93この鳥肌は愛情と共に。
いっぱいお話をして。
いっぱいじゃれあって。
いっぱい。いっぱい。いっぱい。いっぱい。
きっと今自分はゲームかドラマか映画の世界にいるのだろうと思えた。
だって。
自分の頭は今イヴに腕枕されていて。
寝顔はわずか5センチ先にあって。
空いた腕は自分の身体にかかっているのだから。
泣いてしまう。
嬉しすぎて泣いてしまう。
天国はあった。
今目の前に。
今生きているこの世界こそが、天国なのだとユリカは思った。
ゆっくりと――ゆっくりと吐かれる息。
その吐かれた寝息を吸い込んで自分の所有物にする。
「イヴさん」
――躾けてくれませんでしたね。
「イヴさん」
――それでも今日は良かったです。
「イヴさん」
――また来てもいいですか。
「イヴさん」
「うぅん……」
――身を縮めると額と額がこすり合う。
「イヴさん」
―このままキスしてもいいですか。
「イヴさん」
――幸せな犬になることを誓いますから。
「ぅぅん……」
「その“うん”は良いってことですよね」
誓いの唇を、前へ。
◇ ◇ ◇
「ゆりかあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
叫びと共にドダダダと階段を駆け上る音がした。
続いて部屋を叩きつけまくる拳の音がする。
発狂しそうな綾香が妹の扉を拳で殴くと息を荒げている。
「イヴんち泊ったってどういうことだオラああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「おねーちゃんうるさい!!!!!」
せっかく撮った写真を現像していた最中だったのに。
ユリカは現像された写真を壁に貼ると、布を被せた。
ガチャリ、扉から顔を出す。
開けるとそこには般若とうり二つの姉綾香の顔。
「ユリカあああああああああ!!!!!!! てめぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
「さっきからうるさいんだけど!!!!!」
血涙を流しながら姉は扉に手をかけるとミシミシと音をあげている。
「なんでイヴんち泊ってんだよぉおおおおおおおおおおおお」
「この前写真コンテストで被写体になってもらったの。だから行ったの」
「だからって泊ることねぇだろおおおおおおおおおおおおおおおお」
「あーもう、うるさい!」
「このクソガキがああああああああああ、そのツインテール引きちぎるぞコラああああああああああああああ」
「もーママぁ!!! おねーちゃんがうるさい!!!!」
「ママに頼ってんじゃねぇよぉ!!!」
一階からは母の声が聞こえてきたが、綾香は構わずに妹ユリカに詰め寄る。
ユリカも負けじと姉を睨みつけると扉を閉めようと力を籠める。
ギュウウウウウ――……
ミシミシ――……
互いに勝るとも劣らぬ力が押し、そして引く。
「イヴんちいって何してたんだぁ? ユリカぁぁああ」
「べ、別に何も……」
一瞬だけ昨晩を思い出して、ユリカの顔は赤くなる。
手には血管が浮き出るほどに力が込められているというのに、その顔は乙女すぎた。
「ああああああああああああああ?!?!?! ナニ顔赤らめてんだよぉおおおおお!!!」
「おねーちゃんには関係ないでしょ!」
「関係あるんだよおおおおおおおおお」
「無いでしょ! 出てって! このおばか!!! 本当にイヴさんがお姉ちゃんならいいのに!!!」
「ユリカの姉は私なんだよぉ! 唯一の姉妹は私なんだよォ、ユリカぁ!!!」
ドダンと音がして、ユリカは部屋から飛び出すと綾香の身体を突き飛ばす。
突き飛ばされた綾香は廊下に着地すると、口から出た涎を拭いながらユリカを睨む。
ガチャリドアに鍵をかけるとユリカも身を低くして構える。
「ユリカああああああ」
「バカ姉ええええええええええええ」
バチバチバチバチ――……
キュィィィィィ――ン――……
互いの手にチャクラが宿る。
綾香はその手に雷を。ユリカのその手にはチャクラで出来た球体を――。
同時に、飛び上がる。
綾香がユリカが、その手に最大の一撃を宿すと確実に仕留める一撃を。
「雷遁、千〇!!!!!」
「螺〇丸!!!!!!!!」
雷と球体がぶつかり合う。
後に小林家に残る姉妹戦争のはじまりの一日になることを、まだ姉妹は知らない。
◇ ◇ ◇
たった一枚の写真が引き金になることもある。
ユリカが撮った写真は、学内コンテストだけでなく地元新聞社の写真コンテストにも応募されていた。
それはまだユリカも知らぬ情報である。
そしてその結果は、勝手に応募していた教師も知らぬものである。
「この方……どこかで見たような気がしますわね」
優雅に朝のティータイムをしながら、南沢桃子は地元の新聞を目にしていた。
その金髪の縦ロールはメイドによって仕上げられ、今啜る紅茶もイギリス王室御用達のものだ。
富、名声、力。それら全てを手に入れた存在――南沢桃子。
イヴたちと同じ学園に通う、イヴたちの一個上の先輩である。
「あら、何を見ていらっしゃるのですか、お嬢様」
メイドが桃子の新聞を見れば、そこには桃子と同じ学園の生徒の写真。
夕日染まる住宅街。振り向く生徒はあまりにも美しい。
「美しいお方ですね」
ガシャン!
