30あなたと寝たい
綾香が死んでいたせいで、時刻はもうすでに0時を過ぎている。
一安心できたのもあってか、眠気が襲う。
「そろそろ寝るか」
イヴの言葉に、すかさず凛と綾香がベッドにダイブする。
ベッドはイヴ用のものである。つまりは一人用のベッド。
さすがにそこに三人寝るというわけにはいかない。
「二人そっちで寝る? 俺布団もってくるよ」
さっさと部屋を出ると、ゲスト用の布団を持って床に敷き始める。
イヴが布団のほうに横になると、すかさず二人も布団にもぐる。
「ベッド使っていいよ?」
「「こっちで寝る」」
「そう? じゃぁ、俺ベッドに……」
ザンッ!
布団にいたと思った二人がベッドにいる。
その速さはもはや――音を置き去りにしている。
ベッドにいたと思えば布団に、布団にいたと思えばベッドに。
イヴが移動すれば、条件反射的に身体が超高速で動く。
「お前ら息合いすぎだろ」
「違うの、イーちゃんと寝たいだけ♡」
「私もただイヴと寝たいだけだもんっ」
「はーしょうがねぇなぁ」
イヴは部屋を出ると、ゲスト用の布団をもう一つ持ってくる。
部屋には無駄なものが一切ないために布団を二つ敷く程度のスペースはある。
「俺真ん中に寝るから、左右にお前ら寝ろよ。それでいいか?」
争う必要はない。
これならば二人ともイヴの隣で寝ることが出来る。
故、凛も綾香もその提案を承諾する。
平和的解決。
なんとなく、こうなるだろうなぁと思っていた。
今日一日二人は争ってばかりいた。だから、きっと寝るときもある程度は暴れるのだろうとイヴは予想していた。
これならば二人を同時に相手にすることが出来る。
それに、三人一緒に寝るなんて、修学旅行みたいでちょっと楽しくもある。
灯りが消える。
右には綾香、左には凛。
「なぁ、お前らって好きな人いる?」
暗い部屋で、イヴはそんなことを聞く。
修学旅行気分なイヴは、きっと修学旅行ならばこういった会話をするのだろうなと思い、会話を振ってみた。
「私は勿論イーちゃんだよ♡」
「私だってイヴが好き!」
「へへへ。ありがとう、俺も二人とも大好き」
「えへへへ♡」
「イヴ……」
照れる顔二つ。満足げなイヴの顔一つ。
「でもさ、俺が聞きたいのはそうじゃなくてさ。男子で好きなやついないのかってこと」
(え?)
(はい?)
この後に及んで何を聞いているのか。
凛も綾香も真顔になってしまう。
勿論二人は恋愛対象としてイヴのことが好きだ。
しかし、その気持ちはイヴには届いてはいないのだ。
「いないの?」
とイヴ。
「いるわけないよ、あたしはイーちゃんだけが好きなの♡」
「私もイヴだけだから……」
「そっかぁ、なーんだ」
ちょっぴりつまらなそうなイヴ。
女子高生ならばこういった話で盛り上がると思っていたイヴは少しだけ残念そうだ。
「ってかなに、イーちゃんは男子で好きなのいるの?」
「まさか、いるわけない(前世男だし。男は無理だろ)」
「良かったぁ……話の流れからいるのかと思った……」
綾香も凛も胸を撫でおろす。
もしこの場でイヴに好きな男子がいるなんて言われたら――
二人は考える。
多分……
(殺すな)
(〇すな)
綾香の殺すはその男子を。
凛のその〇すはイヴを。
だが、それ以上先は無駄な妄想。
イヴにはそういった人がいない。きっと今言った言葉も正味であると感じられた。
真剣な気持ちが伝わっていないのは残念であるが、可能性がないわけではない。
恋に落ちた綾香と凛。
その二人は今、また共通の思考へと至っていた。
((だったらこちら側に落とせばいいだけ))
会話が減り、次第に言葉とぎれとぎれになる。
やがて、寝息が混ざり、部屋の中には沈黙だけが訪れた。
遅くまで起きているのを得意としている凛。
凛は寝息が聞こえてきたのを確認すると、イヴの脇腹を突いた。
突かれ、まだ起きていたイヴは凛のほうへと振り向く。
「どした?」
眠る綾香を起こさぬよう、小さく囁く。
「イーちゃん、あのね」
「?」
暗いから見えはしない。
でも、その時の凛の表情はこれ以上になく乙女だった。
「あのね、さっきのお話なんだけどね」
「さっきの……男子の?」
もしかして好きな男子がいるのかと、イヴの顔は期待に明るくなる。
「恋愛のお話。私ね、好きな人がいるの」
「え、だれだれ?」
ちゅ。
「今、ちゅーした人」
「!?」
「凛ね、今ちゅーした人のことが好きなの。恋愛対象として」
「……」
なんて答えればいいのか、イヴには分からなかった。
でも、凛だってそれは覚悟の上。
「今は答えなくていいし、付き合ってなんて言わない。
でもね……凛ね、好きって気持ちがとまらないの」
「凛……」
「いきなりちゅーしてごめんね」
「……」
振り向いていた顔が、背を向ける。
見えないはずなのに――凛の背中が酷く小さく感じる。
きっと、きっと勇気を振り絞ったのだろう。
凛の身体は小さく震えている。
背を向けるのはきっと顔を見たくないから、見られたくないから。
今は答えはない。イヴはなんて声をかけていいのか分からない。
けれど。
小さく震える背を、そのまま見ていることはもっと出来ない。
だから。
ぎゅ。
「……」
「イーちゃん……」
「おやすみ、凛。このまま……寝てもいいか?」
震える体のまま、頷く。
(イーちゃん……イーちゃん、凛ね、イーちゃんのことが大好きなの。
誰よりなにより大好きなの)
心の中なら何度でもいえるのに。
口に出していうと、どうしてこんなに勇気がいるのか。
どうして、涙が零れてしまうのか。
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