20争いとはそれまでの積み重ねである
その日の放課後、イヴは図書委員のため図書室を訪れていた。
受付カウンターに席を下ろし雑誌を読み漁るイヴ。その隣には綾香の姿もある。
(よし、今日は前園はいない……それにもし来たとしても受付カウンターに椅子は二つ!
もう受付に座る空きはない!)
まだ登場してもいない人物に対し、綾香は勝利宣言をする。
凛も今日はイヴが図書受付をしているということは知っているだろう。
だが、今更来たところでもう遅い。
イヴの隣はすでに綾香が独占っている。
しかし、凛はやってきた。
あいかわらずの黒いにゃんこパーカー姿の凛は受付にイヴの姿を見ると、笑顔で手を振っている。
(きたな泥棒猫! だが、イヴの隣はすでに私のものだッッッ!!!)
勝利の眼差しをプレゼント。
勝った。
(綾香ちゃん相変わらずイキってるなぁ)
バッグから本を取り出すと、イヴに渡す。
以前図書室で借りた本を普通に返している。
「凛読むの早いな」
「ラノベだったしね。3時間もあればすぐ読めるし」
「いや、早くない? 俺一日かかるよ」
「そう? でもスローリーディングのほうがよく理解できるんだよ」
「へー、そんなもんなのか」
「うん。じゃ、あたしちょっと本見てくるね」
そういって新刊コーナーへと向かう凛。
(なんだ……やけに素直というか……こちらを気にしていない?)
挑発的な視線を送ったのに、凛は微動だにしない。
何故。
すでに隣を取っているから、早々に諦めたのか。
綾香は考える。
(いや、凛がこれで終わるはずがない。何か――何か仕掛けてくるはずだ)
名探偵にでもなったつもりで、綾香は考える。
新刊コーナーに向かった凛はごくごく普通に本を選んでいる。
他の生徒と変わらない。ただ図書室に本を借りにきた生徒に思える。
(今日は不戦勝か? フッ、どうやら私も成長しているようだ……)
確実な勝利。確信に、綾香はフフフと笑みを零す。
(綾香ちゃん、あんなわざとらしく隣に座っちゃって……。
今頃勝ち誇った気分でいるんだろうなぁ)
チラリ綾香のほうを見る凛。
凛の思った通り、綾香は笑っている。勝ち誇ったように笑っている。
(でもね……)
本を手に取る。
入ったばかりのハードカバーの本だ。
(勝ったのは綾香ちゃんじゃないんだよなぁ)
すでに凛も勝利を予感していた。
そう、全ては思惑通り。
図書室にイヴが来ることは勿論把握している。
きっと綾香も来ることだろう。
きっと綾香ならば、こちらに対抗してイヴの隣に腰をかけていることだろう。
受付カウンターの席は二つしかない。
そう、二つしかない。
つまり、綾香が座れば席は埋まる。
だから、勝てる。
(バカだなぁ……綾香ちゃんは♡)
勝利に顔が歪む。
全てが計画通りに進みすぎて、凛は悪魔のような表情を浮かべる。
瞬時に顔を切り替え、本を手に受付へと向かう。
「イーちゃんこれ借りてくね」
「おう、紙書いといて」
さっさと紙を書くと、凛は機嫌良さそうに受付の中へと入ってくる。
このまま別の席に行くか、もしくは帰るしかない、そう思っていた綾香は中へと侵入してきた凛に顔を曇らせる。
(バカな! もう席は埋まっている……! こいつっ、何をするきだ……!?!?!?!?)
焦る顔。
凛の顔はこれ以上ないくらいの輝かしい笑顔。
「お席借りるね♡」
(借りる……ッッッ!?!?!?!? こいつ何処へ座るつも――)
座ったのは――……
イヴの膝の上ッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!
「お邪魔します♡」
(これが狙いかああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!)
「おーい、邪魔だよ」
「やん、凛ここのお席がいいの♡」
(メス豚がああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)
「ったく。まー凛軽いからいいけど」
「ありがと♡ このまま読んでていい?」
「かまわねーよ」
(EVEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!?!?!?!?!?!?!?!?!??)
さっそく借りた本を読み始める凛。
イヴもイヴで凛を気にせずに雑誌を読んでいる。
ほんのわずかな、ほんのわずかな勝利の味は一瞬にしてクソ苦い敗北の味へと変わった。
絶望の表情で二人のイチャイチャを見る綾香。
思わず口はカタカタと震え、頭の先からは血の気が引いていく。
ましてや読み始めたのは分厚いハードカバーの本である。
すぐに読み終わることはないだろう。ましてや綾香というライバルを目の前にして、動くことなどありえない。
「綾香ちゃんは本読まないの?」
「えっ、あ、私は」
「ここ図書室だよ? 本を読むところだよ?」
「そ、そうだけど……」
「綾香ちゃん、ここに何しにきたの?」
最高で最低な笑顔が綾香の身体に容赦ない銃弾を浴びせる。
まるでその一発一発がマグナムのように身体を破壊していく。
もう綾香のライフは0である。
「ん、凛、ちょっと退いてくれる?」
(!)
(!?)
動いたのはイヴだった。
「お前乗っかってきたからトイレ行きたくなっちゃった。ちょっとトイレいってくる」
「え!?」
(よっしゃあああああああああ!)
言葉を残し去っていくイヴ。
茫然とする凛、戦いはこれからだと闘志を燃やす綾香。
二人の視線が交差する。
もう視線だけではない。イヴが去ったのをいいことに、二人はどちらともなく正式な宣戦布告へと踏み切る。
「前園……戦争だな、戦争でいいんだな?」
「綾香ちゃん、陰キャがイキってもいいことないんだよ?」
何もしていないわけでは――なかった。
綾香はスマホを取り出すと、イヴとのラインを開く。
写真でのやりとり。そこにはイヴの写真がたくさん保存されている。
凛に見せたのは、イヴの入浴シーンの写真である。
(!?)
「貴女……こんな写真もってる? 持ってないよね、イヴの入浴写真」
(こいつ、陰キャのくせにどうやってそんな写真を送らせた!?)
思わず口元を抑える凛。
動揺している。ならば、凛はこの手の写真を持っていないということ。
綾香のターン! ドロー! イヴの筋トレ写真!
「こんな写真も……持っていましてね。フフ、普段からわたくし、こんなやりとりをイヴとしてしましてね……」
写真によるマウント合戦である。綾香、何も学んでいない。
「ククク……哀れな陰キャ綾香ちゃん……その程度の写真!!!」
凛のターン! ドロー! 汗だく筋トレ写真+お姫様抱っこのコンボ!
「ぐっ……それはその写真は……!」
いつかお出かけしたときに撮ったプリクラでの一枚である。
ほっぺにちゅーした凛、笑うイヴ。
以前見ていた写真ではあるが、その写真によるダメージは健在だ。
「こんの糞豚ロリ野郎……!」
「おかっぱ陰キャぁぁぁぁ!」
ゴゴゴゴゴゴゴ――……
「ふー、すっきりした。お前ら何やってんの?」
すっきりした顔したイヴが戻ると、二人はさっとスマホを隠した。
とてもイヴの写真を見せあってマウントを取り合っていたなんて言えるわけがない。
「なぁなぁ、せっかく三人集まったし、このあとどっか行かない?」
三人集まればより楽しい。オリエンテーションの記憶新しいイヴはきっと今日も楽しい日になるだろうと予感していた。
「うん、行く♡」
「どこでも行くよ。イヴとなら、どこへでも」
初戦はドロー。
だが、戦いはここからである。
(イヴは私のものだ!)
(イヴは私のものだ!)
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