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 まだ少し眠そうな顔を見せつつも、ミルクティーを飲むディルミック。ぼけっと見ていたい気持ちがないわけではないが、ディルミック的にはあまり見られたくはないだろう。起きてすぐ、何かを探す仕草をしていたし。多分、あれは仮面を探していたんだろう。寝ぼけてすぐって割と混乱するよね。

 わたしからしたら、ディルミックが紅茶を飲んでいるところなんて、何かの映画のワンシーンにしか見えないのだが。


 お茶と言えば。


 今、次に暇な時を聞くのにいいタイミングなんじゃないだろうか。ディルミックの顔色はよくなっていて、多少は疲れが取れているみたいだし、午前中は休みらしいし。サッと聞けば大丈夫だろう。


「ディルミック、近いうちに暇なときはありますか?」


 今だと思って聞いてみたが、生憎と、いい返事は返ってこなかった。


「次にまとまった休みとなると……二か月後になるな」


 貴族って意外と忙しいんだな……? 漫画だと悪役貴族とかで、お仕事しないのに税金は巻き上げて贅沢三昧……とかなのに。

 それともディルミックが働き者なのだろうか。


 うーん……。実際は違うだろうけど、ディルミック一人で仕事をしているようにしかわたしには見えないしなあ。醜いは悪だと決めつけられてしまうと、共に仕事をする仲間を見つけるのにも苦労するのだろうか。


「また視察ですか?」


「いや、一か月半後に庭園と温室の一般公開があるんだ。二週間ほど。それが終わるまでは準備等で少し忙しい」


「温室……」


 そういえば、ここに来たばかりの頃、一度温室に足を運んだっけ。確かに豪華で、植物園ばり、とはいかずとも、かなり広かった。


「珍しい植物も多いからな。それなりに人が来る」


「次から次へと大変ですねえ……」


 ディルミックの口ぶりだと、元から決まっていたような感じだ。わたしが口を出すことではないと思いつつも、こんなに仕事が詰まっていたら言いたくもなってしまう。夜中まで働く、という風ではないから休息は取れているだろうが。


「まあ、今は毎年この時期だからな。普段なら婚約パーティーがないから、もっとゆっくり準備できたんだが」


 確かに、そうか。婚約パーティーなんてそう毎年あるわけでもないだろうし。わたしがここに来たのが、丁度忙しいタイミングになってしまったということか。


 ……ん?


「今は、ですか?」


 なんだかちょっと不思議な言い回しに、わたしは思わず聞き返す。

 育てている植物の都合なのかな、と思ったのだが、ディルミックはとんでもないことをさらっと言った。


「ああ、カノルーヴァ家の庭園と温室は、当主の誕生日付近に一般公開されるのが代々続いているんだ。先代の時代は丁度ロディナが来たあたりに開催していたな」


 ――た、誕生日が近い、だと!?

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