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【完結】5年続いた男女の友情、辞めてもいいですか?  作者: たちばな立花


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8-⑨

 ハンナの突然の言葉に目を丸くした。

 こんなにも率直に尋ねられるとは思っていなかったのだ。

 大半が政略結婚だ。「婚約者のことを好きなのか?」という質問はあまり意味がないと思っていた。

 アウル自身、誰かに聞いたことはない。

 そういう感情的な部分に触れるのは、いけないことだと思っていたからだ。

 アウルはわずかに苦笑する。


「そうだな。……好きだ。だから、彼女を幸せにしたい」


 アウルはまっすぐハンナを見て言った。

 嬉しそうに彼女の口角が上がる。


「そうだと思ったのよ。私たち、ライバルね」

「ライバルか。負けてられないな」


 アウルはガシガシと頭を掻いた。

 マデリンにとって、性別は違えどアウルもハンナも『友人』だろう。そうなると、アウルのほうが分が悪いのではないか。

 同性同士のほうが気安く話せるという点で。

 現時点で、アウルはマデリンに会うことすらできずにいるのだ。


「当分のあいだ、マデリンのことは頼む」

「それはもちろん」

「次に会うときにはこれを」


 アウルはポケットから猟銃の弾丸を取り出す。

 ハンナは眉根を寄せた。


「また? 一個渡せばわかると思うけど」

「いや、次回も頼む」


 ハンナは不服そうに弾丸を受け取った。


 ***


 マデリンはつまらない毎日を過ごしている。

 謹慎を言い渡されて半月が過ぎた。

 結婚式の準備も狩猟大会の準備も順調だ。家族に探りを入れても、新しい情報は手に入らない。

 救いはハンナが遊びに来てくれることだ。

 ハンナはいつも雑談に交えて情報を教えてくれる。彼女がいなかったら、ずっとヤキモキしていただろう。

 マデリンは紅茶を飲みながら、ハンナから聞いた最近の噂話を思い出していた。


『アレス家の若様は、新しい婚約者との婚約をどうにかしたいみたい』

『そう。あんなにラブラブだったのに』


 マデリンは笑う。

 多くの人が集まる狩猟大会で、場所も考えずに愛し合うほどの仲だったのに。

 結局ルイードは人を愛することはないのだろう。

 彼が好きなのは彼自身なのだと思った。


『最近は、ナターシャの悪い情報を探っているみたい』

『悪い情報ねぇ……。そんなに簡単に出てくるものかしら?』


 ルイードをマデリンから奪った今、彼女も慎重になっているはずだ。

 彼女も相手は誰でもいいわけではないだろう。公爵夫人になれるチャンスだと思ったから、ルイードの誘いを受け入れた可能性がある。


『お茶会では女王様気分でいるけど、それくらいで婚約破棄はできないし』

『そうね。彼女が不貞行為でもおかさない限りは難しいかもしれないわね』


 マデリンはハンナとの会話を思い出しながら、ぽつりと呟いた。


「不貞行為……ね」


 せっかく公爵夫人になれるのだ。

 そんな馬鹿な真似は絶対しない。

 あとは犯罪を犯した場合なら婚約破棄も可能だろう。しかし、それは不貞行為以上に可能性が低くなる。


「でも、あの男なら、でっち上げるくらいしでかしそうね」


 マデリンは想像して肩を振るわせた。

 ルイードという男はそれくらいやりかねないと思ったのだ。

 彼は次期公爵として育てられたせいか、自尊心が強い。そして、自分がこうだと思ったことは曲げようとしないところがある。


(二人が婚約破棄をしても私には関係ないけど)


 マデリンはすでにアウルと婚約を結んでいる。

 ルイードがナターシャとの婚約を反故にしても、マデリンが関わることではない。

 ルイードがマデリンと再び婚約するためには、マデリンとアウルが婚約を破棄する必要が出てくるからだ。

 父がそれをよしとしても、ルート家は納得しないだろう。

 マデリンはテーブルの上で五つに増えた弾丸を転がす。


「こんなの、一個あればじゅうぶんなのに」


 マデリンはアウルの顔を思い出しながら、苦笑を浮かべる。

 ハンナが仲間だと知らせるための弾丸。

 しかし、ハンナはマデリンのもとに来るたびに、マデリンに手渡した。

 一度貰えばじゅうぶんではないのか。

 しかし、ハンナもよくわかっていないらしい。


 テーブルの上で五つの弾頭がコロコロと転がる。

 一個が勢いよく転がって、床に落ちていった。

 マデリンは慌てて立ち上がる。すると、テーブルの上に残っていた四つの弾丸も、最初の一つの後を追うように床に向かって走り出す。

 バラバラと大きな音を立てて弾丸が床に散らばった。


「え……?」


 マデリンは目を丸くする。

 拾った弾丸の弾頭部分が外れたからだ。

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― 新着の感想 ―
やっと開いた。 ハンナ相手の雑談だけでは足りないと思ってたんですよ。 実物を見たことすらないのでわからないのですが、重さとか臭いでは気づけないものなんでしょうね。
おっ…、メッセージ入りとか?!wkwk
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