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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第3章
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第28話 異変

レオポルドとエミリアは二人で王宮へと向かっていた。

「ねえ、さっきの占い、信じる?」

エミリアは唐突にレオポルドに質問する。

「わからない。俺が本当に天下を統べる者になれるとは思わない。第一当たってるかもわからないから、なんとも言えないな」

レオポルドは論理的な判断を下す。

「辛いことがたくさんあるって言ってたじゃない?」

エミリアはそれを心配しているようだ。

「らしいな」

対するレオポルドはたいして気にとめていないようだ。

「どうしてそんなに落ち着いていられるの? 怖くないの? 辛いことがたくさんあるって、私は嫌よ!」

エミリアはヒステリックに怒っている。

「仮にあったとしても、俺なら乗り越えられるさ。俺は逆境には強い方だからな」

「無神経なんだか、自信家なんだか」

レオポルドは一抹の不安も抱いていないことに、エミリアは呆れている。

「俺には仲間がいるから、きっと乗り越えられる。エステバンが、ダリオが、シルヴァがいる。それにフェリス、エミリアがいるしな。大丈夫さ」

「そう……」

エミリアは大丈夫だと言い張るレオポルドを言葉を信じきれていない。だがレオポルドが辛いことに出くわすのならば、それを支えたい、彼女はそうも思っている。

「ねえレオ」

エミリアが歩みを止めて、レオポルドの服をつまむ。

「ん?」

「危ないことしないって約束して」

エミリアの優しさが言葉となって現れるのは珍しい。

「どうしたんだよ」

「辛いことがあるかもしれないけど、自分からは危ない真似しないで。私もレオのこと、支えらるるように頑張るから」

エミリアなりの心配がレオポルドの気持ちを和らげようとする。

「おう、気遣ってくれてありがとうな」

「別に気遣ってなんかないわよ!」

エミリアの優しさはすぐに消えてしまった。レオポルドはとにかく、この予言された王宮での危険をまずはなんとかしないといけないと思った。二人は再び王宮へと歩みを進めた。



レオポルドたちは王宮についた。

「用心しないとな」

レオポルドは占いでの予言のおかげで細心の注意を払えていた。二人は王宮の中へと入っていった。

「レオポルド=リオス=アインフォーラ、ただいま王宮に参上した!」

レオポルドが王宮に入っても、出迎えが、全くと言っていいほどない。身分を蔑まれているいないの問題ではないほど少ない。

「少なすぎない?」

「これは一体!?」

エミリアの疑問に返す余裕もなく、レオポルドは状況の判断ができていない。レオポルドはとっさに一人の貴族と思しき人物を捕まえて、事情を尋ねた。

「これは一体どういう状況なんだ!?」

「いや、ちょっと……」

男は答えを渋る。

「事情を言え」

しびれを切らしそうなレオポルドの背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「全く、こんな時に姿を表すとは、お前も運が悪いな」

エルンストだった。

「兄上! 何が起こっているのですか!?」

エルンストは下を向いて答える。

「父上が暗殺された」

「!?」

空気が凍りつく。レオポルドは育ての親まで失ってしまった。彼のショックは、大きいものであった。

「それはまことですか……?」

「冗談でこんな不謹慎なことは言わんよ」

どうやら事実のようだ。レオポルドは怒りに震える。

「誰がやったのですか!?」

「それについては捜索中だ。まあ、この国の平穏を崩そうとする何者かだろうがな」

「この大事な時期に……、せっかく国家が安定してきた時期にこんなことが起こるなんて」

レオポルドの声は怒りで震えている。それをエミリアは心配そうに見つめている。

「レオ、大丈夫?」

「ああ」

レオポルドの返事からはとても大丈夫なようには見えなかった。ここでエルンストがエミリアに気づく。

「ところで、お隣の女性は?」

「エミリア=サヴォイアと申します。レオポルドさまのメガロシュ軍将軍のダリオ=サヴォイアの娘です。以後お見知りおき下さい」

「そうですか、レオポルドのメガロシュでの様子はどうですかな?」

「はい、レオポルドさまのおかげで、私を含め、民は皆笑って暮らせております。それにゴリモティタ侵攻にも成功して、メガロシュの防衛にも成功しました。レオポルドさまはメガロシュで職務を立派に果たされております」

「そうですか。それを聞いて安心しました」

そんなことを思っているとは思えない。エルンストはレオポルドを陥れようとする、筆頭格だからだ。エミリアとエルンストの会話が弾む。ここでエルンストがエミリアの首飾りに気づく。

「ところで、その首飾り、とても美しいですね」

「はい! レオポルドさまに買っていただいたのです!」

「そうですか。レオポルドも粋なことをするな」

今日は妙に優しい。

「こんなことがあったのだ、今日ぐらい王都でゆっくりしていけ。侵攻の報告に来たのであろう。ゴリモティタ遠征、ご苦労だったな」

「ありがとうございます」

レオポルドはエルンストの様子を不審に思ったが、お言葉に甘えようと思った。

「エミリア、今日は俺の屋敷で休もう。いいな?」

「ええ、とても帰れる状況じゃないようだしね」

エミリアはレオポルドの提案に同意する。そこでエルンストがレオポルドに気味が悪いくらいの好待遇を申し出る。

「それなら、お前の屋敷まで送る馬車を用意しよう。まだ暗殺者が王族を狙っているかもしれんしな。これ、誰か用意せい」

エルンストにも何かあったのだろうか。そう思いながら、レオポルドはエルンストの方を見つめていた。


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