55王道
やっと、やっとイヴに逢える。
少しでも早く逢いたくて、綾香は駆けた。
大急ぎで新しい制服に着替え、さらにスクールバッグにしこんでいたあるものを取り出す。
(これなら……これならばイヴも運命を感じてくれるはず……!!!)
仕込んでいたモノ。
綾香がこれならば絶対にイヴが運命と信じてくれるもの。
走りながら取り出したものを咥える。
綾香が考え抜いた最高の神器。
その名は。
食パン!!!!
食パンを咥えながら駆ける綾香。
(食パンを咥えながら走る私、曲がり角でイヴとぶつかれば、きっとイヴも!!!)
綾香の脳内シミュレーションが開始される。
食パンを咥えた綾香は曲がり角でイヴにぶつかる。
お互いにぶつかると、その場で尻餅をついて。
『な、なにすんのよあなた!』
『ぶつかってきたのはそっちだろう!』
最悪の出会い、でも、教室にいけば二人は同じ空間に。
互いにいがみあいながらも、その距離は徐々に縮まって――。
凛ほどではないが、自分にも計画が練れるじゃないかと感心してしまう。
しかし、早速綾香の計画は壊れることとなる。
計画では曲がり角でぶつかるはずのイヴが――目の前にいる。
(し、しまった! これじゃ角でぶつかることが出来ない!)
もうすぐにでもイヴに接近出来る。あと数十歩、あと数歩。
(ならば!!!)
綾香がイヴを追い越す。
「あ、綾香、おは……」
全力ダッシュで角を曲がる。
声をかけたのに学校とは違うルートへと行ってしまう綾香に、イヴは首をかしげると疑問符を浮かべている。
(どうしたんだろう……まぁいっか)
歩き出すイヴ。その角には綾香が待ち伏せている。
(今だあああああああああああああ!!!!)
突進する綾香。避けるイヴ。
「何やってんの綾香?」
「何で避けるの!!!???」
「え、なんでって危ないし」
「せっかく食パンまで用意したのに……畜生!」
「ごはん食べてなかったの?」
バッグをごそごそ。
「プロテインバーだけど食べる?」
「食べる!!!」
「じゃー半分こね」
「うん!!!」
二人でチョコレート味のプロテインバーをかじる。
綾香の奇行の意味が分からぬイヴであったが、もうこれしきのことでは動じることはない。
「なんでわざわざ角に曲がったの?」
「え、角でぶつかれば運命的な出会いになるじゃん」
「なんで?」
「知らないの、イヴ? 食パンを咥えて角でぶつかると運命的な出会いになるんだよ?」
「あー、昔の王道恋愛ストーリーってそんなのだよな。でも、俺らもうすでに知り合ってるしな」
「確かに」
「だから、もしぶつかっても痛いだけで終わりじゃない?」
「確かに!!!!」
「バカなの?」
「へへへ……あ、そうだ、今日の放課後空いてる?」
「あー、うん空いてる。ってかうちくる?」
「いいの!?」
「だって、綾香だけお泊まりしてないじゃん。来れば?」
「ち、ちょっと待ってね」
綾香は即座にスマホを取り出すと母親宛てに連絡を打つ。
ここで勝手にお泊まりなどすれば、また三日三晩の修行を課せられかねない。
切実な願いであることをアピールするべく、母に何度も謝りをいれつつ願いを打ち込む。
「お袋さん?」
「うん……あ、帰ってきた。うん、いいって!」
「じゃー終わったらそのままうちこいよ。着替え貸してやるからさ」
着替え。貸す。
妄想がはじまる。
イヴの衣類を切る綾香の姿が目に浮かぶ。
イヴは綾香よりも身長が高い。ゆえにきっとシャツなんかもワンサイズ上のことだろう。
イヴのシャツを着る綾香。
だぼだぼなシャツを纏う綾香の姿。
それ即ち、彼シャツならぬカノシャツッッッ!!!
「是非貸してください」
「綾香鼻血でてるよ」
「え、あ! どうしよう!!!」
「まったく。ほれ」
女の子らしいピンク色のハンカチを取り出すと綾香の鼻を拭う。
(あぁ、なんかこういうの久しぶりだな――)
「少し抑えてな。でも、綾香と二人っきりって久しぶりだな」
「そうだね、前のお泊まり以来かな?」
あの時の記憶は――あまり思い出したくないものである。
綾香のうちにイヴが泊まりにきたとき、あのときは大したことが出来なかったように思う。
赤マムシは見つかるし、妹に風呂はとられるし、ほとんど漫画を読んでるイヴを見ていた気がする。
しかし。思い出す。
それだけではないいい思い出もある。
「あの時は漫画読んでばっかだった気がする」
そう、漫画。
イヴが漫画を読んでいるときのことを思い出される。
あの時は、イヴのおっぱいと太ももに挟まれて、楽園の扉が開いていた。
あの素晴らしい愛をもう一度――。
「そうだったね……あ、あのさ」
「なに?」
「マンガ読んでいいから……その……」
もじもじ。
「また挟んでやろうか?」
小悪魔が、笑う。
「う、うん。お願いしたい、かな、なんて。あはは……」
なんだかこういったやりとりが久しく思えて、綾香は照れてしまう。
あの幸せをもう一度。あのサンドイッチをもう一度。
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