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サクラが教えるチートの正しい使い方  作者: 秋道通
第二章 不退の騎士と高飛車な竜
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新感覚が教える真面目な考察

「だから、ちょっと私の身体持ち上げて。このままだと見づらい」


 三神はそう言うと自分のわき腹を指さす。どうやら胴体を掴んで自分の身体を持ち上げろということらしい。


 え、それセクハラで捕まったりしない?


「はやく」


 逡巡する俺を余所に三神が急かす。ま、まあ両者合意の元なら捕まることもなかろう。


 覚悟を決めてその細い腰に手を伸ばそうとした時、隣で話を聞いていたエリシアが口を挟んで来た。


「待ちなさい晶葉」

「なにエリシア、ちょっと今忙しいから」

「なにじゃないわよ、この任務の総司令官は私でしょ。よく見るっていうなら私からが道理じゃない」


 え、君も? 君も持ち上げて欲しい口なの?


「コードに関しての知識と感覚なら私の方がいい。エリシアは戦闘特化でしょ」


 お前も張り合うんかい。


 それにしても三神が何かにここまで執着するなんて珍しいな。普段は寝る以外の欲求もなさそうなのに。流石は守り人というべきか。


 しかしそこでエリシアが退かない性格であることくらいは短い付き合いでも分かる。


「こう見えて私も最近はしっかり勉強してるのよ」

「‥‥」


 ああ、三神が「どうでもいいから早く私を上げろ」という目でこちらを見てきている。出来ればそんな半眼で睨むのではなく上目遣いで見て欲しい。


「さあ、凛太郎」


 そしてこちらはから目遣いで俺に言ってくる。どいつもこいつも慎みという言葉を教えてやりたい。


 だがここは難しい問題だ。何故なら付き合いの長さで言えば三神一択だが、この任務の司令官はエリシアの言う通り彼女だ。しかも俺はエリシアに判断してもらう立場なわけだし。


「‥‥」


 改めて不夜燈の位置を見ると、高さ的にはさほどでもない。二人一緒に見れるのが一番いいのだろうが、流石に俺も二人同時には持ち上げられんし。


 この状態を最も角がなく収める方法‥‥。


「七瀬」

「凛太郎」


 その時、俺の頭の中にある考えが浮かんだ。二人を納得させられるたった一つの冴えたやり方、それは――




「さあ、乗れ!」




 俺は松明の下で四つん這いになっていた。こうすれば女子二人位なら一緒に乗れるし、高さ的にもちょうどいいはずだ。アタイってば天才ね!


「‥‥」

「‥‥」


 先ほどまで対立していたはずの二人が、「うわぁ」という顔でこちらを見ていた。


 こいつら、ドン引きしてるけどおかしくない? なんで高飛車女と影薄女にこんな汚物を見るような目で見られてるの俺。


「晶葉」

「なにエリシア」

「凛太郎はなに‥‥所謂Mとか呼ばれる類の人間なわけ?」

「私の口からは何とも言えない」

「なんとも言えないってなんだ! そこは否定しろや!」


 全く以て失礼な連中だ。誰のせいでこんな方法を取らざるを得なくなったと思ってんだろう。


 三神の視線に「やっぱり‥‥」という気配を感じるのが遺憾だ。


「どうでもいいけど、早く乗るのか乗らないのか決めてくれ。ああ、乗るならせめて靴は脱げよ」


 流石に戦闘用の硬いブーツで乗られるのは御免被りたい。いや普通に背中に乗られるのも嫌だけどね?


