表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】5年続いた男女の友情、辞めてもいいですか?  作者: たちばな立花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/75

8-⑥

 マデリンは笑みを浮かべる。


「そんなつもりはないわ」

「取り繕う必要はない。今、おまえが気になることなんてそれくらいだろう」

「気にならないと言ったら嘘になるわ。以前、アウルが許可を取ったと言っていたから……」

「父上が他人との約束を反故にするのはおかしいと?」


 兄の言葉にマデリンは頷く。

 父は小心者だ。他者からの評価を強く気にするところがある。

 ルイードとの婚約破棄がうまくいったのも、この性格が作用したからだろう。

 マデリンは浮気現場を見せられたかわいそうな娘。

 そして、ルイードの浮気相手であったナターシャの父親が激昂したことで、うまくことが運んだのだ。

 父はルイードを非難する立場に立たねばならなくなった。

 結果、ルイードとマデリンは婚約を解消しルイードはナターシャと婚約を結ぶことになったのだ。

 そんな父が、大きな理由なしにアウルとの約束を反故にするとは思えない。


「私は父上から何も聞いていない。だから、私の手伝いをしてもくまを濃くするだけだ」

「そう……。お兄様なら何か知ってると思ったのに残念だわ」


 マデリンは素直に落胆してみせた。ここまで意図がバレているのであれば、兄に気を使う必要もないだろう。


「私に何も言っていないということは、母上も何も知らないだろう」

「そうよね」


 母は奥ゆかしい性格をしている。父が何かを言ってこない限り、自分から首を突っ込むことはしないだろう。

 母に聞いても「お父様の言うことを聞きなさい」と諭されるに違いない。


(この屋敷の中で得られる情報はなしか……)


 マデリンは小さなため息をつく。

 少しでも情報が得られればと思ったのだ。


「そんなに狩猟大会に出たいのか?」

「もちろん出たいわ。でも、それ以上に突然お父様の考えが変わった理由が知りたいの」

「アウルとは仲良くやっているようだな」

「婚約者だし、普通でしょう?」

「前の婚約者のときは必要最低限のみ会っていた人間の言うことではないな」


 兄が呆れたように言う。

 マデリンはペロリと舌を出した。


「だって浮気男のために時間を使うなんて無駄でしょう?」

「それもそうだな」

「お兄様は浮気なんてだめよ?」

「そういうことができるように見えるか?」

「見えないけど。世の中、何があるかわからないわ」


 兄の婚約者はマデリンよりも年下だ。

 兄の結婚相手も父が決めたものだ。この国の貴族のほとんどは政略結婚だから、これが普通なのだと思う。

 結婚は家と家の繋がり。すべては家長に委ねられる。

 兄と婚約者は、あと二年もすれば結婚することになるだろう。

 家を出る身ではあるが、彼らが結婚すれば無関係ではいられない。

 できれば、兄の婚約者にはいやな思いはしてほしくなかった。


「お兄様が浮気に走るようなら、婚約者さんに猟銃の扱い方を教えておかなくちゃ」

「……肝に命じておこう」


 兄は険しい顔をして言った。

 想像してしまったのだろうか。

 彼は猟が苦手だ。いや、猟がというよりは運動全般が苦手だった。

 走ることも、馬に乗ることも。幼いころ、元気でやんちゃなマデリンと、物静かだった兄はよく比べられていた。

「性別が逆だったら……」と何度言われただろうか。


「これ以上私がいても邪魔になりそうだから、部屋に戻るわね」

「ああ、まずはゆっくり休んだほうがいい」

「はーい。おやすみなさい」


 マデリンは兄に背を向け、手を上げた。ひらひらと振る。

 すると、兄が思い出したように声を上げた。


「一つ」


 彼の言葉にマデリンは振り返る。そして、首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