88学校の怪談
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@yamamotos_narou
この学校には本当に出るらしい。
そんな噂を耳にして、イツメン5人衆は夜の学校を前に集まっていた。
「本当に出るの?」
まだ制服姿のままのイヴはちょっとだけ引け腰で尋ねる。
「っていう噂だよ。元々この辺って昔は戦場だったんだって」
スマホを操作する綾香は実際自分たちが今立つ地の過去の歴史を調べていた。
見えるように全員にスマホを向ける。そこには一枚の絵。
かつては戦場だったことがうかがえる侍たちの惨い争いの絵が表示されている。
「いやーん♡ 凛怖い♡ イーちゃん護って♡」
「は? お化けより怖そうな人が何かいってる」
「あれあれ、トイレの花子さんかと思ったら綾香ちゃんだったんだ」
「あぁん?」
「おぉん?」
睨み合う綾香と凛。
二人には恐怖などという感情は全くない。
何故ならば、これは肝試しというなのイチャイチャイベントだからである。
お化け。
夜の学校。
肝試し。
となれば、そこは再び戦場と化す。
そう、イヴをかけた恋の戦争が今まさに開幕しようとしているのである。
「でもさ、俺ら5人じゃん。どうする?」
「凛さんに任せるとおかしなことになりそうだからさ、じゃんけんにしよ」
「チィ!!!」
「り、凛ちゃん……ぃ、ぃま舌打ちが……」
お化けやホラー系が苦手な美里がすでにビビりながら凛の袖を掴んでいる。
「でも、夜の学校ってワクワクするね。普段と全く顔が違うんだもの」
普段出来ないことにワクワク感半端ない千鶴。
普段風紀委員など真面目そのものの役割を担っているせいか、こういったイベントはドキドキが止まらない。
「じゃ、最初はグー……じゃん、けん」
ぽん。
イヴ、グー。
綾香、パー。
凛、パー。
千鶴、グー。
美里、グー。
「お、丁度割れたな。これでいいんじゃね?」
「「はい?」」
「じゃ、俺とちーちゃんとみーちゃんで行って、そのあとに凛と綾香な」
「「なんで?」」
コンマ一秒のずれもなく、綾香と凛の声が重なる。
「丁度いいじゃん」
「「良くない!!!!!!!」」
訴え虚しく、イヴはもうこれでいいだろうと千鶴と美里の手を引くと学校内へと足を進めていく。
暗い学校、4階教室には白い少女が5人を見下していた。
◇ ◇ ◇
「やっぱ夜の学校ってこえーな」
スマホのライトを頼りに、イヴたちは夜の校内を歩いた。
きもだめしのルートは4階教室まであがり、一周して元の玄関まで戻ることである。
静まりきった廊下には3人の足音だけが響く。
廊下には非常灯の緑色の灯りだけが光、その緑が余計に恐怖心を煽るようだ。
「なんか、あれだな。サイレン〇ヒルとかサイ〇ン思い出すわ……」
「ぁ、さ、サ〇レントヒル……ぃ、ぃぃよね」
「え、結構えぐくね?」
「げ、ゲームは結構好き……だな。2が一番……しゅ、しゅき……」
「俺映画してみてないや」
「二人とも何の話してるの?」
会話についていけなくて、千鶴は首をかしげる。
カツン――……。
カツン――……。
静かすぎる校内に3つの足音。
やっとの思いで4階までたどり着くと、やたらと長く感じる廊下を歩く。
もう半分くらいは来ただろうか。
あとはもう戻るだけの道のりではあるが、やはり夜の学校は昼間とくらべものにならいものだ。
まるで別世界、異世界にでも迷い込んでしまったような静けさと闇。
「ぴゃぁ!!!!」
「え、なになに!?」
「ぃ、ぃま……だ、誰かお尻触ったでしょ!!!」
スカートを抑えながら美里がそんな叫びをあげる。
しかし、イヴも千鶴も心当たりなどはなく、美里の訴えに急激に鳥肌が立ってしまう。
「お、俺触ってないぞ……」
「わ、私だって!」
「れ、れも、触られたもん! お尻ぎゅって! ぎゅってされたもん!」
もう泣き出しそうな美里。というかちょっとだけ涙が零れる。
両手で涙を拭うと、美里はもう腰が抜けてしまって動けなくなる。
「おいおい、大丈夫かよ。ほら、おいで」
「うぅ……本当に……お尻触られたんだもん……」
「気のせいじゃないの? ほら……」
「気のせいじゃないもん! お尻鷲掴みにされたの! ホ、本当だもん……ぐ、ぐすん」
腰の抜けた美里をイヴが抱き上げ、千鶴が頭を撫でる。
「と、とりあえずもう戻りましょう」
「お、おう! あ、あれ……廊下の向こうに誰かいない?」
