90ファインダー越しの彼女
バス停から降りると、そこにはまたユリカの姿があった。
イヴを待っていたユリカはイヴが降りてくると、とてつもない笑顔で出迎える。
「ユリカちゃん、今日はどうしたの?」
「今日はイヴさんにお見せしたいものがあってきました」
「え、なになに?」
バッグから黒い丸筒を取り出す。
筒を開けると中からは一枚の賞状が広げられる。
「お!」
「えへへ、そうなんです。この前撮らせていただいた写真で学内コンテストの一位をもらったんです」
「へー! すごいもんだな!」
「被写体が良かったからです」
「いやいや、撮り方が良かったんだろう」
「本当にそんなことはないです。イヴさんが美しすぎて可愛すぎて儚さ過ぎて男性だろうが女性だろうが魅了してしまう、
まるで絵画に描かれたような芸術的カリスマがあってこそです」
「ははは、そうかな……」
あまりにも熱心に言うものだから、ユリカのその気迫と熱意に少し苦笑いが出る。
拳を握りしめてイヴの素晴らしさを語るユリカは恍惚としながらも、何か熱い気持ちが感じられる。
「どうする、今日もうち寄ってく?」
「あ、その……よ、よかったらなんですけど……」
「?」
「わ、私明日開校記念日でお休みなんです。母にも泊ってくるかもしれないと言っていて……」
「じゃぁ、うち泊まる?」
「いいですか!?」
パァッと明るくなるユリカの顔つきといったらない。
さっそくイヴと手を繋ぐと、二人して六道宅へと足を進める。
「イヴさんがお泊まりしたときのことを想いだします」
「そうだなぁ。あんときは一緒にお風呂入ったり、お散歩したよな」
「はい! 明日はイヴさん学校でしょうから……朝のお散歩は出来ないでしょうけど、それでも一緒に居られると思うと嬉しいです」
「はは。俺も妹が出来たみたいで嬉しいよ」
「……じゃぁ――今日だけお姉ちゃんって呼んじゃおうかな」
「好きなように呼んでいいよ」
「じ、じゃぁ……」
立ち止まり、上目遣いにイヴを見る。
(本当にイヴさんがお姉ちゃんだったら――)
(今目の前にいる私の女神が姉だったら――)
毎日を共に過ごし。
いつも一緒にお風呂に入って。
いつも一緒に寝て。
休みの日は一緒にお出かけして。
たまには喧嘩もして。
でも、優しいイヴはいつも謝ってくれて、ユリカも謝ると余計に愛おしくなって。
誕生日にはプレゼントを贈り合って。
クリスマスにもプレゼントを贈り合って。
一緒に年を越して。
お正月のセールに一緒に行って。
バレンタインにはチョコレートを贈り合って。
ホワイトデーにもお返しを送り合って。
走馬灯のように流れていく妄想。
もし本当にイヴが姉だったらということがリアルに妄想できる。
肌に感じるレベルに再現できる。
小さくため息。それは幸せすぎるピンク色のため息である。
「イヴ……お姉ちゃん」
「なぁに、ユリカ?」
きゅん。
いつもは『ユリカちゃん』と呼ぶのに、『ユリカ』と呼び捨てされた。
ただそれだけのことなのに。ちゃんという言葉が消えただけなのに、猛烈に胸が幸せに苦しみの声をあげる。
「もしも本当に妹だったらちゃんはつけないだろーしな」
「も、もう一度……呼んでみてもらってもいいですか?」
「ユリカ」
「ウッ……」
急に口と腹を抑えるユリカ。そして目からは何故か涙が零れている。
「え、どうしたの?」
「いいえ、なんでもありません……(耳から入った言葉がダイレクトに下腹部に来る……危うくマリア様になるところだった……)」
あやうく処女懐胎になるところだったが、なんとか理性を保つ。
しかし、そんなちょっとした言葉でここまで響くとはユリカも思ってはおらず、なんとか気力を振り絞る。
ポツリ。
「あ」
「あら」
二人して空を見上げれば灰色の雲から雨粒が落ちてくる。
空はゴロゴロと雷様の機嫌も悪いらしく、今にも盛大に振り出しそうである。
雨の粒が一気に二人のもとへと落ちる。
「ありゃりゃ、ユリカちゃん走るよ」
「え……あ……はい……」
ちゃん付けに戻ってしまい、ユリカはげんなりとした顔つきになりながら走る。
これから明日までは『ユリカ』と呼んでもらえると思っていた思惑は、ちゃっかりと消え去った。
(でも……これはこれで……)
激しく打ち付ける雨。
後ろを走っていたユリカは、その雨こそ幸先のいいものだと思えた。
何故なら前を走るイヴの姿は――。
シャツのみ。
想像してほしい。
薄いシャツ一枚の女子高生が雨に打たれる様を。
無論のこと――。
傘も差さず、雨宿りもせず。
ただ雨に打たれる。
(あ、あ……イヴさん……)
目の前を走る女子高生イヴ。
走ることで揺れるスカートなどには目が行かない。
それよりも魅力的なものが、今目の前にある。
大粒の雨が激しく打ち付ける。
大粒の雨は髪も濡らすが、一番濡らすのは何か――。
イヴのシャツであるッッッ!!!
