31あなた制服が乱れてますよ!
六道イヴは毎朝早くに起きると掃除とトレーニングをすることから始まる。
しかし、この日イヴは久方ぶりにそれらをこなすことが出来なかった。
記憶の中に、胸の中にあるのは凛のことだ。
お泊り会をしたあの夜。
凛は軽いキスをして、恋愛対象としてイヴが好きだと告げた。
プロテインとコーヒーを混ぜたものを飲みながら、朝からぼんやり。
すでに制服には着替えているが、中々動き出せずにいる。
あんな風に告白されて、震える姿を見せられて、胸に響かないはずもない。
(恋愛対象として、好き、か……)
嫌な気持ちはしない。
前世が男だったせいもあり、男と恋愛する気などさらさらない。
むしろ凛に告白されて、素直に言ってしまえば嬉しく思う。
頭の中は、凛のことでいっぱいだった。
可愛らしい顔つき。
可愛らしい甘えた声。
すぐにボディタッチをしてくる手。
重なった唇。
いつも黒いにゃんこのパーカーの姿をしている。
あの黒いにゃんこパーカーは凛そのものを表していると思う。
甘えん坊で、構って欲しくて、すぐに抱き着いたり鳴き声をあげたり。
時計を見る。
そろそろ出ないと遅刻になってしまう時間だ。
でも、今日凛に逢ったらどのような顔をすればいいのだろう。
「考えてもしかたねーか」
答えはださなくていいと言った。
付き合ってと言われたわけではない。
あの告白は、ただ止められない気持ちをぶちまけてしまっただけ。
そう、ぶちまけた気持ちが、イヴの胸をえぐってしまっただけ。
家を出て、バスに乗り込む。
ピロン。
『イーちゃんおはよ』
凛からのラインだ。
『おはよ』
『この前のお泊まり楽しかったよ。今度はうちくる?(爆笑してる絵文字)』
『マジ』
『いきたい』
『じゃ、今度はうちおいで♡』
『出来れば』
『今度は二人きりがいいな♡』
『学校で逢おうね』
追撃を許さず、凛のラインが連投される。
イヴの答えなど待っていないように。
それは焦りか、それとも。
(二人きりでお泊りか……)
綾香無しでお泊り。
凛の気持ちをしっている以上、二人きりでお泊りというのは、どうだろうか。
だが、いきたい気もするし、いきたいと言ってしまった。
バスの窓から流れる景色を見る。
視界には、窓の景色は映らない。
ぼんやりとしすぎてしまった。
いつの間にか、降りるべきバス停を通り過ぎてしまっている。
イヴははっとして、急いで停車ボタンを押す。
なんとか一つだけ過ぎた箇所で降りることが出来た。
しかし、もう走っても間に合うかどうかの時間だ。
肩にかけていたスクールバッグを背負い、イヴは全速力で駆ける。
制服を乱し、スカートを豪快に揺らしながら。
なんとか間に合いそうだ。
もう学校は見えた。あと少し走れば校門にたどり着く。
(ったく、ぼんやりしすぎたな! あーだらしねぇ!)
胸のうちに唾を吐く。
やっと校門が見えたと思うと、そこには一人の女性生徒が佇んでいる。
見慣れない生徒だった。
キッチリすぎるその見た目はまるで制服ではなく、清楚を着ているかのようだ。
(誰だ、あいつ? ま、いいか……)
凛でも綾香でもない。
長いピンク色の髪をポニーテールにした女の子。
腕には腕章がしてある。
少し速度をゆるめつつ走る。
なんだかポニーテールがイヴを見ている気がする。
「ちょっとあなた。金髪のあなた」
呼び止められた。
「あ? なに、俺?」
「そう、あなたよ。待ちなさい」
「今急いでるんだけど?」
もう今にもチャイムはなりそうである。
無遅刻無欠席を達成しているイヴは、さっさとクラスへと行きたいのに、ポニーテルはまるで盾のようにイヴを阻む。
「ダメです! あなた何ですか、その制服の乱れは! 制服を正してから登校してください!」
「今急いでるっていったよな?」
「ダメです! 知らないんですか? 今週は風紀向上ウィークです。ちゃんと制服を正してください」
確かに、イヴの制服は乱れてはいた。
第二ボタンは開いているし、スカートは短すぎる。走ったせいでシャツはよれよれだし、リボンはだらしなく垂れさがっている。
「めんどくせぇな。いいじゃねぇか」
「ダメです! 風紀委員として見逃せません!」
「今回だけ。な? 明日からはちゃんと着てくるからよ」
通りすぎようとするイヴの腕を、ポニーテールが掴む。
「ダメったらダメです! 制服の乱れは学校の乱れ、学校の乱れは地域の乱れですよ!」
ぎゅぅと腕を掴む力が強くなる。
「いってーな! なんなんだよお前!」
「お前ではありません。風紀委員の鈴木千鶴です。さぁ、制服を正してください」
「いいじゃんか少しくらい!」
「ダメです! スカートは短いし、第二ボタンは開いているし! ほら、ちゃんと閉めてください!」
千鶴の手が胸へと延びる。
(触られるッッ!?)
凛と綾香と長く過ごしてしまっていたせいなのか、伸びた手に胸をもまれると勘違いしてしまう。
さっと身を引くと、千鶴は余計に眉間に皺を寄せている。
「なんですか!」
「お前こそなんなんだよ!」
「私は第二ボタンをしめてあげようとしただけです!」
「……もういいだろ!」
「強情な人ですね!」
「お前だってそうだろうが!」
「私は委員としての務めを全うしてるだけです!」
ぎゃぁぎゃぁと騒ぎだす二人。
そんな二人を見る人影があった。
凛である。
ゆっくりと歩いて登校していた凛は、校門近くで騒いでいる二人を見る。
朝から何をやっているんだ、と思いながら見れば一人は愛しの――この前告白してしまったイヴである。
(イーちゃん!♡)
そして、その相手は、誰だか知らぬピンクポニテ。
(なんだ、あのピンクポニテは)
騒いでいた二人。
イヴは大声で怒鳴ると、その場を去ろうとする。
千鶴が『待ちなさい』と叫んでイヴの手を取る。
(朝から何やっているんだろう……あ、そういえば風紀向上ウィークとか言ってたような?)
それは突然すぎる殺気だった。
やりとりを見ていた凛の背後――
いきなり闇に包まれたような感覚と、凍てついた風が通り過ぎる。
(殺気!?)
恐る恐る凛は振り返る。
そこにいたのは――
綾香。
「殺してやる……」
ドス黒い闇に染まりあがった綾香がぶち切れている。
(え、なんでブチきれてるのこの子。イーちゃんが絡まれているから?)
ゆらり暗黒のオーラを醸し出しながら歩く綾香。
その殺気は間違いなくあのピンクポニテへと向かっている。
凛のことなど気にするようすもなく、綾香がピンクポニテへと近づく。
ミシ―――……
ピンクポニテの肩を、綾香が掴む。
「い、痛ッ!? な、なにするんですか貴女!」
「あ、綾香」
イヴとピンクポニテの顔が綾香を向く。
その表情は憤怒の闇に染まり、純粋な殺気のみで構成された眼光がピンクポニテに襲い掛かっている。
「お前を……
殺すよ……
ここで……
今」
「え!?」
(何いってんだ綾香!?)
チャクラ、念、オーラ、魔力、気力。
すべての力といえる力が、綾香の腕に宿る。
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