冬ごもり
家の中央にある、自作薪ストーブの熱が家の中にこもる。
思った通りの働きをしてくれているようだ。
ドリスがガラガラと黒い石を取り出した。
「何それ?」
「魔石じゃのう。
魔力の多い魔物の心臓近くにある。
我の胸にもあるぞ」
オレゴルが左胸を叩いた。
神とはいえ魔物に近いオレゴルは魔石を持っているらしい。
「そんなもの何に使うんだ?」
俺が聞くと、
「魔道具の材料になるんだけど、私には扱えない。
もうなくなったエルフの技術。
この魔石を扱うことで、エルフは栄えていた。
でも、アキトなら……」
とドリスが言った。
「俺はエルフじゃないんだがな……」
しかし、家の中には空気の流れは少なく、熱が天井付近に溜まっているような気がする。
サーキュレーターが欲しい。
ドリスが持ってきた魔石の中から一番小さな魔石を選ぶと、「風を吹き出す」
「上下左右に首を振る」「風量調節可」の指令を考えて魔石に魔力を流す。
すると黒い魔石が透明に変わり、魔石が薄く輝き、魔石から風が出始めた。
ありゃ、できた。
唖然とするドリスとオレゴル。
ふむ……。
今の家に欲しいモノ。
照明に水道と湯沸かし器。
照明は各部屋に取り付けた。
LEDのシーリングライトのような感じに、調光ができるように。
蛇口は以前作った竈横のシンクのところへ……水から湯まで温調可能。
湯沸かし器は風呂の底に取り付け、常にいい湯になるように温調できるようにする。
更にシャワーが出るようにした。
「明るうなったな。
これで真っ暗でナニをしなくてもよくなった」
「何をするんだよ」
俺が聞くと、
「二人の魔力補給」
とドリスが言った。
「魔力補給ねぇ……」
魔石は指令を受けると透明になるようだ。
ということは、固くなるだけの指令を出せば、固い透明なものになるのではないだろうか?
ある一定の大きさまで広げ、固くなるように指令を入れれば、ガラス代わりになるかもしれない。
早速、魔石を薄く広げると……ちゃんと広がる。
広がった魔石に「硬化」と透過性も非透過性も欲しいので「透過度調整」の指令を魔力で入れると、向こう側が綺麗に見えるガラスのようなモノが出来上がった。
魔力で調整すると、白い摺ガラスのような状態にもなる。
ドリスもオレゴルも俺が魔道具を作るところを見るのが楽しいのか、じっと見ていた。
俺は俺の部屋……つまり寝室の張り出し窓を外し、魔石の窓をつけた。
雪景色が見える。
いいね。
「照明がついたせいで時間がわからなくなりそうだった。
これで、朝や夜がわかる」
ドリスが言った。
外は吹雪だが中は快適。
しばらくは魔石で楽しめそうである。