薄いシャツ――。
雨に濡れたシャツは水分を含むと重たくなって肌へと張り付く――。
そこに見える景色。それは――。
ブラが透けたイヴの背中ッッッ!!!
(カ、カメラ! カメラを起動せねばッッッ!!!)
あいにく今日は一眼を持ってきてはいない。
だが、ユリカのもつスマホは最新式のものである。
一眼に勝るとも劣らぬそれならば、イヴのその背中のワインレッドのホックでさえくっきりと映るはずだ。
走りながら、背を取る。
連射機能をフルに使い、シャッターを切り続ける。
(どうか気付かれませんように。気付かれませんように……)
だって気付かれたら。
『変態』
『どこ撮ってんの、雌豚』
『本当に最低。気持ち悪っ』
(なんて……)
吐息が荒いのは、決して走っているからではない。
(躾てほしいよぅ……)
高鳴る鼓動。
もう六道家はすぐそこである。
立ち止まるイヴに向かって、ユリカはまだスマホを向け続ける。
(気付かれたら……気付かれたら)
「わー濡れちまったね。ユリカちゃん」
「はい……」
イヴの顔が――振り向いた。
「スマホめっちゃ濡れてるよ。大丈夫なの?」
「ぼ、防水なので……(し、躾られる!?)」
期待と興奮で顔が爆発しそうなほど赤くなる。
もうイヴは振り向いた。スマホを向けているのは見つかった。
きっと怒られる。きっとその麗しき唇からは想像も出来ない汚い言葉で罵ってくれる。
濡れたままの自分を――。
「あ、また何か撮ってたの?」
「は、はい」
「えー、何撮ってたの?」
「い、イヴさんの背中を……」
「そいや、前も背中から撮ってたよね」
バッグから鍵を取り出し、玄関を開けるイヴ。
(え……お、怒らない?)
期待していた反応じゃない。
思っていた妄想と違う。
だったら。
「イヴさん、シャツが透けてブラ紐見えてましたよ」
「え、マジ。今日赤だから目立つでしょ。ほら」
ぐいとシャツを引っ張って、ユリカへと谷間を見せつけるイヴ。
大きく開かれたシャツからは豊満な乳房の谷間が見えて、ワインレッド色のブラが少しだけ覗いている。
「え……あ……あ……」
カシャン。
思わずスマホを堕とす。
思っていた反応とは違う――でも、思っていた反応よりもずっといい。
思ったよりもずっとえっちな方向に事は動いた――。
「さ、入りな。濡れちまったからとりあえずシャワー入ろ」
「あ、あのイヴさん!」
「ん?」
ツゥ――と鼻血が垂れる。
まだ知らない情報を――、ユリカが知らない情報を。
今目にしたものを情報として記憶したくて、ユリカは口を開く。
「イヴさんのおっぱいって、何カップなんですか!」
「Fだよー」
どっと鼻血が噴き出す。
「だ、大丈夫!?」
「だいじょばないけれど……だいじょうぶです……」
「と、とりあえずハンカチ……」
「大丈夫です。本当に……麗しのイヴさんの所有物を私の血で穢すわけにはいきません……穢されたいのは私なんですから」
「よくわかんねーけど、とりあえず鼻に当てときな! な、おねーちゃんの言うことは聞いておきな!」
「じ、じゃぁ……」
玄関先に血の円がいくつも滲む。
「ユリカって呼んでくれたら……」
「ユリカ! ほら、鼻血抜きな!」
「お姉ちゃん、ありがとう」
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