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 わたしとしては、ディルミックが困らないのであれば、共に出席するのはやぶさかではない。

 貴族としての振る舞いを期待しない、という言質が欲しかったのは事実だが、それでもあと何十年と共に過ごすのに、妊娠・出産以外、何もしなくていい、というのが実現されるとも思っていなかった。

 まあ、予想していたよりは早く話が来たなあ、とは思うけど。


「仮に出席したとして、わたしは何をすればいいんです?」


「基本的には僕の隣に立っていれば問題ない。僕の隣にいれば、下手に会話を持ちかけられることもないだろう。もし何か聞かれても、答えられない内容なら、全部僕に丸投げしてくれればいい」


 なるほど。まあ、すぐそばに頼れる人がいるなら、そう怖くもない……か?


「パーティー自体も、最後までいるつもりはないしな」


「え、大丈夫なんです? それ」


「出席して、挨拶と、王子と婚約者の令嬢のダンスを見届ければ、後は帰ったところで問題ない。第一王子と第二王子の婚約パーティーも同じだった。滞在時間は……長くても三時間くらいか」


 三時間ディルミックの隣に立っていればいいのか。それなら難しくなさそうだ。


「分かりました、出席します。パーティーはいつなんですか?」


 わたしがそう言うと、ディルミックはほっとしたような表情を浮かべた。

 ディルミックにとっても、あんまり行きたいパーティーじゃないんだろうな。まあ、周りが全員、自分のことを嫌っている人間しかいない場所に、好き好んで行く人間も、そうそういないだろう。


「パーティーは二か月後だ。ドレスと装飾品はそれまでに用意しよう」


 あ、そっか。そういうのも必要なのか。どこへ買いに行くんだろう、と思っていたら「三日後には仕立て屋を手配する」と言われた。なるほど、オーダーメイド……。

 そりゃそうか。貴族だもんな。既製品は買わないか。


「君がグラベインのマナーを学びたい、と言っていたから、グラベイン文字の講師には、マナー講師も出来る人間を呼んでいる。もしよければ、話を聞いておくといい」


「わ、助かります!」


 ただ突っ立ってるだけでいい、と言われたって、そういうマナーや常識を知っているかいないかでは安心感が違う。ありがたい。

 どんな人なのかなあ。厳しくてもいいけれど、人として馬が合う人だといいな。


「講師の人は、どんな人ですか?」


 試しに聞いてみると、ディルミックは少し考え込むように視線をずらした。


「厳しいが、理不尽な人ではない……と思うが。まあ、悪い人ではないよ。僕の母方の叔母だ」


 叔母さん。思っても見なかった人選だ。

 しかし厳しい人なのか……。上手くやっていけるかな、と少し不安になり、明日のわたしへ、心の中でエールを贈った。

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