できたな」
俺がドリスに聞くと、
「うん」
と頷く。
暇な時に運転は教えておいた。
「じゃあ、ドリスとオレゴルはケッテンクラートで適当に走って隠れててもらえるか?
あとで、スマホで連絡する。
オレゴルはドリスの護衛を頼む」
「畏まった」
オレゴルが頷いた。
「ドリス。
邪魔者を倒してくる」
「私のため?」
ドリスが申し訳なさそうな顔をした。
「いや、俺のため。
俺は今後エルフの遺産って奴を集めたいと思っている。
できたら搾取するような領主には居て欲しくないって訳だ。
だから気にするな」
俺はドリスの頭をワシワシ撫でた。
横からオレゴルも頭を出してきたので頭をワシワシ撫でる。
「じゃあ、行ってくる」
そう言って再びブロウスの街へ向かった。