「ちょっとイヴまで止めてよ。怖がらせないで」
「だ、だって、ほら」
「え……」
イヴに言われて廊下の向こうを見れば、そこには一人の少女の姿。
おかっぱじゃないから綾香ではないだろう。
凛のように黒く長い髪をしているが、ならばどうして白装束など着ているのだろう。
「り、凛さんか誰かが怖がらせようとしてるんじゃないの?」
「そ、そうかもな……」
白装束の少女がいきなり宙に浮く。
「!?!??!!?!?!?!?」
「ぴあ!?!??!!?!?!?!?」
「R,RUN!!!!!!!!!!!!!!!!!」
何故か英語で叫ぶ千鶴。
叫ぶよりも早く踵を返すイヴ。抱き上げられていた美里はもうすでに泡を吹いて気を失っている。
超絶ダッシュをしてきた道を引き返すと、急いで校門へと戻る。
「で、出た!!!!!! マジにいた!!!!!!!!!!!!!!」
「へー、そうなんだ」
スマホをいじりながらつまらなそうな綾香。
「本当にいたんだ♡ ……羨ましい」
なんで一緒に行くのが自分じゃなかったのだろうと、いつまでも引きずる凛。
「も、もう帰ろう! な! な!」
「だって。どうする凛さん」
「綾香ちゃん怖いならいいよ。帰って♡」
「あぁん? 誰がいつ怖がったのよ!」
「あ、お化けとも同族だから怖くないか♡」
「凛さんこそビビってるでしょ!!!! さっきから髪いじってるの怖いからでしょ!!!」
「はぁ!? 意味わかんねーし!!! ビビッてなんかないし!!!!」
ガルルルル――……!!!
狂犬二匹が牙をむき出しにすると唸り声をあげる。
「お、おい、凛、綾香。俺の話聞いてる?」
「じゃぁ凛さんビビッてないなら行こうじゃないの! 凛さんがビビってるところ動画に撮ってさしあげますわ!」
「はぁ!? こっちこそそのおかっぱ頭が恐怖でハゲ散らかるところ撮ってあげるわ!!!!」
狂犬二匹がどちらともなく校舎へと歩き出す。
暗いはずなのに、二人の視線がぶつかりあうと火花が散っているせいで少し明るい。
「だ、大丈夫かな、あの二人?」
心配そうな視線を向けていた千鶴。
しかし、もう二人の姿は校舎の中へ吸い込まれている。
「たぶん大丈夫だろ……あの二人なら……」
「でも……」
今しがた見たあのお化けはしっかりと目に焼き付いている。
二人があのお化けに出会ってしまったのなら――。
どうなるかは予想出来ない。
◇ ◇ ◇
イヴたちが校内へ入ったときとはずいぶん違う音が響いていた。
二人とも睨み合ったままずんずん進むせいで、その足音は豪快だ。
おまけにしょっちゅう火花が散っているせいで割と明るい。
「そろそろ四階だね……おっと、動画の用意しとかないと。凛さんいつでも泣いていいからね」
「はああああああああああああああ??? こっちのセリフなんだけど♡♡♡」
二人してスマホを取り出すと動画の準備をする。
しかし、どちらもまるで怖がる様子もなければ、ビビる様子もない。
むしろ増々ヒートアップする熱のせいで、肝試しというよりは戦場のようだ。
「……! 凛さん!」
「なによ」
「今、あたしのおっぱい触ったでしょ?」
「ないものをどうやって触れっていうの??????? クソうけるんですけど!!!!!!!」
「あぁ? 今触ったでしょ」
「っていうか、綾香ちゃんにおっぱいあったんだ。ウケる」
「ロリビッチテメェよぉおおおおおおおおお」
ゴゴゴゴゴゴゴ――……。
「かかってこいよ、おかっぱ」
ゴゴゴゴゴゴゴ――……。
廊下の奥に、白装束の少女が立っている。
だが、二人の視界には今そんなものは映らない。
(な、なんだあいつら……さっきの三人組と違うな……)
お化けのよし子さんはまるでビビらない二人に、逆に恐怖を感じる。
(と、とりあえず浮けばビビるっしょ)
必殺空中浮遊!!1
綾香には効果がないようだ。
凛には効果がないようだ。
「凛さん、私ね実はひたすらに修行していたんだよ……今の私なら凛さんにも、千鶴さんにだって勝てるんだからね?」
拳を作ると、その腕はまるで金属のようにガチガチに硬くなる。
まるで金属の棒。拳はまるで鉄球のごとく赤く硬く変り果てる。
「やっぱり綾香ちゃんはおバカさんじゃん♡♡♡ 脳筋じゃあたしに勝てねーよ♡♡♡」
懐から手のひらに収まるほどの小さなメタリックな銃を取り出す。
超小型電磁拳銃である。その威力は一発で車一台を吹き飛ばす程度の能力を誇示している。
(なんだこいつら! ビビれよ! ビビれ!!!)
