26ホラー映画はなんのために存在するか
なにも無かった部屋にDVDプレイヤーを用意すると、イヴは部屋の雨戸を閉めた。
真っ暗になった部屋。三人で毛布を被ると再生ボタンを押す。
もうすでに凛は戦闘態勢モードに入っている。
毛布に包まれたのを良いことに、イヴの腕を思い切り抱きしめると肩に頭を寄せている。
ならばと綾香も負けずにイヴの腕を抱きしめると、同じように頭を寄せる。
暗い部屋に不穏な音が響く。
ホームビデオ風の映像が始まる。
とある撮影隊が田舎町の心霊スポットである廃病院にたどり着いている。
撮影隊はふざけながら撮影をしているが、少しずつ怪奇現象に襲われている。
「そういえば昔こんなの流行ってたね」
「綾香見たことあるの?」
「いや、無い……でも、見たいなと思ってた(大ウソ)」
「イーちゃん、怖いからもっとくっついてもいい?♡」
「好きにしな」
やった、と凛はスカートを捲るとイヴの手のひらを自分の太ももに挟む。
腕には谷間を押し付け、腕の先は生足太ももでホールド。
(イーちゃんのお手々が太ももに♡ イーちゃんの綺麗なお手々があたしのあんよ触ってる♡♡♡)
もはや凛に映画の映像など意識されていない。
自ら挟んだイヴの手のひらを生足太ももに感じると、徐々にその吐息を荒くしている。
毛布に包まれているので、綾香側からは具体的に何をしているのかは分からない。
しかし、その顔がハァハァしながら蕩けそうになっているのを見れば、なんとなくおかしなことをしているのだろうと想像がついた。
(このビッチが……なんでそこまで積極的になれんだよ……)
(イーちゃんのお手々♡ イーちゃんのお手々♡)
ハァハァしながら太ももをもじもじさせる。
(あぁ♡ ダメ♡ このまま腰動かしたい♡ イーちゃんのお手々感じたい♡)
最高にドスケベ顔になりつつある凛。
場面は真っ暗なシーン。
撮影隊からはぐれた一人が彷徨っている。
『おぉ神よ……神よ……』
救いを求める映像内の人物。
廊下を彷徨っていると、はぐれたうちの一人と遭遇している。
『おーいおーい!』
しかし、出会った人物は振り返ると場違いな笑顔を向ける。
『あれ、その顔……うわああああああああああああああああ』
笑顔がドロドロに溶けると、グロテスクな顔を震えさせながら襲い掛かってくる。
「うわ!」
「ひゃ!?♡♡♡」
驚いたイヴは思わず手に力が入ってしまう。
ホールドされていた手のひらが凛の太ももに爪を立てる。
ピりりとした刺激が肌に伝わると、凛は余計に強く手を太ももで挟む。
(らめ、らめ、らめ♡ イーちゃんのお手々感じたい♡ もっと深く感じたい♡)
より深く奥に感じようとイヴの手を導く。
グイ。
イヴの身体が綾香のほうへと抱き寄せられる。
お手々は太ももから抜け、ホールドが解除される。
(!? 綾香ちゃん、何すんの!!!!!!!)
(さっきからピンク色吐息吐いて発情してんなよクソビッチが!!!! ここからは私のターンなんだよ!!!!!)
(ううううう)
やりすぎピンク凛が何をしていたか、綾香には分からない。
でも毛布越しでも足がもじょもじょしているのは分かったし、荒い吐息はエロいことをしているに違いないと思った綾香の回避行動である。
負けないと宣言している。
このようなチャンスを凛にくれてやるわけにはいかないのだ。
ここからは綾香のターン。
綾香は抱き寄せたイヴの頭に自分の顔をくっつける。
凛ほど過激なことは出来ないが、鼻先にはイヴの頭がある。
深呼吸してイヴの香を存分にゼロ距離で味わう。
「頭臭くない?」
「超絶いい匂い」
「良かった」
むしろ先ほどの筋トレのおかげでちょっぴり汗の香も感じる。
臭くなどない。むしろイヴから排出された汗の香など、綾香にとってはご褒美にしかならない。
(イヴから出た液体が私の中に挿入ってきてる……これはもう、もしかしたらもう!!!)
妊娠不可避なのでは???
