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第12話 VSプレイヤーキラーペロ その1

 さて、どうするか――


 ミントが転移石を使用して街に戻ったのを確認した後、アックスは森に身を隠しながらプレイヤーキラーペロを倒す方法を考えていた。

 互いのレベルは同等。しかし、装備は圧倒的にこちらが劣っている。というか半裸で防具の防御力はほぼゼロだ。

 そうなると勝負はプレイヤースキルにかかっている……

 向こうの武器は遠距離武器である弓矢。対してこちらの武器は近接武器である斧だ。

 もしここが平原などの障害物のない開けた場所であったなら遠距離から狙い撃ちされて確実に負けていただろう。

 しかし、幸運なことにここは森の中だ。

 身を隠す場所はいたるところにあり、勝機はこちらにある。

 木々を盾にしながら遠距離攻撃を掻い潜り――


「あっはっはァ、懐に飛び込んで攻撃すれば勝機はある……なーんて考えてるんだろうなァ!?」


 ズガガガガガガッ


 先に攻撃を仕掛けたのはペロであった。

 アックスの隠れている木の辺りに大量の矢が降り注ぎ土煙のエフェクトが舞う。

 放った矢が空中で分裂して敵に降り注ぐ範囲攻撃スキル「アローレイン」だ。


「隠れてないで出て来いよおおお? ビビッてんのかぁあああァ?」


 樹木の障害物が盾になっているおかげでこちらにダメージはないが、挑発に乗って迂闊に飛び出せば穴だらけにされてしまうだろう。

 しかし隠れているだけではやられる――

 アックスは攻撃が止んだタイミングを見計らってペロの声がした方に向かって、投擲スキル「トマホーク」でハチェットを投げつけた。


 ズガッ


 ハチェットが木に突き刺さる音がアックスの耳に届く。


「あっはっは、リスナーの皆さん今の無様な攻撃を見ました? あの原始人、てんで見当はずれの方向に攻撃しましたよ」


 ペロの高笑いが森に響く。

 そしてここにはアックスとペロしかいないというのに、ペロはアックスではない誰かに向かって話しかけている。

 リスナー……

 その言葉からアックスはペロが実況プレイヤーなのだと理解した。

 奴はプレイヤーキルを実況中継してリスナーと楽しんでいるのだ。

 初心者狩りだけでも悪趣味だというのにとことん腐った奴だ。


「クズが……」


 アックスは実況プレイヤーという輩が大嫌いだった。

 実況プレイヤーとは何度か一緒にパーティーを組んでダンジョン攻略をしたことがあるが、実況プレイヤーは一緒にパーティーを組んでいるプレイヤーとダンジョン攻略を楽しむのではなく、実況を見ているリスナーとダンジョン攻略を楽しむのだ。


 ある日のこと――ダンジョン攻略のためにパーティーメンバー8人が集まったのだが、その中に実況プレイヤーが1人いた。

 攻略のための作戦の相談中もリスナーとの会話に集中して作戦を全く聞いておらず、ダンジョンに突入したら案の定隊列を乱して全滅といった有様だった。

 アックスはいい加減にしろと実況プレイヤーに実況をやめるように言ったのだが、言うことを聞かず喧嘩になってしまった。

 実況プレイヤーはパーティーリーダーによってパーティーからキックされたのだが、雰囲気が悪くなりそのまま解散という流れとなった。

 その後――しばらくして、その時のダンジョンに突入して全滅した実況動画が短く編集されてアップされた。

 タイトルは「空気を読まない自分勝手な下手糞斧のせいでPT全滅実況動画まとめ」という悪意のある酷いものだった。

 通常、ダンジョン攻略におけるオーソドックスなパーティー編成はタンク2人、アタッカー4人、ヒーラー2人の8人パーティーである。

 しかし、この時のパーティーではウォーリアであるアックスがアタッカー役として参加の変則パーティー編成であった。

 パーティー編成に適した作戦が立てられダンジョン攻略に臨んだのだが……

 まとめ動画を見るとダンジョン攻略に失敗したのは空気を読まないウォーリアがアタッカーとして参加したせいだということになっていた。

 編集された動画の中でアックスは味方の遠隔攻撃を邪魔したあげくフレンドリーファイアで死亡する下手糞斧として映し出されていた。

 この動画のせいでアックスは晒し者になり、多くの視聴した人々に笑い者にされ、下手糞斧として知られるようになった。

 そしてパーティーへの参加を拒否されることが多くなった。

 ある日のこと、アックスと同じクランのメンバーがダンジョン攻略パーティーに入ると、あの下手糞斧と同じクランなのかと言われて参加を拒否される出来事が起こった。

 アックスはその話を聞いて、これ以上メンバーに迷惑をかけられないとクランを抜けた。

 そのようなことがあって、アックスはソロでのプレイが多くなり、たまに野良パーティーに参加するくらいのボッチプレイヤーになっていた。


「それじゃ、そろそろ遊びはやめてサクサク殺すとしましょうかー! え? この斧使いは有名な下手糞斧だって? へー」


 ペロはリスナーと会話を続けている。

 会話の内容からアックスのことを知っているリスナーがいたようで盛り上がっている。

 アックスは実況プレイヤーが大嫌いだ。

 しかし、聞こえてきた嫌いな実況の声のおかげでペロの正確な位置を把握することが出来た。


 下手糞斧――

 何とでも言えばいい、好きなだけ笑えばいい――

 笑っていられるのも今だけだ――

 お前はその下手糞斧に殺されることになるだろう――


 アックスは斧を握り締めて反撃を開始した。

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