96撮影会
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拡大コピーされた写真を眺めていた。
「憎らしい……憎らしい……このわたくしを差し置いて銀賞だなんて……」
「お嬢様……」
爪を噛みながらいつまでも壁に貼られた写真を見つめる桃子。
心配そうな素振りをしつつ、メイドはいつ引っぱたかれてもいいように尻を寄せた。
学生の自室とは思えないほどの広大なスペース。
家具はどれも一級品が使われている。そして、その中でも一番値が張るのは今イヴの写真を収めてある額縁である。
最高級品質のシルバーを使い作られた額縁。所々にはめ込まれた宝石の数々。
しかし、そんな高級額縁を使ったとしても、一番価値があるのはその振り返る笑顔だ。
「豚」
「は、はい」
「少し出ていってくれる?」
「え……」
「いいから出てって!!!」
スパァン!
尻を引っぱたかれたメイドの顔が恍惚に変わる。
「お嬢様もっと!」
「うるさい!!! あとで引っぱたいてあげるからさっさと出ていって!!」
泣く泣く尻を摩りながら桃子の部屋をあとにするメイド。
その顔は期待が膨らむ餌待ちの豚である。
名残惜しそうに部屋をあとにすると、桃子は部屋に一人きり。
「憎らしい……憎らしい……」
最高級ゲーミングチェアから立ち上がると、桃子は写真を前にする。
「憎らしい……こんな笑顔を向けて……一体誰にこんな笑顔を向けたのかしら……」
指先で写真の頬をなぞる。
アクリル板で保護されたそれは、なぞっても体温も柔らかさも感じられない。
でも、今はそれでも満足できる。
「わたくしを差し置いて……銀賞など取って……わたくしのことをコケにして……」
笑顔は桃子を笑っているようにも感じる。
嘲笑い、見下し、プライドを傷つける笑顔。そして――
「こんないい顔をして……」
写真の笑顔に顔を近づける。
いい顔が、近い。
「わたくしのプライドを傷つけたのはあなたがはじめてよ……」
家族が、メイドが、学園の生徒たちが。
皆が自分に優しくしてくれていた。皆が自分を敬い、尊敬してくれていた。
なのに――。
「あの憎らしい態度はなに? あの気怠そうな姿はなに?」
生徒会長室に呼び出したイヴといったら、南沢桃子という存在にてきとーに対応していた。
まるでその存在など知らなかったように。まるで相手にしていないような。
あの短すぎるスカートが、開かれた第二ボタンが、長すぎる金髪が。桃子なんて。
あのときは、何色のパンツを履いていたのだろうか?
「六道、あなた黒の水玉パンツなんて履いていたのね。あんなに短いのを履いていたら見られもするわ……」
写真から数歩下がり、桃子はスカートをたくし上げる。
中に履いていたのは、黒地に水玉のパンツだ。
「わたくしも持ってますのよ。おなじぱんつ……」
笑顔が見ている。
「あなたと同じものよ……あなたとお揃いよ……」
笑顔が見ている。
「今もあなたと一緒なのかしら。あなたとお揃いなのかしら?」
イヴが笑顔で桃子を見ている。
写真の中のイヴは優しく、桃子に微笑んでくれる。
「六道……」
どきどきする。
スカートをたくし上げて水玉パンツを晒す桃子をイヴが笑顔で見てくれている。
(お嬢様……)
扉からこっそりと見ていたメイドが、悔し涙を流す。
(お嬢様……お嬢様がそんなに破廉恥だなんて。そんなにお嬢様の御心を乱す存在が現れるなんて……)
メイドの瞳に映る桃子は、頬を赤らめながら吐息を熱くしている。
きっと目の前にいる偽物のイヴに見られ、エクスタシーを感じているのだろう。
(ですが、お嬢様。私はお嬢様の味方です。お嬢様の恋心が満たされるのなら……)
桃子がスカートを下ろす。
写真に両手を当てると、ちょっとだけ背伸びをして写真の口にキスをしている。
ちゅっと一度だけ。恥ずかしそうな桃子のなんと乙女なことか。
(私はお嬢様を応援しています……わたしのお嬢様っっ!!!)