と思う綾香。
そんなことは当然ない。
(綾香ちゃん……そんなにイヴの香り堪能して……何かおバカなこと考えてそう……)
(すまんな凛。私がイヴの花嫁になるからよ)
ドヤァ。
(何イキってんだおかっぱ……)
イヴの身体を抱きしめながら、引き続き深呼吸。
深すぎる呼吸はまるで細胞のひとつひとつでイヴの香りを楽しんでいるようだ。
(イヴの香り! イヴの香り……グッスメウ……グッスメえええええう!!!)
(顔やべぇなおかっぱ)
綾香の歪んだ顔に引きつつ、凛は再度仕掛けようと手を動かす。
イヴの背中にもぞもぞと手を伸ばす。
プチ。
「何やってんの凛?」
「ホック外したの♡」
「なんで?」
「なんでも♡」
何故ブラのホックを外したと、イヴは凛に顔を向ける。
しゅるり――。
凛の手がイヴのTシャツ内部へと潜り込む。
「凛くすぐったい」
「ダメ?」
「どこ触ってんだよ」
しゅるり、しゅるり。
蛇のような凛の手が昇る。
そして――蛇は大きな獲物を見つけると口を開いてカブりつく。
たどりついたのは――イヴの――。
「ちょっと凛!」
「怖いからちょっとだけ♡ こうしてると落ち着くんだもん♡」
「もー! 凛も綾香もさっきからなんなんだよ! 映画見ろよ!」
二人とも映画に集中せず、自分のことばかりにかまけているとイヴは少しばかり腹が立った。
凛の手をTシャツから抜き出し、抱き寄せていた綾香の身体から離れる。
「お前ら怖いってより、私で遊んでるだろ? 分かるんだからな。ちょっとはじっとしてろよ!」
(あぁ、イヴの香りがぁ……涙)
(ちょっとやりすぎちゃったの……)
ホックを付けなおし、イヴは腕組をすると映画に集中している。
さすがにイヴに叱られると二人はそれ以上どうこうしようという気持ちはなくなっている。
相手に張り合うために行動をするのは、イヴにとってはただ迷惑な話である。
結局エンドロールまで、二人はイヴに一切の手を出すことはなかった。
部屋に明りが灯る。
イヴの顔を見て見ればふくれっ面になって不機嫌そうだ。
「あ、あのイヴさん……」
恐る恐る尋ねる綾香。
「イーちゃん……」
ポロリ。
イヴの目から涙が流れた。
「!?」
「イーちゃん!?」
「わ、私、今日楽しみだったのに……二人とも……た、楽しんでないなって思って」
わなわなと震えながら涙声になるイヴ。
零れた涙をぬぐっても、また次の一粒が頬を伝う。
「さっきから……ふ、二人とも……映画より……なんていうか、わ、私のことただ取り合ってるみたいで……」
「ち、違うのイヴ!」
「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」
「だ、だってさ……凛がちょっかい出してくると……綾香もちょっかい出してきてさ……
変なこと……ばっかりしてくるし……」
強がって表情を強くするが、零れる涙は悲痛にあふれている。
(あああああああああああああああああああああ、やっちまったああああああああ!!!!)
(イーちゃんが泣いてる!!!!! あ、あ、あ、ああたしがイーちゃんを泣かせてしまった!!!!!!!!)
「楽しみに……してたのに……楽しいの……お、俺だけなのかなって……」
なんていうことをしてしまったのだろう。
二人の心には、この時初めて罪悪感が芽生えた。
相手に負けたくない一心から――自分たちはイヴをもののように扱ってしまっていた。
イヴの気持ちなんて考えず、ただ相手に負けなくないという気持ちを優先してしまっていた。
くすん、くすん。
極刑である。
もう綾香も凛も地獄に落ちるしかないと思えた。
「ご、ごめん、イヴ! 私調子乗りすぎてた、本当、本当ごめん! 凄い楽しみにしてたのに、本当にごめんなさい!!!」
頭を床に叩きつけながら土下座する綾香。
「イーちゃん、泣かないで。あたしもすっごく楽しみにしてたんだよ。やりすぎちゃってごめんなさい。もうしないから、ね?」
凛も頭を下げる。
「ほ、本当にお前らも楽しみにしてたのか……?」
「「もちろん!」」
「もう……変なことしない?」
「「はい」」
「……次変なことしたら指詰めろよな」
「「何本でも詰めます!!!!」」
「じゃぁ……赦す」
くすん。
最愛の人を、恋する相手を泣かせてしまうなど。
言語道断である。
もし次イヴを泣かせるようなことがあれば。
二人は指を見る。
詰めなければならないだろう。
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