68あそぼ
ヘアピンはちゃんとつけていた。
放課後の女子高生が、駅前に二人。
片手には今はもう落ち着いてきたタピオカのドリンク。
「次何しようか?」
イヴが話しかけても美里は恥ずかしそうに俯いている。
「ぇ、ぇっと……り、六道しゃんが……したいことで、ぃ、ぃぃよ……」
ぎゅるぎゅると太いストローからタピオカを吸いこむ。
大きな塊がいくつも口に入ると、美里はハムスターのように口をもごもごさせている。
(こ、これがタピオカか……陽キャドリンクを私が飲む日がくるなんて……)
ごくり。
まずくはないが、とてもおいしいというわけではない。
ただなんとなく、こうやって友達と一緒に何かができるというのは嬉しい気がする。
ちらり隣を見れば自分とは正反対に思える存在。
長い金髪、第二ボタンまで開いたシャツ、短すぎるスカート。
ごくり。
女ではあるけれど、その白くて長い脚を見ていると変な気分になる。
(えっろい足してんな……私が男だったら……大変なことになってただろうな……)
「ん? どした?」
「ぇ、ぃいや! す、スカート!」
「スカートが何?」
「み、短い、で、で、すね……はは……」
「普通じゃん? みんな同じくらいじゃね?」
これくらい普通だろうとは言うが、隣を歩く美里のスカートは膝よりも長い。
屈めばおぱんつの見えそうなイヴに対し、美里のスカートはいくら屈もうが何も見えることはない。
「しょ、しょぅ……かな……ぁ、ぁのさ」
「うん?」
ストローを咥えながら美里を見る。
「は、はじゅかしくは……な、にゃいの?」
「別に」
「だ、だって……ほら、その……ぉ、ぉ、ぉぱんつ……」
「あぁ、パンツ見えそうって? 別にインナーパンツ履いたりもしてるし。今日ははいてないけど」
「は、はいてない!?(ノーパンなの?!?!?!?!?)」
はいてないと聞いて、思わずこいつは痴女なのかと思ってしまう美里。
インナーパンツ、というものが分からなくて、美里の顔は自分のことでもないのに真っ赤になる。
「ノーパンってことじゃねぇから。今日はインナーパンツを履いてないってこと」
「ぇ、っぁ、そ、そうだよね……はは……ははは……」
とりあえずそのままの足で近くのビルへと入っていく。
美里は特に希望がなかったため、今日はイヴが案内役だ。
二人してエレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押す。
最上階はレストラン街になっており、そこにはスイーツの専門店もいくつかある。
ちらちら。
二人きりのエレベーターで、美里はついイヴの足を見てしまう。
(白くていい脚してんな……)
「まだ気になる?」
「ぇ、べ、べつに……ちが」
「ほれ」
ペロン。
おもむろにあげられたスカート。
中にはイヴの生おぱんつ。黒くてレースで、ちょっぴりえっちな生おぱんつが美里の前に降臨されている。
「ちょ!!!?!?!? なにしてんの!?!?!?!?!?!」
「だから、パンツはいてるって」
「パ、パパ、パパパ、パパンツのこと気になってたんじゃないの!!!!」
「違うの?」
「早くスカートおろして!!!!!!」
「別に女同士だし……」
「いいから!!!!」
イヴにスカートを下ろさせると、美里は壁に手をついて呼吸を整える。
こんなに大声を出したのはいつ以来か、こんなに焦ったのはいつ以来か。
(ていうか、なんでそんなに生おぱんつ見せられんだよ!!!! 恥じらいねーのかよ!!! ビッチかよ!!!!!!)
まだ胸のどきどきは止まらない。
本当に自身が男ではなくて良かったと思う。もし男だったならば大変なことになっていただろう。
多分――前かがみで歩くことを強いられるはめになっていたはず。
「えいっ」
「ぴがyさじぇbるあんしだおぱいkなjさの!?!??!?!??」
背後に回ったイヴがスカートを捲る。
いくら長いスカートであろうが、捲られれば見えるものが見えてしまう。
「色気のねーパンツだな」
なんて笑う。
「…………ぅ、ぅぅ――!!!」
涙目になりながらスカートを抑える。
小悪魔に笑うイヴが憎い。
自分の中にほんのわずかに残っていた乙女心が今全面に出ると、美里の目はうるうるになって顔は今にも火が出そうだ。
「り、六道しゃんのえっち!!! へんたい!!! すけべ!!!!」
「いーじゃんか、女同士だしさー」
「女同士でもダメ!!!! えっちなのはダメ!!!!」
「ちえー……じゃぁ、こういうのは?」
壁を背にした美里にイヴが迫る。
小悪魔な――それはそれは小悪魔な表情をすると、美里に迫って壁ドンする。
「…………」
「ドキドキする?」
「…………し、しゅる……」
エレベーターが目的階へと到達する。
イヴの手が壁から離れると笑いながらフロアへと出ていく。
「ほら、いこー」
「…………んんん!」
「なんだよ」
「り、り、六道しゃん、き、キライ!」
「そっか! 俺は好きだよ!!!」
カァァ――……
顔から火が出る。
なんの躊躇いもなく――嫌いという言葉に『好き』で返す。
「き、キライ! し、しょんにゃこと……言って!!!」
「俺はみーちゃん好きだぞー!」
じゃれあう女子高生二人に周りの目が刺さる。
どれもこれもじゃれあいを微笑ましく見る目ではあるが、美里は余計に恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
「も、もういいから!!! ゎ、ゎかったから……ゎかった……から」
きっと言えばいうほど、イヴは面白がって『好き』ということだろう。
真に受けてしまう美里はもうこれはいかんとその青い髪ですら赤く燃えてしまいそうである。
「みーちゃんウケる。顔超真っ赤じゃん」
「り、六道さんが……変なこと、ぃ、ぃうから……」
「いいじゃんいいじゃん。こういうじゃれあいがたのしーんだよ」
「ぅぅ……」
それから二人してパフェを食べて。
パフェを食べたらいい時間になって。
イヴは美里をバス停まで見送ってくれた。
◇ ◇ ◇
ネトゲ内でアバターを動かしながら、美里は一息ついていた。
『今日さ』
『うん』
『タピオカ飲んだ』
『マジ?』
会話の相手はネトゲグループのリーダーである。
『おいしくはなかった』
『そんなもんなんだwwwでも、タピオカとかめっちゃJKぽいwww』
『うん』
『なんかテンション低くね?』
『スカート捲られた』
『え、マジ。そいつ男?』
『いや、女』
『なんで捲られたの?』
『じゃれあいだって……』
『セクハラじゃん。嫌なら嫌っていったほうがいいよ』
『うん……そうする』
ネトゲでの会話をしながら、リアルではスマホでもラインを送る。
嫌だったから、本当に嫌だったし恥ずかしかったから。
イヴに連絡をいれる。
『次は私が捲るから』
『いいよー』
『えっち』
『変態』
『スケベ』
『きらい』
分かってるから。そう打つ。
『俺は好きだよー』
「絶対言うと思った……本当……六道さんキライ……」
分けられた前髪に飾られたヘアピンをなぞる。
感想が!!!!!!!!!!!!!!!
ほちいです!!!!!!!!!!
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