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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第5章
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第52話 エレオノーラとの別れ

レオポルドとハインリヒは、エレオノーラとともに馬車に揺られていた。

「あとどのくらいで着く?」

レオポルドも流石に到着の遅さにしびれを切らしていた。

「もうすぐだ。あと1日もかからんだろう」

エレオノーラはもう疲れ切って、レオポルドの隣でぐっすり眠っている。

「エレオノーラはこの長旅に耐えられなかったようだ」

レオポルドはそう言ってハインリヒと笑い合う。



しばらく馬車が走ったあと、ハインリヒが重い口を開く。

「今日は何もなければいいんだがな……」

ハインリヒの呟きをレオポルドは聞き漏らさなかった。

「いったい何がだ?」

「スコターディア帝国では……」

ハインリヒが説明しようとしたその時、馬車が大きく揺れる。

「ひゃあ!? 何が起きたのですか?」

エレオノーラは驚いて飛び起きる。

「これのことだよ、俺が言おうとしていたのは」

ハインリヒの表情が真面目なものになる。

「襲撃なのか!?」

レオポルドも確かに襲撃は慣れっこだった。しかし、今回の襲撃は一段階大きなものであると、レオポルドは一瞬で理解した。

「襲撃というよりは、反乱かな」

そう言い残して、ハインリヒは馬車から降りる。

「待ってくれ!」

レオポルドもそれに続いた。レオポルドが馬車から降りると、そこには驚くべき光景が広がっていた。

「な……!?」

レオポルドは思わず息を飲んだ。

「どうだ? 驚いたか? これが俺が説明しようとしていたことだよ。実際に見て、体験する方が早いだろう」

ハインリヒは特に取り乱した様子もなく、冷静に剣を抜いていた。これは頻繁に起こることのようだ。

「レオポルド、ここでお前の剣技を俺に見せてみろ!」

レオポルドは黙って頷き、剣を抜く。

「行くぞ!」

「ああ!」

「おいてかないでください!」

ハインリヒの号令を合図に、二人は勢いよく敵の中へと身を投じた。レオポルドの耳元にはエレオノーラの言葉が聞こえていたが、それに構っている暇はなかった。



レオポルドとハインリヒは剣を振るう。可憐で洗練され、それでいて強いレオポルドの剣に対して、ハインリヒは質実剛健であり、また強さを感じさせるものであった。二人はお互いにそれぞれの剣技を認め合った。

「囲まれたな……」

二人はすっかり敵に囲まれていた。レオポルドとハインリヒは背中同士を合わせて、敵の動きを洞察している。

「だからどうした? スコターディア帝国では、このような状況は切り抜けられないと教えられるのか?」

レオポルドの挑発混じりの言葉にハインリヒは落ち着きつつも、その挑発に乗った。

「言ってくれるじゃねえか。俺にこの状況程度、乗り越えられないはずがねぇ!」

ハインリヒがそう言うと、敵が一斉に飛びかかってきた。

「来るぞ!」

レオポルドが声を上げる。それに応じて二人は敵に向かう。互いが互いの背中を任せている。二人はいい仲間となっていた。

レオポルドは舞を踊るかのように、敵の攻撃をかわし、そして斬る。ハインリヒは敵に攻撃する間すら与えず、敵をなぎ倒していく。他のスコターディア兵士も戦っているので、敵の数は確実に減っていた。



しばらくすると、敵は退却していった。レオポルドらはとりあえず危機を脱した。

「やるじゃないか、エルンストはこんな男を敵に回したのか。まったく愚かな男であることよ。お前以外、アインフォーラの王に相応しいものなどいないというのに、劣るエルンストが王位を継ぐなど、誠、皮肉な話だ」

ハインリヒは、レオポルドの剣技を見て、その実力を認めた。

「ハインリヒこそ、猛き獣のような勇敢な戦いっぷりだった。安心して俺の背中を任せることができた。俺に仕えないか?」

レオポルドも冗談を交えて、ハインリヒの力を認めた。

「笑えない冗談だな」

二人は戦いでさらにその親睦を深めたようだ。

「ところで、これは一体何の襲撃だったんだ?」

レオポルドの問いにハインリヒは俯向く。しばしの沈黙の後、ハインリヒは口を開いた。

「あれは反乱軍だ」

「何だと!?」

レオポルドは驚く。

「本当だ。スコターディア帝国ではその圧政のために、常日頃からあちこちで反乱が起こっているんだ。今のはその一部ってわけだ。それだけスコターディア帝国は腐りきっているんだよ」

レオポルドはスコターディア帝国の栄華の裏に隠された実情を知って、呆然としている。

「このままではダメなんだよな……」

ハインリヒが落ち込んでいるところに、レオポルドはあることに気づく。

「エレオノーラ!?」

エレオノーラの姿が見えない。

「どうした?」

ハインリヒが慌てるレオポルドに声をかける

「エレオノーラが居ないんだ! どこだ!?」

レオポルドとハインリヒは探しまわった。それでも彼女は見つからなかった。

「反乱軍に連れて行かれたか」

ハインリヒの予想に間違いはないだろう。

「だったらすぐにいこう!」

レオポルドはエレオノーラが居なくなったことに動揺して、平静さを失っている。

「落ち着けレオポルド。今はこちらの方が劣勢だ。本拠は大きい、これでは負けることは必然だ。今はとにかく王都へ向かおう」

「エレオノーラ……」

レオポルドは心に不安を抱えながら、王都へと向かう決意をした。

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