依頼の受け方
続いて、依頼の受け方。
カミラは噛みながらも説明を続ける。
「それでは、依頼の受け方でしゅ。
そこにある掲示板に紙が貼ってありまふ。
その紙を受付に持ってきていただければ、受付完了でしゅ」
「ほう、何でもいいのか?」
「ええ、どれでもいいでしゅ。
ただ、受けた依頼にはポイントが割り振られておりまふ。
簡単な依頼だと五ポイント、大きな依頼だと一万ポイントを超える物がありまふ。
そんな中から依頼を選び、年間で三百ポイント以上を稼いでもらう必要があるのでしゅ」
噛みっ噛みだな。
ただ、噛んでも続ける意気は良し。
「三百ポイントを得られないと?」
「冒険者不適格と言うことで、ギルドから除名されましゅ。
ああ、失敗すると依頼に割り振られたポイントの半分が減ります。
年間でマイナス五百ポイント以下になると、これもギルドから除外されますので注意してくだしゃい。
たまに、大規模な魔物討伐などでは、ポイントが減らない物も有りましゅ」
「要は、一度でも三百ポイント以上稼いでおけば、一年は特に何もしなくていいというわけか……」
「はいそういうことになりましゅ」
「了解した」
ランクとかどうとかありそうだとは思ったが、そうではないようだ。
まあポイント数で何らかの優遇は有りそうだが。
「ポイント数が年間で一万ポイントを越えましゅと、ギルド所有の宿への宿泊がタダになりましゅ。
それは最高級な宿でもでしゅ。
他に、ギルドに属する武器屋、防具屋、道具屋などからの購入に割引が付くようになりましゅ。
高ポイント者への優遇処置でしゅ」
一気に言い切るカミラ。
そして、噛み続けた。
「わかった。
俺は身分証明書が欲しかっただけだから、最低限の依頼だけにするよ。
説明ありがとな」
そう俺が言うと、カミラは嬉しそうな顔をした。
「『ありがとう』なんて初めて言われました。
次のときも私にご用命を。
受付した依頼のポイントは、私の成績にもなりますので」
おっ、噛まない。
俺に慣れたかね
「現金な奴だな」
「はい、現金な奴です」
そう言ってカミラは笑っていた。
俺の背中が二カ所抓られる。
振り向くとドリスとオレゴルの顔は笑っているが目が笑っていなかった。
人の言葉がわからないドリスとオレゴルに説明をすると、
「せっかく来ておるのだ、一つ依頼を受ければいいではないか?」
とオレゴルが言った。
「そうです、そうすればあの娘と接点がなくなります」
ドリスも頷いていた。
まあ、俺も興味があったので掲示板に向かうことにした。
さっきのこともあるせいか、俺が掲示板に向かうと人が避けていった。
掲示板の前に着くと、「グラームロの皮を手に入れて欲しい」というのがあった。
ポイントは三千。
持ってるんだが……。
ドグロスの爪……。
これもドリスに言われてカバンの中に入れてある。
素材系は結構持ってるなぁ。
肉食系の魔獣の皮も結構人気があるらしくポイントが高かった。
とりあえずグラームロの依頼を受けるために、依頼票を千切ってカミラに持って行った。
「これを頼むよ」
俺が言うと、
「これ、失敗したら当日でギルド証がなくなりますが?」
「ああ、大丈夫。
今までに狩った魔物の皮にあるから」
「えっ……。
グラームロを一つのパーティーで?」
「そうだが、いかんかな?」
「いいえ。
そういう事なら問題ありません。
それでは受付けをした後、素材の鑑定に向かいましょう」
ニコリと笑ってカミラは言った。
受付を終え、カミラに従い、なぜか背中を抓られながら別の場所に向かう。
そして、別の受付に着いた。
カミラがドワーフらしき低身長の娘に声をかける。
「何?
グラームロやって?」
何故に関西弁。
方言なのかね。
「ええ、この人が持ってるって。
ちょっと確認して」
カミラが言った。
「アンタかい、グラームロを三人で撃破したってパーティーのリーダーは?」
知らぬ間にパーティーのリーダーに……。
まあ、人間の言葉がわかるのも俺だけだしそれでいいか……。
「ああ、アキトと言う」
「ワイは、ベルタ。
それで、グラームロは?」
「ああ、皮だけでいいんだよな」
「依頼ではそうなっているんやけど、全体でも問題ないで」
「これがそうだ」
ベルタの横にあった台に、カバンからドリスが皮を剥ぎ俺が乾燥させたグラームロの皮を置く。
「あっ、魔法のカバン」
カミラが驚いていたが、ベルタは気にせず皮の状態を確認し始めた。
「なっ……。
完璧やないか……。
血肉が一切ない。
皮に一切の傷が無い」
そう呟くとベルタは俺をじっと見た。
それはそうだ。
ドリスはグラームロの目を打ち抜き、脳を破壊して倒したのだ。
外傷は一切ないはず。
「これは俺の妻のドリスがやった」
俺はドリスの方を振り向くと、
「解体が完璧だってさ」
とエルフの言葉でドリスに言うと、嬉しそうに笑った。
「問題ないのなら、依頼を終わらせて欲しい。
これで一年何もしなくて済むからな」
俺がカミラに声をかけると、
「アキト様なら、このギルドのトップになれそうなのですが、残念です」
と言われてしまった。
「ポイントが入らなくて残念そうだな」
俺が皮肉を言うと、
「バレました?」
「ああ、まあ、いつも来るわけじゃないが、たまには来る。
その時は頼む」
すると、
「はい、かしこまりました」
と、カミラが頭を下げた。
報酬の事を考えていなかったのだが、報酬は金貨三百枚。
高いのか安いのかもわからないまま俺は金貨を受け取るのだった。




