75テストなんてやりたくなぁい!
放課後、図書室に集まった五人は珍しく教科書を開くとノートや問題集にペンを走らせていた。
そう、学生ならば避けては通れない学業。
しかも学期の終わりが見えてきたとき、学生たちの前に立ちはだかる壁がある。
テストである。
小テスト。
中間テスト。
場合によっては教師がオリジナルに編み出したテストなどもある。
だが。
今五人が目の前にしている壁の名は――。
期末テスト。
である。
小テストよりも多く難儀な問題たち。
中間テストよりも広い範囲から出題されるテスト。
「ああああああああああ、めんどくせぇぇぇぇ」
最初にだるそうに声をあげたのは凛である。
机に顎を乗せながら吐いた息で教科書のページをめくる。
「そうか? 俺結構楽しいけど」
「勉強のどこが楽しいのぉ~」
確かに学生にとっては苦行ではあるとイヴは思う。
しかし、イヴはこれが二回目の人生である。
大人になったら学びたくても学べない。
仕事に、社会に、立場に追われているうちに、学生時代がどれほど幸福なものだったか、というのをイヴは知っている。
だから、こういった何かを学ぶというのも楽しく感じてしまう。
ましてや自分一人で学ぶのではなく、こうやって仲のいい面子と共に励めるのなら尚更である。
「ぁ、ぁにょ……」
伏し目がちに美里が発言する。
「こ、こ、ここ……ゎかんにゃ、なくて……だ、だれヵ……」
「あぁ、そこはね……」
隣にいた千鶴がアドバイスを施す。
教科書を捲りながら、この場合はこうやって、そこからこうやって――なんて風に。
「ぁ、ぁりがと……ち、ちじゅる……しゃん……」
「うふふ、また分からなかったら言ってね」
「ぁ、ぁぃ……」
イヴだけでなく美里にとってもこの環境は嬉しいものである。
こうやって誰かと勉強をするなど初めての経験である。
分からないところは千鶴が丁寧に教えてくれるし、皆でなにか一緒のこと出来るのか嬉しくて仕方ない。
「あ」
消しゴムを取ろうとした綾香がテーブルの下に消しゴムを落とす。
おっさんが言うように『よっこらせ』なんていいながら机の下にもぐりこむ。
(ん……?)
テーブルの下に見た景色。それは――
(なんだ、この生足の群れは!!!!)
イヴ、千鶴、美里、ついでに凛の生足が目の前に広がっている。
(天国じゃねーか!!!!!!! イ、イヴの御御足は!?!?!?!?!!??)
スカートが長い足は美里だろう。
黒いニーソを履いてるのは間違いなく凛。
姿勢正しく座っているのは恐らく千鶴だろう。
そして短すぎるスカートに組まれた足こそ――
(これがイヴの!!!!!!!)
パンツが見えるかもしれないとテーブルの奥へと進む。
しかし、組まれた足はギリギリのところでスカートの中身を隠している。
(お、おしい! あと少しだったのに……)
ため息をついて消しゴムを拾う。
ふと他の足を見ればだるそうにした足がふらふらしている。
黒いニーソを履いた足は凛のものだろう。こちらはイヴとは違ってピンク色の生おぱんつが丸見えである。
(ヴォェッ!!! 嫌なもんみちまったな……ロリビッチのくせに可愛らしいパンツ履きやがって……)
テーブルの下から出てきた綾香は随分と優れない様子な顔つきをしている。
「綾香顔色悪くね?」
イヴが問う。
「ちょっと変なもんみちゃって……」
気分を悪くした視線が凛へと刺さる。
状況から何があったのか分かった凛はすぐに足を閉じると、スカートを手で抑えた。
「な、なに見てんのよ! おかっぱ!!!」
「こちとら見たくてみたんじゃないし!!!!」
「変態!!!! すけべ!!!! 淫乱!!!!」
「だから見たくて見たわけじゃないっつーの!!!! そっちこそスカート全開で足ぶらつかせてるのが悪いんでしょ!!!!」
「だからってわざわざ見ないでしょ!!!!」
「二人とも、ここは図書室なんだから静かにしないとダメよ。ね。声のボリューム小さくしましょ」
まるで母親のように千鶴が諭すと、二人は矛を収めて着席する。
しかし、その視線はまだ苛立っているようで、ぶつかりあうと火花を散らしている。
「凛のパンツ見えたの? 何色だった?」
油を注ぐイヴ。
「思い出したくもないけど……頭と同じピンク色だったよ……あー、思い出しただけで吐きそう」
「表出ろおかっぱああああああああああああ!!!!!!!!!」
(マジにうるせーなロリっ子とおかっぱは……)
横目に見ながらペンを走らせる美里。しかし、美里もちょっとだけさっきより足を閉じる。
そこから30分ほど黙って勉強を続ける。
もうそろそろ一時間は経つだろうか。
イヴはペンを置くと背伸びをして長い髪をかき上げる。
「なーちょっと休憩しよーぜ」
「うん、そーしよ♡」
イヴの号令で皆がペンを置く。
さて、どう休憩しようかと思っていると凛は待ってましたと言わんばかりにテーブルの中央に二つのカードの山を置いた。
「なにこれ?」
「休憩のお供だよ♡ ちょっとゲームしない?♡」
「期末前なんだから勉強しろよロリビッチ」
「あ、ごめん、今雑音が聞こえた気がするけど気のせいだよね♡」
「やーいピンクパンツ、そういえば、パンツからちょろっと……」
スパァン!!!!
丸められたノートが綾香の脳天を直撃する。
「あ、ごっめーん♡ ハエが五月蠅いと思ったら綾香ちゃんだった♡ あとちゃんと処理してるからな♡
変なこと言ってんじゃねーぞ♡」
「こ、このロリビッチぃ……」
(こいつらお笑いやったら面白いかもな……動画でもあげたら再生数稼げそう)
なんて思う美里。
「まぁいいからさ。ゲームってなに?」
「えっとね♡ こっちの山札がトランプで、こっちの山札には罰ゲームが書いてあるの♡」
「そんでそんで?」
「一人一枚カードを捲って数が一番小さい人が罰ゲームになるの♡ 簡単でしょ♡」
「おー、いいじゃん。やろやろ」
「ちなみに1ゲームにつき一回だけ引きなおしが出来るの♡ ただし、引き直しをして最下位だったら罰ゲーム二回やるの♡」
「ぇ、ぁ、ぁにょ……そ、それ……ゎゎたしも……やりゅの?」
「もちろん、みーちゃんもやるんだよ♡」
「ひぃぃぃ……」
「いーじゃんいーじゃん、運ゲーなら誰が罰ゲームかわからないだろ? やってみよーぜ」
早速トランプの山札を一枚引くイヴ。
数字はなんといきなり13のKである。
釣られるように千鶴も一枚、凛、綾香、そして最後に美里も続く。
「じゃー発表しあおう♡ 最下位だーれだ♡」
一斉にオープンするそれぞれのカードたち。
イヴ、13。
千鶴10。
凛11。
綾香8。
美里12。
「お、綾香罰ゲームじゃん!」
「な! インチキだ! ロリビッチはめたでしょ!!!!」
「ざんねーん♡ 今回は何もしてないの♡ さ、早く罰ゲームの山札めくれよおかっぱ♡」
ぐぬぬぬと歯を食いしばりながらも、綾香は罰ゲームの山札から一枚引く。
引かれたカードを確認する綾香。
(う、嘘だろおい……)
カードの内容を見て絶望する綾香。
カードに書かれていた内容は――
『今履いているパンツの色を言う』
(嘘だろおいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!??!?!?!?)
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