おばけのよし子さんが二人に迫る。
しかし、反応はない。
お互い睨み合ったまま動かない。
「う、うらめしや~」
「……」
「……」
「あ、あの~」
「……」
「……」
「お、おばけだぞー! ほらほら、こっちみて。ねぇ、見て! 見てってば」
シュン――……。
メキャ。
早すぎる綾香の拳が壁を殴りつけると、蜘蛛の巣上にヒビを入れて砕ける。
「ひぃ!」
もちろん怖がっているのは、おばけのよし子さんのほうである。
「今取り込んでいるから黙っててくれる?」
「あ、はい」
「あら、本物のお化けだって。綾香ちゃんにお迎えがきたんじゃない?」
「そ、そうだぞー本物のおばけだぞー」
よし子さんは凛の背後に回ると肩を持ってやじを飛ばす。
「いいよ。二人纏めてあの世まで殴り飛ばしてあげるよ」
「クソ雑魚っぽいセリフ吐いてると死ぬんだよ♡」
シュン――……。
綾香の一撃が凛の頭上をかすめる。
紙一重のところで交わすと、凛は壁を走りながら綾香の背後へと回り、ジャンプしながら銃口を綾香に向ける。
ズドンッ!
重たすぎる銃声が響くが、綾香も即座に弾道を見極めると、身をひるがえして回避する。
「ぴぃ! え、ち、ちょっとかすった! おばけなのに身体かすったよ!?!?!!?!」
「ごめんね、これ小型の銃だけど、反物質を使ってるからお化けだろうと当たったら死んじゃうよ♡」
「ぴぃいいぃぃぃ!?」
拳が――。
銃が――。
凛が――。
綾香が――。
かつて戦場だった部隊を再び、戦場へと変えてしまっていた。
(や、やばいここにいたら死んでしまう! 二度めの死を体験することになってしまう!!!!!)
ピロン。
「あ」
「あら♡」
(え?)
ラインの通知に、二人の戦闘が止まる。
見てみればイヴからの連絡である。
『美里気を失っちまってるし、もう帰ろーぜ。二人とも早く帰ってこいよ』
「だってさ……」
「仕方ないね♡ 続きはまた今度にしよう♡」
拳を、銃を二人が収める。
さっきまで争っていたはずの二人はその覇気を収めると、さっさと階段を下っていく。
(な、なんだったんだ……あの二人は……ここの生徒やべぇな)
校門に戻ると待ちくたびれたと言わんばかりのイヴたちが待っていた。
「イヴごめんね、遅くなっちった」
「イーちゃん怖かったよぉ♡」
「おせーよ、二人とも。美里気絶しちまってるし、さっさと帰ろーぜ」
「「はーい」」
さっていく5人を4階の窓からおばけのよし子さんが見つめていた。
(や、やっと帰るのか……よ、よかった)
胸を撫でおろす。
とにかく一難去ったと思い、よし子さんは元の定位置へと戻ろうと廊下へと出た。
先ほどはなかったはずのものが、そこにあった。
凛と綾香が争っていた場所に、おばけに向けたメッセージが書き残されている。
このようなことをされるなど、はじめてでよしこは震えが止まらなくなる。
「や、やっぱりあの子らやばい子だ……」
壁に残されたメッセージ。その暴力的すぎる文面に、おばけであるのに寒気を覚えてしまう。
『次イヴを怖がらせたら』
ごくり息を飲む。
『コロシテヤル』
ポイントを!!!!下からお願いします!!!!!
あと一言でもいいので!!!!
感想が!!!!
ほちいです!!!
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