表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラが教えるチートの正しい使い方  作者: 秋道通
第二章 不退の騎士と高飛車な竜
75/80

三神が教える助っ人の存在

「っがはぁ!」


 次に感じたのは強烈なGに背中を打つ衝撃。呼吸を忘れていた肺に空気が怒涛の如く流れこむ。


 全身の筋肉が収縮を繰り返し、生を実感するようにして心臓が喘いだ。


 何が起きた?


 霞む視界を強引に開くと、そこに居たのは、見慣れた三神の顔だった。


 身体を何か心地よい暖かさが包んでいる。 


 三神の〝治癒〟のコードが、俺の命を繋ぎ止めているのが分かった。


「な‥‥にが‥‥?」

「黙って」


 うまく言葉の出ない俺を、三神がバッサリと斬り捨てた。


 普通に怒ってらっしゃる。


 そりゃそうか、約束を破って相討ちしようとしていたのが傍目にも丸わかりだったはずだ。けど、それ以外に道がないってこともなんとなく察しているせいで怒るに怒れないのが三神らしい。


「‥‥」


 三神の何か言いたげな視線から逃げるように、俺は顔を横に向けた。


 その先では、ある意味で想像出来た光景が広がっている。


 後からこの礼拝堂に入ってくるような人間は、たった一人しかいなかったのだから。


「来てくれたのか、エリシア」


 そう、つい先ほどまでもう戦えないと嘆いていたエリシアが、赤い髪を靡かせ、翼に炎を纏い戦っていた。


 既にそこに泣いていた少女の面影はない。綾辻と同じ、戦う覚悟を決めた戦士の顔だった。


 今なら分かる。俺が初めてエリシアを見た時衝撃を受けたのは、どことなく俺に似ていたからだ。現実ではなく、前世の俺に。


 綾辻のように才能があったわけじゃない、三神のように別の役割に徹することも出来ない。


 戦いたいわけではないけれど、戦う以外に生きる道の見いだせないまま、歩き続けるしかなかったのだ。二度とあの薄汚れ、退廃した路地裏での暗い生活に戻らないために。


 それでも俺は結局眼帯の女や咲良に手を取って貰わなきゃ進めなかった意気地なしだが、彼女は違ったらしい。


 なんだか俺の人生、俺よりよっぽど格好いい女に溢れている気がするな。嬉しいやら哀しいやら、複雑な気分だ。将来ヒモになりたくなったら誰か責任とってくれんのかね。


「悪い三神、説教なら後で聞くからさ」


 そう声をかけながら、身体の状態を確認する。

よし、大丈夫だ。右腕も十分動かせるくらいには回復した。


「別に怒ってない」

「本当かよ」

「怒ってない」


 そんなぶっすーとした表情で言われても全く信用できないぞ、それ。


 こんな状況だというのに、三神のレアな表情が見れて少し笑ってしまいそうになる。


 自分でも不思議なことに、案外余裕があるらしい。


 身体に力を込めて立ち上がると、まだまだ戦えるとばかりに七色が黒の光を散らした。


「さて、それじゃあ俺も行ってくるわ」


 その瞬間、胸ぐらを掴まれて、すぐ近くに三神の顔があった。剣呑な眼差しに、静かな吐息の声さえ聞こえてくる。


「次はないから」

「お、おお。肝に銘じておく」


 その気迫に押されて、そう答えるしかなかった。


 これ、後で綾辻にも報告されてボッコボコにされるパターンな気がする。


 まあそれにしたってここを生きて出れたらの話だ。


 最後に持って行けとばかりに、強めの〝治癒〟を三神からもらい、俺は騎士長を改めて見つめ直した。


 フレアフィールを展開したエリシアが、うまく〝極光〟を誘導しながら、騎士長の周囲を飛び回っている。


 彼女の火の竜爪も当たれば十分傷を与えられるはずだが、盾が二枚になったとしても流石の騎士長。エリシアの攻撃を巧みに捌いている。


 時間が経てば経つ分だけ不利になるのがこちらなのは変わりない。


 最初からやることは一つだ。


 俺は地を蹴って騎士長へと駆けだした。


よければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!

今回は短めですが、次回はその分長くする予定です!

次回更新日は3/21予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