メイドの不用意な発言に、桃子はティーカップを投げ捨てた。
「もう一度言ってごらんなさい?」
「も、申し訳ございません! お嬢様」
深々と頭を下げるメイドに、桃子は立ち上がると腕組をしてメイドを見下した。
高飛車、傲慢といった言葉が似合いすぎるそのいで立ち。
桃子は同じ学園の生徒を褒めるメイドに容赦などしなかった。
「この学園で一番可愛いのは誰? この学園で一番美しいのは誰? この学園で一番なのは誰?」
「勿論桃子お嬢様です!」
「ならば、他の生徒を美しいなど口が裂けても言わないで!」
「申し訳ございません!」
今しがた読んでいた新聞を掴みあげると、桃子はびりびりに破いてその場に散らした。
「いいこと? この学園で一番は常にわたくしのもの。南沢家長女であるわたくしが最高にして頂点の一番ですの!」
「勿論でございます!」
破り捨てた新聞が足元に散らばる。
破り捨てたというのに、写真の一枚は顔の部分がはっきりと残っている。
写真の結果。新聞社コンテストの結果は銀賞である。
このコンテストには桃子も応募をしていたのである。
しかし、その結果は――新聞には載ってはいない。つまりは応募された何枚もの有象無象と同じ没作品。
縦ロールを豪快に揺らしながら、制服のスカートをふわり揺らしながら、桃子はスクールバッグを手にする。
「行くわよ。豚。通学の時間よ!」
「か、かしこまりました……」
ささっと桃子の前に回ると部屋の扉を開けるメイド。
ない胸を張って部屋から出ていく桃子。
(あの生徒――絶対に許しませんわ!!!)
磨き上げられた爪を噛む。
(わたくしを差し置いて銀賞を取るなんて……! なんて女なのかしら!)
しかし、あの姿には見覚えがあった。
多くの女子生徒が通う学園であるが、その数ある中でも金髪の生徒は片手で収まる程度の人数である。
そして、その名前は知っている。
写真のタイトルにはあったその名は、刻みたくなくても頭に刻まれている。
六道イヴ。
(六道イヴ……絶対に、絶対に赦しませんわ!!!)
「豚!」
「はい!」
「今すぐ学園の六道イヴという女の情報を片っ端から調べなさい!」
「かしこまりました……」
桃子を送り迎えする車に向かいつつ、メイドはタブレットを操作すると学園の生徒リストから『六道イヴ』という名を検索する。
情報はすぐにでも出てくる。
いつなんどきでも生徒のことを知るのは、生徒会長である桃子にとっては必須事項である。
タブレットの桃子オリジナルの学生名簿一覧には教師ですら知らない情報も存分に記載されている。
「ありました……六道イヴ。まだ一年生のようですね」
「続けなさい」
Sクラスのベンツの扉を執事が開ける。
桃子とメイドが共に乗り込むと、運転手は安全を確認の上、言わずとも学園へとハンドルを切る。
「少し前までは目立たない生徒だったようですが……現在は随分と様変わりしたようですね」
タブレットに掲載された写真を見せる。
前者は黒い髪のいかにも目立たなそうな生徒だが、アフター写真は性格が180度変わってしまったような派手な金髪をしている。
「フン! 高校デビューってところね。いいわ、この桃子様に恥をかかせたことを後悔させてあげるわ!!1」
チラリ、運転手が桃子の顔をバックミラー越しに見る。
「飛ばしなさい!」
「かしこまりました、お嬢様」
心地よいエンジンの爆音が、高級住宅街に響いた。
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あと一言でもいいので!!!!
感想が!!!!
ほちいです!!!
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