 エリシアはやはり思い切りも良いようで、「仕方ないか」と靴を脱ぎ始めた。


「‥‥正気?」

「形はどうであれ、近くであれが観察出来るのならそれが最優先よ。こんなところでわざわざコードを使いたくもないし」

「それはそうだけど」

「嫌ならそこで待ってればいいじゃない」


 いや待て、俺としても一人だけになるなら普通に抱き上げたい。別にやりたくてこんな恰好してるわけじゃないぞ。


 だが俺の願いもむなしく、エリシアに煽られた三神も覚悟を決めたようで、靴を脱ぐ。普通女の子が覚悟を決めて脱ぐものってこれじゃなくない? 俺の知ってるのと違う。


「じゃあ乗るわよ」

「ごめん七瀬」


 二人はそう言うと俺の背に足をかけて乗った。二人分の体重だからもう少し重いと思っていたが、普通に軽いな。


 はじめは俺の上に立つことに嫌な顔をしていた二人も、不夜燈が目の前にくるとそんなことも気にならなくなったようで、興味深そうな声が聞こえて来る。


「やっぱりこの火、コードで維持されているみたい」

「すごいわね、コードを道具に転用する技術はまだ確立されてないっていうのに」


 それにしても、改めて考えるとなんだろうなこの状況。ついさっきまでそれなりにシリアスな感じで進んでいたはずなのに、何故俺は女の子二人背に乗せているんだろう。


 二人の体重が大して重くもないせいか、背に感じる柔らかな足の感触と相まって、ちょっと気持ちいい。いや、踏まれることに喜びを感じているとかではなく、純粋にマッサージ的な意味合いで。本当に。


 上からはパシャパシャとシャッターを切る音が聞こえ、どうやらエリシアか三神が写真を撮っているようだ。ちゃんとカメラなんか持ってきてたのか、なんだかんだ言いつつ一応調査任務はしっかりしてるのな。


 ところでこれ、エリシアが指導官てことは調査報告書とか出すんだよね。現在踏み台になっている俺の報告の部分にはなんて書かれるんだろ‥‥。


 そんなしょうもない思考の間にも二人の会話は白熱していた。


「この松明、コードで維持されているにしもて、どこから力が送られてきてるんだろ」

「分からないわね、そもそもどうやって起動されているのかも仕組みがあやふやだし」

「やっぱりこの材質の部分が特別なの? それとも壁の奥に何かが通ってる?」

「電線やガス管のような構造になっているってこと?」


 その後二人はそのままあーでもないこーでもないと議論を続ける。


 確かに、三神とエリシアの言う通りだ。不夜燈とて所詮は道具。その基幹となる部分は魔物の素材から作られているが、永久に炎を灯し続けられるわけではない。まして、廊下についている全ての明かりが点いているなど到底ありえない話だ。


 つまり、間違いなく不夜燈を使っている何かがこの神殿内にはいる。


 それが人なのかどうか、あるいは友好的なものなのかどうかは分からないままだが。


「七瀬、もういいよ」

「ありがと。おかげでよく観察出来たわ」


 ああ、どういたしまして。


 どうやら二人共満足いくまで不夜燈を観察出来た様で、俺が立ち上がるとホクホクした顔で靴を履いていた。先ほどまでその足が俺を踏んでいたかと思うと少し感慨深いものがあるな。


「そんで、明らかにこの中には何かがいると思うんだけど、それでも進むんだよな」


 膝の部分を払いつつエリシアに尋ねると、彼女は髪を後ろに払って不敵に微笑んだ。


「当然よ。まだ分からないことばかりだし」

「そうだよなあ‥‥」


 エリシアが帰るなんて言うわきゃない。個人的にはこの不夜燈で終わってくれたら気が楽だった。


「三人しかいないから、危なそうになったら早い段階で退却も視野に入れた方が良い」

「それも止む無しね。あくまで手に負えないと判断した場合だけど」

「まったく‥‥」


 三神が溜息を吐きたくなる気持ちも分かる。こいつ絶対アウターが出ても退く気欠片もないぞ。王樹に日々乃が勝ったんだから私が逃げるわけには行かない、とか考えてそう。


 俺たちは不夜燈に照らされた廊下を慎重に歩いて行き、探索を始めた。


ついに一万PV達成いたしました!

ありがとうございます!


これからもエタらずに書き続けたいと思いますので、ブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております。

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