誰?
その夜、右腕に重さを感じ目を覚ました。右を見ると、暗い緑のドレスを着た女性が寝ている。
髪は漆黒。
褐色の肌を持つ美人だ。
この家にドレスってないよなぁ。
眠い中考える。
左の腕にはドリスが居た。
誰?
ドリスと違ったはちきれんばかりの胸。
ボンキュッボンの形容詞が当てはまる。
だから誰?
俺はドリスをゆすり起こした。
「女が居る」
俺が言うと。
「ああ、オレゴル。
さっき『今日はひどい目にあった』」
って言ってた。
そう言うとドリスは再び寝た。
そう言えば、オレゴルとドリスは会話しているような時がある。
最初はオレゴルが警戒していたが、最近は仲がいい。
とはいえ、オレゴルがこれ?
ツンツンと頬をつつくと、猫の手のように丸めてで顔を拭く。
確かにネコ科っぽい。
漆黒の髪の毛の隙間から暗い緑の耳が見える。
毛皮をめくって下半身を見ると、見たことがある尻尾が見えた。
オレゴルっぽい。
まあ、危害を加えないならいいか……。
俺は、考えることを放棄し再び寝ることにした。
「うぉーい」
と、オレゴルが起き上がり、俺に突っ込みを入れる。
「主は目の前に美女が居たら手を出さんのか!」
と、続いてオレゴルは言った。
「美女が居たって襲わない」
と俺は返した。
「なぜだ!」
「いやいや、襲ってどうする?」
「溜まりに溜まった性欲を吐き出すとかあるだろう?
目の前にあるごちそうに手を付けないでどうするのだ?」
「ごちそう?
何のこと?」
「我じゃ。
この見事なプロポーション。
ムラムラとしてこんか?」
「しない。
ドリス居るし。
勝ってるの胸ぐらい?」
不意に背後から蹴りが入った。
ドリスが起きてる?
振り返ればすやすやとドリスが寝ている。
気のせいか。
「この姿を見てから言うのじゃ!」
立ち上がって、服を脱ぐと女豹のポーズをした。
何の勝負かわからんが、猫耳がピクピクと動き、尻尾もフリフリと振れていた。
大きな胸は重力に逆らい形を作っている。
すごっ。
「我のほうがいいじゃろう?」
「いいも悪いもドリス居るしなぁ」
そう言うと、ドリスが俺の背後から抱き着いた。
「やっぱり、起きてた?」
「これだけ大きな声。
嫌でも起きる」
ドリスが起きると、
「なぜじゃ、なぜエルフを選ぶ。
我のような美しい獣神をなぜ選ばん」
「自分で美人とか美しいとか言われても、オレゴルの価値観でしかないだろ?」
「アキトは幼いほうが好き」
ドリスが俺の前に立ちはだかった。
竜虎?
「大人の女よりも幼い子供の外見を選ぶのか?」
「それは違うと思う。
二人で生活していたらそうなっただけ。
それにしてもオレゴル。
なんで俺に?」
「獣神の私に言い寄るオスは、我を笠にして身を守ろうというものばかりであった。
あの崖で出会って、我に威圧を使った主。
我の体は自然と勝てぬと思うたのじゃ。
メスはの、子孫を残すために強いオスを探す。
主は初めて出会った我を蹂躙できるほどの力を持った男であった。
まあ、要は惚れたのじゃ」
「そりゃいいが、もし俺がオレゴルとヤッても子はどうなるんだ?」
「人間を相手にした場合、生まれる子は獣神になる。
エルフもそうぞ?
エルフが人間と交わってできた子はエルフ。
人間の男も女もそうだが、別の種族と交われば別の種族の子ができるのだ。
人間同士でなくば人間は生まれぬ」
人間の遺伝子はこの世界では劣性らしい。
「我が子を宿すならば、主と決めたのだ。
だから、我を抱いて欲しい。
羨ましかったのだ。
我は耳が良い。
夜な夜なドリスの喘ぐ声が森に響く。
朝には疲れているが、満足な顔をしたドリスが起きてくる。
ドリスは我を獣神と知っておる。
そんな我を見下すようにドリスは見るのだ」
「そんなことしてたの?」
「だって……。
私は獣神に劣る。
でも、私を選んでくれた。
獣神に勝ったと思う。
こんなにうれしいことは無い」
ドリスは本当にうれしそうだった。
「でもな、何でオレゴルはもっと早く俺の前に来なかった?」
「それは、魔力不足でな。
今日の撫でと人間どもの魔力で何とか人化するだけの魔力を得られたのだ。
それも長く持たぬ。
だから、主よ頼む。
抱いてくれ」
オレゴルが懇願した。
俺が頭を掻いて考えていると、
「オレゴル抱く。
私も抱く」
ドリスが言う。
二人相手ですか?
何ならドリスは二ラウンド目。
オレゴルはドリスの言葉を聞くと、俺のマウントを取り牙を見せる。
「エルフの許可は得た。
我の知識を知れ!」
と俺に襲い掛かった。
ドリスもそれに混じる。
その後、燃え尽きたドリスとオレゴルが転がっていた。
どっちかと言うとなんか俺が二人を汚した感じ?
俺、やればやるだけ頑張れる。
こっちの世界じゃ何者なんだろう……。
疲れ切って寝ている二人に毛皮をかけながら思った。




