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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第2章
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第22話 歓迎パーティ

夜も更け、パーティーが催された。彼ら上層部がパーティーをしている間に、兵士や民衆は街中でお祭りさわぎをしている。

レオポルドら男子勢は準備に時間のかかる女性陣を待っていた。女性はこんなにも準備に時間がかかるものなのか、とレオポルドは思っていた。女性陣を待っている間に男性陣では会話が展開される。

「ところで、レオポルドさまはどういうきっかけでシルヴァどのに出会われ、そして、登用しようとお思いになったのですか?」

エステバンが尋ねる。まだレオポルドとシルヴァ以外、二人の出会いについて深く知っているものはいなかった。

「俺が街を歩いていると、子供達がわらべうたを歌っていたんだ。それは古典調の歌で、古典語で俺を讃える歌だった。俺はこんな歌が子供達に作れるわけがないと思って、誰に教えてもらったのか尋ねた。それがシルヴァだったというわけだ。俺は自分の才能を褒められたことに対して、少し腹が立ったんだ。俺はまだ満足のいく統治をできていないのにな。だから文句を言いに行ってやったんだ。そしたらシルヴァは俺と会話をする中で、俺の能力を見抜いたらしく、俺に仕えることを申し出たんだ。俺としても、会話の中で、シルヴァの能力は並々でないということは一瞬でわかったから、断る理由がなかったというわけだ」

「ほお……。シルヴァどのはレオポルドさまを見極めるために歌を作り、レオポルドさまに出会われたのですな」

「その通りです」

レオポルドの説明に納得したダリオがシルヴァに念押しをして、シルヴァはそれを認めた。



そうこう話しているうちに、女性陣が登場した。

「お待たせー! ドレス選ぶのに時間かかっちゃった!」

フェリスが満面の笑みで扉を開けてレオポルドたちの元へ歩いてくる。エミリアも一緒に出てきた。しかしリンダの姿は見えない。

「あれ、リンダはどこだ?」

レオポルドが疑問に思い、二人に尋ねる。

「あの子ならあこよ」

エミリアがそう言って指差したのは微妙に空いている扉の方だ。隙間からリンダの姿が少しだけ見えるが、全てを捉えることはできない。

「リンダね、ドレスを着ることなんてないから、なんだか恥ずかしいんだって。とっても似合ってるのに、もったいないなぁ」

フェリスが残念そうな顔をしてそういう。見かねたエミリアが扉の方に走って、リンダの手を掴んだ。

「ほらリンダ、レオポルドが待ってるわよ! 似合ってるんだから、恥ずかしくなんてないわよ! ほら、行くよ!」

「恥ずかしいよ……」

リンダはエミリアに強く手を引かれ、レオポルドたちの元に姿を現した。リンダはとても恥ずかしそうだったが、その美しさは秀逸なものだった。見ていた男性陣全員が感嘆する。

「おぉ……」

「どうかな……、似合ってるかな?」

顔を赤らめてレオポルドにそう言うリンダ。レオポルドにはどうしてリンダが顔を赤らめ、恥ずかしがるのかがわからなかった。

「ああ、とっても似合ってる。恥ずかしがることなんてない」

「そう……。良かった……」

リンダが安心したかのようにそう呟いた。ここでフェリスがパーティー開始の挨拶をする。

「本日はこのパーティーに参加いただき、ありがとうございます。男性陣は戦の疲れを癒すため、ごゆるりとなさってください。女性陣は、他愛もないことを話して、日々の労苦を忘れることができれば幸いです」

フェリスの丁寧な挨拶にレオポルドは驚いた。

「フェリスはあんなにも丁寧に話すことができるのか。エステバンのしつけが行き届いているようだな」

「いえ、それほどでも」

エステバンは謙遜するが、表情は嬉しさで溢れている。子供のことを褒められると、やはり親は嬉しいものだ。

ここでフェリスの態度が一変する。

「さあ、堅苦しい挨拶もおしまい! 今日は楽しみましょう!」

「これ、フェリス! はしたないぞ!」

エステバンはフェリスに注意するが、誰も聞いていない。パーティーを楽しむことに意識が行ってしまっている。初めの予定とは反して、領主邸での奉公人らも混じってのささやかではなく、大きなパーティーとなっていた。


パーティーはとても盛り上がる。フェリスが言ったように、メイドたちは日々の仕事の中での出来事や、レオポルドの話題などで盛り上がっている。

そこで、レオポルドの元に爺がやってきた。

「レオポルドさま、お迎えに上がれず申し訳ありませんでした。ご無事で何よりです。皆、喜んでおりますぞ」

久々にレオポルドは爺を見た。レオポルドは爺を懐かしいとも思った。ゴリモティタでの忙しい日々の中で爺のことは忘れられていた。

「久しいな、爺。俺がいない間も皆は元気だったか?」

レオポルドが奉公人を気遣う発言をする。

「ええ、お陰さまで皆元気に過ごしておりました」

「それは良かった」

レオポルドが爺と会話をしていると、フェリスの呼ぶ声が聞こえて来る。

「レオー! シルヴァさんとエミリアとリンダでお話ししてるからこっちきてー!」

レオポルドは爺と話しているので行くかどうか迷う。しかし、爺はレオポルドに行くように急かした。

「お行きになってくだされ。こんな爺いと話すよりも、若い者同士で話す方がよろしいでしょう」「すまないな、そうさせてもらうよ」

レオポルドは三人の元へ向かった。


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