◇ ◇ ◇
ベッドに寝転がりながらイヴはスマホを操作していた。
『シンデレラコンテストの写真撮れってさ』
『グラビア? セミヌード? ヌード?』
『いつ撮るの』
『私も撮りたい』
『水着用意する?』
『衣装用意する?』
『ママに頼めば場所用意出来ると思うよ』
『というかもうスタジオ用意しているよ』
『カメラマンつける?』
『いや、カメラマンは私がやるわ』
『おかっぱ落ち着けよ♡』
テンションがあがりまくっているであろう綾香を宥める凛。
『写真張り出されて投票されるんだってね』
『六道さんに投票するね(女の子の絵文字)』
と美里。
『私はイヴに20億票入れるわ』
『りん30億票入れるね♡』
『マウントとってくんなロリビッチ』
『マウントとってくんなおかっぱ』
『まぁまぁ(汗』
争いがはじまりそうなところで千鶴の返事が返ってくる。
『とりあえず先輩が応募するっていうし、写真撮るわ』
『またユリカちゃんに頼むよ』
『なんでユリカ?』
『ユリカはもう死んだよ、もういないんだよ』
『自分の妹殺すなよ♡』
『犯人は綾香ちゃんですね、わかります』
『次会うときは牢屋越しかな?』
『牢屋に入っても凛さんは来なくていいよ』
『ちゃんと手土産持ってってやるからよ♡』
『くさやとシュールストレミング持ってくわ♡』
『凛さんも土に返る?』
『焦る女の子のスタンプ』 by美里
ラインのやりとりをしながら、千鶴はため息をついた。
こうやって仲良くしているが、自分は桃子にスパイ活動をしろと言われてしまった。
だが、千鶴としては友達を裏切る気などない。
例え自分の立場を失ったとしても、学校で居場所がなくなったとしても。
友達は守りたいし、大切にしたい。
グルチャのやりとりから、イヴへの個人チャットを打つ。
『ねぇ、イヴ。今電話出来る?』
『いいよ』
すぐに電話をかける。
「どしたー?」
「あのね、実は……」
今日生徒会長室で合ったことを話す。
桃子にスパイをしろと言われたこと。イヴのスカートを覗いてしまったこと。
全てをイヴに話した。
「ほーん」
「ごめんなさい、イヴ」
「別に謝ることじゃねーよ。でも、ありがとうなちーちゃん」
「友達は裏切りたくなかったから……」
「裏切ってないじゃん。ちーちゃんマジ優しいじゃん」
「でも……」
「おん?」
「これで桃子先輩のことは裏切っちゃった。脅されていたとしても……」
「気にすることじゃねーさ。それにこのことは俺にしかまだ言ってないだろ?」
「うん……」
「他の皆には言わなくていいよ。大丈夫。もしちーちゃんに何かあっても俺が護るし、みんなもちーちゃんを見捨てないだろ」
「……ありがとう」
電話が切られる。
全てを洗いざらい話し、千鶴は少しの痛みが胸を刺す。
同時に、イヴも寝転がるとこういったのもちょっと女子高生らしいなと思ってしまう。
別に桃子のことは敵対視などはしていない。
むしろ、あの桃子はなんだか可愛らしく感じた。
吠える縦ロール。いかにもわがままなお嬢様っぽくて、それはそれでいいキャラをしているな、なんて思ってしまう。
だが。
「勝負は勝負。まけねーぜ、桃子パイセン」
拳を握る。
絶対に負けたくはない。
グルチャに戻って、文字を打ち込み始める。
『負けたくねーから、皆手伝ってくれよな!』
『大賞のタマとりに行くぞテメェら!!!』
ポイントを!!!!下からお願いします!!!!!
あと一言でもいいので!!!!
感想が!!!!
ほちいです!!!
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